全員参加型の開発でものづくりの哲学は完成する。コロプラの作品が進化を続ける理由とは。

いかにして技術力や表現力を高め、作品のクオリティを追求していくか。美大生のみなさんにとっては、今まさに直面している課題だと思います。実際ビジネスの第一線で活躍するクリエイターたちは、どんな「つくる力」を持ち、それを維持・向上させているのでしょうか。今回は、群雄割拠のスマートフォンゲーム業界をリードし続ける「株式会社コロプラ」を訪問し、その作品と技術の真価に迫りました。

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スマートフォンゲームの新時代を切り拓く、作品群。
最新技術をいち早く採用し、さらなる可能性を模索し続ける。

2008年、位置ゲーのパイオニアである『コロニーな生活』から会社をスタートさせた「コロプラ」。2011年以降はスマートフォンゲームアプリ開発に軸足を移し、これまでに90以上ものゲームタイトルをリリース(※2015年7月末時点)するという輝かしい実績を築き上げています。

なかでも同社の総力を結集させ、コンシューマーゲームに匹敵するクオリティを実現したワンフィンガーRPG『白猫プロジェクト』(2014年)は、前年の代表作『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』を上回るペースでダウンロード数を伸ばしており、スマホゲームの新時代を切り拓く作品として高い評価を獲得しています。

そんなコロプラの開発環境の礎となっているのが、今や世界中のゲームクリエイターの支持を集めるゲーム開発エンジン「Unity」。充実の機能とアセットを備え、マルチプラットフォームに向けたゲーム開発が効率的に行える「Unity」を同社はいち早く採用し、業界トップレベルのノウハウを蓄積しているそうです。

さらに『白猫プロジェクト』に搭載された次世代インターフェイス「ぷにコン」は、コロプラ独自開発による画期的なシステム。移動、攻撃、必殺技といったフィールド上のすべてのアクションを指一本で快適に操作できるこのシステムは、操作性という従来のスマートフォンゲームの課題を打ち破り、ユーザーからも熱い歓迎を受けています。

そのほか、ヘッドマウントディスプレイを装着することで360度視点のゲーム世界を楽しめるVR(バーチャルリアリティ)分野にも進出するなど、コロプラは常に最先端の技術を取り入れながら、エンターテインメントの新たな可能性を模索し続けています。

世界中を楽しませるため、全員が本気で意見を出し合う。 改善とレビューを繰り返し、クリエイターとして鍛えられていく。

コロプラでは、職種や立場によって担当業務の範囲を制限されることはありません。社長も、役員も、デザイナーも、エンジニアも、ディレクターも、プランナーも、全員が一緒になって企画から携わります。入口が違うだけで、アイデアの種は全員が持っている、という考えからです。ビジュアルや技術にとらわれず、様々な視点から面白いゲームは生まれます。

ゲームがある程度まで完成すると、バックオフィスも含めた全従業員にβ版を配布し、実際に遊んでもらいます。その後、忌憚のない意見交換が活発に行われ、作ったものが良くなるまで、改善とレビューが繰り返されます。まさに「全員参加型」の開発であり、クリエイターとして鍛えられざるを得ない環境だといいます。もちろん、改善はリリースした後も続き、終わりはありません。

また同社では、自分たちが作りたいものを作るのではなく、世界中のユーザー様に喜んでもらえる作品を作ることを目標としています。不特定多数のユーザーに刺さる作品を生み出すことは容易ではありませんが、社内外のあらゆる人の声に耳を傾けながら、「誰に対して作るのか」「何のために作るのか」を徹底して考えていくことで、自分なりのものづくりの哲学が完成されていくそうです。そして同時に、クリエイターとしてのスキルや創造力もどんどん育まれていくといいます。


