【ビダニュー2018ラスト】ルールに関する知っておきたい8つのこと

2018年4月1日(日)

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美大に入学される方の疑問に答える「ビダニュー」シリーズをお送りしています。
これまでの話はこちら。
【ビダニュー2018】美大入学式で何を着ればいいのか?
【ビダニュー2018】新入生の10の疑問に答えます
【ビダニュー2018】美大では友達を作りやすい。だけど・・
「●●があると便利」「あの授業を取れ」な話は学生さんに聞いてもらった方が早いので、手羽は「考え方」「捉え方」を中心に書いています。 
今日は気楽にエッセイとしてお読みくださいませ。

ビダニュー2018のラストは、新生活でどうしても最初に関係するルールやマナー、エチケットの話。


暗黙のルールは結構ある
誰かが「はい。今日からこれね!」と決めたものではなく、使ってる人たちの「こうだといいよね」な気持ちが同調し、いつのまにか発生・拡散された暗黙のルール、マナー、エチケットが世の中にはあります。あ、以降「ルール」「マナー」「エチケット」をごっちゃに使ってますが、同じような意味で読んでください(笑)

典型的なのは車関係ですね。
「サンキュ!」って時にハザードを2回点滅させたり、クラクションを「パっ」と鳴らしたり、高速道路追い越し車線で後ろの車が右ウインカーをチカチカさせたら「おめー、チンタラ運転すんなよ。そこどけ!」という意味だったり、ブレーキランプを5回点滅させたら「愛してる」のサイン・・・ってこれはないな。
車は声を出して直接相手に「ありがと!」「ちょっと入れてほしいんだけど」「あぶねっ!」と言えないので、暗黙のコミュニケーション方法が構築されやすい世界なのかもしれません。

手羽が東京で車を運転するようになって、一番感心したのが首都高速の合流です。


渋滞時での合流は交互に車を入れてあげる暗黙のルールがあるんですよ。ほんとは全国的なルールですが、一番適用されているのが首都高で、これは渋滞が多い首都高だからこそなのかもしれませんね。

区内ナンバーだったらほぼ100%の車が交互に入れてくれます。白塗ベンツとかトラックとか一見怖そうな車も。逆に「あれ。この車は譲ってくれないなあ・・」って時は、だいたい千葉とか都外のナンバーかおばちゃん。

高速だけでなく東京の大きな道路だと「合流での交互譲り合い」が普通に行われるから、手羽の経験上、田舎より東京の方が合流がしやすいです。田舎は全然道を譲ってくれない(笑)
よく田舎の人が「東京の人は冷たい」と言ったりするけど、そんなことは全然なく、「問題発生させないための他人とのコミュニケーションのやり方」は東京の方が洗練されてるので、むしろ手羽は田舎の人の冷たさを感じるくらいです。


地域や時代によってルールは変わる
ルールが全国同じことはないし、いつのまにかルールが増えてることが多々あります。

最近手羽がびっくりしたのが家族とやった大富豪で、知らないルールが大量に増えてたんですよ。
日本大富豪連盟のサイトによると、一応5大公式ルールは下記の通りなんだそう。

「革命」「都落ち」は手羽が子供の頃からあったけど、「八切り」「スートしばり」なんて知らないし、公式ルール以外に「五飛び」「イレブンバック」とか全然知らないルールが大量にできてる。
ロケットニュース24|【いくつわかる?】イラスト『大富豪のルール統一されてなさすぎ説』が話題 / 激レアな「絶対革命」ってなんだ?
手羽と奥さんが知らないってことはウン十年前の福岡と札幌ではそういうルールはなかったということだから、地域性ではなく時代性でこんなに変わるのか、と。
リンクロウが「ゴットビだからお父さんは出せないよ」と自慢げに説明してたのがむかついたのもあるけど(笑)、「いつのまに大富豪がこんな複雑なゲームになってたの?大富豪なんてチンタラした文系ゲームだったのに、こんだけルールがあったらまるで理系のゲームじゃん。てかそもそも子供の頃は『大貧民』と呼んでたゲームだよ!?」で。
 
 
マナーは難しい

本来「正装」とは、「紋付袴・タキシード・着物・ドレス」を意味します。それが基準値なので、披露宴・パーティーで「軽装でお越しください」と言われたら「スーツ」なんです。
「スーツ」を「正装の基準値」だと勘違いしてると、披露宴にパーカー+ジーパンで行って大恥をかく・・ということになっちゃうわけ。

でも仕事での正装は「スーツ」だから、その場合の軽装は「ネクタイをしてない恰好」となります。
襟がついてるシャツ着てジャケットをはおる・・・ぐらいが「一般的な軽装」かな。クールビズの概念が入ってきて、より「軽装」の基準が下がった気もしますが。
マナーはルールではないからシーン・時代・地域によって基準値が変わるので、これがほんと難しい。最近、お通夜と告別式のどちらかに出席する場合、東京だと通夜に出ることが多いけど、地方だと告別式を優先する傾向にあることを知りました。

ビジネスでもいろいろあります。
例えば「10時に訪問します」と約束した場合、私は「約束の5分前ぐらいに訪れるのがビジネスマナー。絶対に遅れちゃいけない」と教わったけど、ある人から「相手は10時から時間を確保してるんだから10時1分ぐらいに行くべき。5分前はまだ相手の時間だからむしろ失礼」と言われました。それも一理ある。
いわゆる「集合時間とは『集合終了時間』なのか『集合開始時間』なのか」の違いに近く、前者は大企業や老舗企業だと今もそうだろうし、最近の企業だと後者的考えの方がいいのかもしれません。


