【亡霊と戦う】シンポジウム「外から見た五美大展」に行ってきた

2020年2月25日(火)

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もうすぐ2時。
急いで3階講堂にあがり、こちらのシンポジウムに参加してきました。

■シンポジウム「外から見た五美大展」
●日時:2月22日(土)14:00-16:00
●定員:260名
●登壇者:黒瀬陽平(カオス*ラウンジ)|田村かのこ(札幌国際芸術祭2020コミュニケーションデザインディレクター)|成相肇(東京ステーションギャラリー学芸員)|長谷川新(インディペンデント・キュレーター)|藪前知子(東京都現代美術館学芸員)
●モデレーター 杉田敦(美術批評、女子美術大学教授)
●五美大展シンポジウム実行委員会:飯田竜太(日本大学芸術学部)| 大島成己(多摩美術大学)| 小林耕平(武蔵野美術大学)| 末永史尚(東京造形大学)| 杉田敦(女子美術大学)| 冨井大裕(武蔵野美術大学)


キュレータや批評家の名前をあまり知らない手羽でさえ全員知ってる有名な人達で、なおかつモデレータ含め全員5美大出身者じゃありません。
五美大展講演会はこれまで幹事校の先生や学長の講演会や学生さん達のトークセッションがほとんどだったけど、こういう試みは初めて。

会場も満席。五美大展講演会でこれだけ席が埋まったのは初めてみた。

最初に今年の幹事校である女子美の小倉学長から挨拶。
最前列には五美大の先生方もそろってました。

女子美・杉田先生が進行役になり、まずは登壇者が気になった、または今日の話の展開に関係しそうな作品を2、3点紹介していきます。

最初がカオス*ラウンジの黒瀬さん。
黒瀬さんはタマビと東京造形大の学内卒展を見ていて、そこでの展示と五美大展での展示を比較し、「学内展ではすごくよかったのに、五美大展ではスペースの関係で作者の意図が削られ過ぎている。こんな展示で誰が得するのか」とぶちかまします。

他の登壇者の方も「学内展ではどうだったのか知りたい」とおっしゃっていたので、登壇者の方が挙げてた作品の学内展の様子を。(手羽もムサビとタマビの学内卒展を見てました)

↑こちらの作品は学内展では、

こんな形で展示していました。他にも関連作品があるのがわかります。

また、

↑写真左上の天井からぶら下がってるトビウオは、

学内卒展ではこの高さ。


そして一番シンポジウムで話題になっていたこちらの作品↓。

↓学内展ではこんな感じに展示されていて、

単独の作品というより教室全体を使ったインスタの一部を五美大展に持ってきた印象。


手羽もちょうど「結構形を変えて出展するんだなあ・・」と感じていて、

↑五美大展でこんな感じに展示していたタマビ油画生の作品は、学内卒展では

こんな感じで、なおかつ、

自作の小屋の中に展示してたんです。
タマビ卒展ですごく気になった作品だったから覚えてて、「ああ。学内卒展と五美大展ではこんなに変わるんだなあ・・」と。
 
 
最初の黒瀬さんの発言で結論が出てた気もするけど、全体的な登壇者の意見としては、
・高校生には大学の違いを感じられる場にはなるかもしれないが、それだけの話。
・作品数が多すぎ。「キュレーションやれ」と言われても自分がやっても多分無理。こうなる。
・作品が多いから、どうしても大きな作品に目がいってしまう。
・各校の卒展を見て回れないからキュレーターにとって五美大展はありがたい存在だけど、やっぱり多すぎ。
・責任の所在がはっきりわからない。でも責任があるのは間違いなく大学と教員。学生ではない。
・どうせなら選抜展にしてはどうか。
・東北芸工や京都造形のやり方がいいとは言わないがうまくやってる。
・Politicsな作品は詰めが甘い作品が多い。
・これまでの延長線上で卒制を作ればいいのに、いきなりガラっと変な形に変えてくることがあって止めるのが必至。
・各大学の色が出てるようで全体の作品のモチーフが似てきてる。「自画像と動物モノNG」とかやった方がいいのでは?
・それに至った経緯なども知りたいのに、ポートフォリオを置くのが禁止になってるよう。
・大学同士のコミュニケーションが発生していればまだやる価値があるかもしれないが、あまりないらしい。
・「世間の目に晒される体験ができる貴重な場」というなら、そういう指導を大学教員はしてるのか?
・社会につながる装置になっていない
・事前打ち合わせで問題点を指摘したら、先生たちも「そうなんですよね・・」と言ってた。
・うちら、先生方のスケープゴート、もしくはガス抜きにさせられてね?
・今のロンドンは芸術大学よりもオルタナティブスクールの方が元気。
・誰の特にもなっていないのに昔から続いてるからとか亡霊のような、大学広報のために学生に負担をかけさせるような展覧会はやめた方がいい。
・そもそもなんで「五美大」なの?東京工芸や横浜美大はなんで入ってないの?サロン的な権威的なものを感じる。