  • 角田さんが開発に携わった『白猫プロジェクト』


超アナログ人間から、人気作品の3DCGデザイナーへ。
マスが相手だからこそ、自ら成長しないと生き残れない。

『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』にて3DCGのメインデザイナーとして活躍し、その後『白猫プロジェクト』にてプロジェクトマネージャーを務めた角田亮二さんは、日本大学芸術学部絵画コースの出身。日芸時代はアクリル画専門で、PCすら持っていない「超アナログ人間」だったといいます。しかし、就職を考えたとき、もともと映画『ロード・オブ・ザ・リング』が好きだったことから、3DCGデザイナーを目指すことに決めたそうです。


  • 角田さんの学生時代の作品

「CGとアニメーション、動画に関する基礎は、新卒入社した映像制作会社で学びました。Maya、AfterEffects、Photoshop、Sculptrisなど、必要なツールもすべて入社後に習得しました。TV向けのキャラクターCGを主に手がけていましたが、キャラクターを作る先輩がいなかったので、『CGWORLD』という月刊誌を読みながら、独学で身につけた部分がほとんどですね」

Unityに初めて触れたのも、前職のとき。Mayaとの親和性が高いツールだったので、慣れるまでに時間はかかりませんでした。何よりも「Unityさえあればゲームが一本作れてしまう」ことに驚いたといいます。実際、社内のプログラマーと軽い気持ちでiOS向け落ち物ゲームを開発し、App Storeで配信。これがヒットしたことで、ゲーム作りに本格的に携わることに決め、Unityでゲーム開発を行うコロプラへ転職しました。


  • 角田さんの学生時代の作品

「前職で培った動画的な演出や見せ方のノウハウは、コロプラでもそのまま活かせました。ただスマートフォンというデバイス上、ポリゴン数などに制限があるので、動作パフォーマンスを落とすことなく、いかにリッチな演出をするかという点はキャッチアップが必要でしたね。やはりグラフィッカーとしては、一気にユーザーを引き込むフックにこだわりたいですから」

また、これまでアニメを全然見てこなかったという角田さんは、『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』のプロジェクトにアサインされたとき、2000年代に入ってからの人気アニメを一気に借りて見たそうです。「キャラクターのトレンドをインプットし、ユーザーの気持ちを理解した上でないと、アイデアはひねり出せない」と角田さんは言います。

「好きなものしか作れないと、かなり幅の狭いデザイナーになってしまいます。不特定多数のお客様に喜んでいただくには、何でも作れるようにならないと。美大時代は自分やごく少数の人に向けて作ることが多く、それにも苦戦していましたが、大多数に受け入れられる作品を生み出すことって、輪をかけて難しいです。コロプラには自ら成長しないと生き残れない厳しさがありますが、クリエイターとして磨かれるいい環境だと思いますね」

今では、後輩に技術を教える立場になった角田さん。気をつけているのは、決して自分のコピーを作らないことだそうです。「基本的なツールの使い方や考え方は伝えますが、どう料理するかはその人次第。私を踏みつけて、超えていってもらいたいですね」と語ります。クリエイターとしての最終的な自分の価値は、やはり自分自身が試行錯誤の中で見出さなければなりません。

コロプラでは、そんなクリエイター一人ひとりが見出したものづくりの哲学が、業界屈指の「つくる力」を支え、それを日々進化させていました。常にエンターテイメントの最先端をいく“術”を、クリエイターとして成長し続けるためのヒントにしてみてください。


  • 角田さんの学生時代の作品

現役美大生が、角田さんに質問をぶつけてみました!

――美大時代、角田さんの創作意欲の源はなんでしたか?
実はルーズな性格なので、放っておかれると絵を描かなくなります。なので、目標を決めて、締め切りまでに絵を描かないとまずくなる状況をあえて作っていました。無理やり展覧会の日程を決めて、お金を払ってしまうとか。
――どんなタイプの人だとクリエイターとして成長できますか?
まずは、素直にいろいろな人の話を聞ける人だと思います。結果や人からのアドバイスを素直に受け止めず、すぐに言い訳をしてしまう人はあまり伸びないという印象がありますね。

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