知らないルールやマナーがあるのは当然
ここからが本題(えっ)。
「車の交互合流」は、譲り合いの精神をドライバーたちが実行・具現化しマナー化されていった例。
「大富豪」はいつのまにかどんどんルールが追加されていった例(ゲーム性が高くなった分、むしろ仲間外れを作る仕組みになってるような気がしてますが)。
「正装」はシーンや立場、業種によって考え方が変わる例。

新入生等新しい社会でスタートした人が知らないルールやマナーがたくさんあるのは当然で、そんなのは徐々に覚えればいいだけ。怖がる必要はありません。
ムサビだとなんだろ?学食やエミュウの並び方は初めての人はわからないかもしれないね。
そして昔からいる人は「暗黙のルールは狭い社会でのルール。新しくその社会に入った人は知らないのは当然」を前提に行動した方がいいってこと。


ルールは必然があって生まれている。
一見理不尽に感じるかもしれないけど、「何かの経緯で生まれたものなのだから理由があるかもしれない」という視点でルールに付き合うことが大事。その理由がなんなのかよく考えた方がもっと上の世界に行くことができると思いません?

例えば、ムサビは比較的ルールが緩やかな大学です。こんなにあちこちに展示できる大学ってそうないんですよ。でも、火の取り扱いについてはかなり厳しい。
理由は明確で、「これまで何度か大火事を起こしてるから」です。


  • 2015年の火事の時はこれくらいの消防車が来ました

2015年の卒展片付け期間中に一部屋丸々燃える火事があり、2005年には7号館でかなりの大火事をやらかしてるし、さらに10年前ぐらいに5B号館で火事がありました。
ほぼ10年おきに火事が起きてるんです。
 

「なんで火を使っちゃいけないんだ!表現を教える大学でそれはおかしい!」てなやり取りでは前に進みません。少なくとも絶対大丈夫といえる火の扱いを提言するべきで。
「展示室での水の使用禁止」もそうですね。「ここは美大だろ!?表現は自由であるべきだっ!」と叫ぶのは止めないんだけど、「12号館地下展示室で作品の水が大量にこぼれ、床のタイル張り替え、さらに下フロアに被害」を起こした過去があり、「表現の自由は否定しないけど、表現者としてあなたはどういう責任とれるの?」で。


必要のないルールもある。
とはいっても理由自体が古いものになってて今は解消されてるのにそのまま残ってたり、運営をしているうちに「なぜその規則が生まれたのか」「そもそものポリシー」が引き継れず形だけが残り、必要以上に厳しくなってしまってるルールが存在するのも事実です。

ところで「目的と目標は違う」のは知ってますか?
「目的」とは最終的に実現させたいことやポリシー・理念、「目標」はそのための手段や方法。なので目的はフワフワしてるけど目標は数値化しやすい傾向にあります。例えると目的は「健康的な体」、目標は「(そのために)毎日10km走る」ですね。
目的をコロコロ変えるのはみっともないけど、目的達成のためなら目標を変えることは問題ではありません。毎日10kmが厳しければ毎日5kmにしてもいいし、走らず食生活改善に変えたっていいし、目標は複数存在してもいい。目的が「健康的な体」であれば。

なぜこの話を突然しだしかというと、「そもそも論」を大事にする人は目的と目標をごっちゃにしてる人が多く、「状況が変われば手段・目標は変えるべき」ってことがなかなかわかってもらえないんですよね。でも「そろそろ論」の方が論理性があるように聞こえるし、これにこだわる人は声も大きい(笑)
変えたくて議論を始めても「そもそも」が勝ってしまい、結局何も変われないことが特に古い大きな組織だとよくあるそうです。理念はとっても大事でポリシー確認は絶対に必要だけど、時代に合わせたポリシーの解釈をチェック・変更してないためにずっと残ってる悪しきルールは確かに存在します(笑)
こういうプランたてて実行してチェックして改善するサイクルなんっていうんだっけ。あ、そうそう。

PDCAサイクルだ。


デマも結構ある。
気を付けないといけないのは、デマである可能性も結構あるってこと。そんな理由で始めたわけじゃなかったり、そもそもそんなルールがなかったり。ムサビだと「学生同士が結婚すると学費が半額になる」が典型例ですね。このデマが流れてるのを毎年見てます(笑)


だから何が大事なのか
それが必要なルールなのか、不要なルールなのか、デマなのか、学生さんにはすぐにはわからないのは当然。
大事なのは・・・「いきなり怒り出さないこと」かな。
いきなり怒り出すと、自分が間違ってた時に引っ込めるのがむずかしくなって、どうでもいい些細なことに焦点を変更し、長々とやり続けてしまうことがママあります。お互いにメリットがないのに「やめることができない」から続いてしまったり。

美大生であれば・・・特に問題解決を求められるデザイナーには、複数の視点で物事を見つめる能力が必要で、一方的にみんなでギャーギャー騒ぐ「一般の人」と一緒にならず、冷静に複数の視点でいろいろ調べて、「こういう考え方もあるよね。だからこうした方がよくね?」と提案する方が「かっこいい」と思いません?


今日から4月1日なのでビダビュー2018は終了しますが、手羽は美大新入生をずっと応援しております。4月は更新頻度落とすつもりだけど。


以上、2年前の手羽のエイプリルフールネタをみんなが信じてしまったので、4月1日は大人しくするようになった手羽がお送りいたしました。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。