【正しい情報は必要な情報ではない】大学広報ブログの書き方3

2021年4月15日(木)

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久しぶりの新大学広報ブログである京都精華大学広報ブログ「セイカセカイ」スタート記念、そして手羽美術大学★6年目突入を記念して「広報ブログの書き方」をシリーズで書いてます。
これまでの話はこちら。
大学広報ブログの書き方0
大学広報ブログの書き方1【目指すはバロムクロス】
【京都精華ブログを勝手に添削】大学広報ブログの書き方2
 
これまでは「広報ブログ」でしたが、ある意味今日が一番「大学広報ブログ」のことを書いてると思います。

 
昨日書いた「正しい情報かどうかはあまり大事な話ではなく、SNSにおいて優先すべきは『更新頻度』『気楽さ』『身近な情報か』です」はあまりにも大雑把な説明すぎるので、もう少しかみ砕いて説明しましょう。


大学広報ブログ・SNSの役割やメリットは、「大学公式サイトの情報をユーザー視点で翻訳してあげる」だと思っています。

具体例をひとつ。
去年4月、「リンクロウの大学はコロナで授業はどうなるんだろ?」とWEBを見たら「2020年度春クオーター第2期はオンライン授業で・・」と書いてあったんですよ。
でも、「春クオーター第2期」の時期・期間がわからない。1年を4期に分けるクオーター制を取ってるのは知ってるけど、それがいつなのかが全然わからない。
WEBを探して探してオリエン資料から「春クオーター」がいつなのかはなんとかわかったけど、結局「第2期」がわかりませんでした。もっとちゃんと調べればわかるんだろうけど、そこまで暇じゃなく・・。
最初から「2020年度春クオーター第2期(●月●日~●月●日)」と書くことがそんなに手間とも思えないし、WEBならリンクを張ればそれで済んじゃう話なんだけど。

こういうことは大学事務連絡では実はよくあります。
私も学生さんには「資料をちゃんと読んで」とつい言っちゃうやつです。「配布資料に書いてあるよ。ちょっと調べればわかることをなんで聞くの?オリエンで言ったよね?」と。
でも、こうやって自分事になると「なんて不親切な表現なんだろ」「むしろ、こんな簡単な基本情報が調べてもわからないなんて、あんたらの資料の作り方が失敗してる証拠じゃね?だから大学職員ってやつは」と気が付くんですよね。
といっても、それが大学公式サイトでは難しいことはなんとなくわかるので、そのあたりの情報のフォローができるのがブログの役割でもあります。 

 
また、どうしても大学事務は「ちゃんと正しく説明すること」が優先される傾向にあります。
え?それのどこがいけないんだって?全然悪いことではないんだけど、そのせいでむしろ伝わりにくくしてる場合もあって・・。

例えば、コロナで4月末に急遽1週間大学事務窓口をストップすることになったとします。
その時に多くの大学では多分こう案内を出すはず。
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■大学事務窓口の臨時休業について
●期間:4月26日(月)~5月1日(土)
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でも、普通、この情報を見ると「じゃ日曜はやってるの?」「5月3日や5日は祝日だけどやってるの?」と思いませんか?普通は。

でも大学事務関係者しか通じない大学事務論理・大学事務文法では、
「『臨時休業』って言ってるよね?通常は日曜・祝日は事務は休みだよね?てことはそこは臨時じゃないよね?だから書いてないの、わからない?(苦笑)」
なんです。うん、正しい。「ちゃんとした正しい情報」はその通りです。

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■大学事務窓口の臨時休業について
●期間:4月26日(月)~5月5日(水・祝)
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と書いた方がどの期間窓口が閉まってるのか一目瞭然で親切な情報の出し方だけど、これは「正しくない説明」なので多分こうは書きません。若手職員がこういう文章書いたら、ちゃんとした上司なら修正します。むしろ「4月29日は祝日でもともと休業日なんだから臨時じゃないぞ!」と
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■大学事務窓口の臨時休業について
●期間:4月26日(月)~28日(水)、30日(金)、5月1日(土)
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と「より正しい説明」に修正しちゃうかもしれません。冗談みたいに見えるかもしれませんが、大学関係者なら「わかるわかる」な話じゃないかと(笑)
正しい説明が必ずしも必要な説明ではなく、それはあくまでも大学事務ロジックであり、学生さんが知りたいのは「いつ窓口がやってないのか?いつ行けばやってるのか?」だけで。「欲しいのはドリルではなく穴」ってやつですね。

とはいっても、教育研究機関である大学公式サイトが「より正しい説明」「調べることの大事さ」に拘るのはある程度仕方ないことだとも思っています。
そこで「なんかややこしく書いとりますが、つまりは4月26日(月)~5月5日(水)は事務が閉まってるってことっす」と、決して正しい説明ではないけどユーザー寄りの情報に翻訳して出すポジションにSNSやブログがある、というわけ。
これが「正しい情報かどうかはあまり大事な話ではなく、SNSにおいて優先すべきは『更新頻度』『気楽さ』『身近な情報か』です」の意味です。

 
これを実践してる美大が、手羽の知ってる限りだと、東北芸術工科大学の教務ですね。
今まで触れてこなかったけど、手羽が気が付いてないわけないっしょ(笑)
東北芸術工科大学へようこそ!|2021年度4月入学予定者向けサイト

どうしても新入生には短期間で大量の大事な「正しい説明」をしなくちゃいけません。
そうなると、優先順位の高い情報と低い情報がごっちゃになることも多いんだけど、教務の公式なスタンスでは「みんな大事な情報」と説明するしかない。

でも学生のスタンスに立つと「とりあえず何が優先順位高いのか?」「つまりはこういうことだっぺ」的な情報の方がありがたいわけで、それを書きやすいのがブログなんですよね。
それをよく理解されてる方が書いてるなあ、と。ま、ぶっちゃけ元「入試課ブログのなかの人」だけど。


以上、次回「大学広報ブログの書き方」シリーズ最終回は「広報SNS担当者はこれを読め!」を書きます、の手羽がお送りいたしました。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。