超訳も入ってますが、壇上の雰囲気としてはこんな感じかな。
普段、美大愛好家として「美大・ムサビ大好き!最高!!」とノンキに騒いでる手羽は黒瀬さんと完全に逆のポジションだけど、他登壇者も含めて指摘してる問題点はうなづけることばかりでした。


少し補足すると。
「その作品に至った経緯」は確かに知りたいことの一つで、他の手段としては例えば

生と死の狭間で-修士作品のはなし-|かどかわまほこ @___a_to_o #note
こんな感じにnoteに書くとかなのかな。

ちなみに東京工芸大学はクラフトの「工芸」ではなく「学と術」の「工芸」なのでファインアート系学科はないし、横浜美大さんは東京じゃないんですよ。だから五美大展には・・わかってます。そういう話じゃないですね。東京5美大と括って「俺らはお前らと格が違うんだよ」と自慢してるのがなんか古いってご指摘。


「五美大展の意義」で思いつくのは・・。
手羽も学生時代、「わざわざ上野まで行くのめんどくさいなー。決まってることだから仕方ないけど」と思いながら出品した一人ですが、一生懸命卒業制作をやって卒展に出し、同級生の作品もいい作品が多くて「どうだ!ムサビの彫刻はすごいんだぞ!」と五美大展に臨んだら、他大学の作品に比べてレベルが低いことに気が付かされた経験があります。レベルというかタマビや東京造形大に比べて垢抜けない作品ばかりで。
ずーと毎日みんな作品に向き合ってたはずなのに、なんでこんなに差が出るんだろ、他美大はもっと向き合ってたってこと?教育の違い?施設?とショックと恥ずかしさでいっぱいに。
他美大と同じ場所で作品を比較することはないから、卒業間近、社会に出ていく直前にそれに気が付けたのは大きく、そういう五美大展の意義はあるとは思ってます。ちなみに今のムサビ彫刻好きです。
また、五美大展はあくまでも「ポートフォリオ」「レビュー」の位置付けだと思っていて、作者を知ってもらうきっかけぐらいに考えるのがちょうどいい。
あとは昔先生に「五美大展はなんでやるんですか?」と聞いたら、「公立の美術館で展示したら略歴に書ける。最後の大学からのプレゼント」と言われたことがあったっけ。
ま、これだけだと「そのためだったらやめた方がいい」「それならそれでそう指導するべき」「いろんな場所で展示する時代にホワイトキューブだから略歴に書けるって時代錯誤そのもの」と言われちゃうけども。
存在するものを肯定するのって難しい・・。

シンポジウムが日本全体の美術教育や制度の問題点を指摘するような流れを期待してた方からすれば五美大展の問題点話ばかりで物足りなかったかもしれませんが、個人的には「先生方、もう引き下がれませんね」な展開でおなかいっぱいになりました。

あまり心配してないのは、五美大教員も世代交代が始まってて、これまでズルズルとやってきた五美大展を真剣に変革しようとしてる教員が今は集まってます。50歳前後の教員ってことは五美大展が既に普通に存在し、「なんのためにやってるんだろ」と感じながら出品した人たちでもあり。
冨井・・じゃなくて冨井先生なんて、彫刻学科の大事な男神輿の御神体を学生時代に「伝統がなんぼのもんじゃー!」と芸祭で燃やしちゃったやつだし。今でも恨んでるけど、あそこから男神輿が変わったしね。
パネリストに張本人である実技系教員を入れなかったのは「何を言われてもいい」という先生方の覚悟じゃないかと。


以上、登壇者の方が紹介した作品が、

ほとんどムサビばかりだったのに気が付いてた手羽がお送りいたしました。
挙がった12,3作品中ムサビ以外は3点だけで。
ムサビの作品がよかったのか、シンポのテーマにつながる作品ばかりだったのか、1階の一番最初の部屋だったからなのか。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹と西原理恵子とみうらじゅんと羽海野チカと銀魂と合体ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し日夜奮闘中