【4年生必見】卒業制作で知っておきたい19のこと

2017年1月7日(土)

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「卒業制作展」と「芸術祭(学園祭)」の大きな違いは、基本的に卒業制作展は1回しか経験しない(できない)ことです。
短大からの編入組や大学院2年生以外は誰も参加経験値がないんです。みんな卒展初心者。
なおかつ学生さんどおしの引継ぎが無いので前例が蓄積されにくい。
そのため、自主的にいろんな展示を見たり出展してきた人とそうじゃない人の差が激しく出てしまう怖さがあります。


教育的効果・美術的表現は先生にお任せするとして、卒展出品経験、教務課時代に5年間卒展や五美大展を担当した経験、ずっとムサビや他美大の卒展をファイン・デザイン関係なく見てきた経験から、
「卒展ではこういう部分を気を付けるといい」
「内部者じゃなく外部者(来場者)はこういう見方してるよ」
「卒業制作で陥りやすい点」
「自分が卒展の前に知っておきたかった具体的例」

を去年15ヶ条にしてまとめました。

手羽の卒業制作15ヶ条その1
手羽の卒業制作15ヶ条その2
手羽の卒業制作15ヶ条その3
手羽の卒業制作15ヶ条その4

・・・数を間違えて本当は16あります(えっ)
ムサビ生向きな内容になってるけど、他美大の方、またこれから展示を考えてる人にも参考になるはずです。

んで、微妙に以前書いたものとかぶるところもありますが、今年はさらに3つ追加し「卒業制作前に知っておきたい19のこと」にバージョンアップしました!このタイミングで公開するのもアレですけど。


17.雪は降るものと思え
これは去年のムサビ卒業制作展最終日の写真です。

3年に一度ぐらいの頻度でムサビ卒展は大雪日とぶつかるんです。この日は交通網が大混乱したっけ・・。

屋外に展示する場合、雨対策で漏電ブレーカーつけたり屋根つけたりは考えるけど、雪対策まで考えないことがほとんど。でも雨との違いは「雪には重みがある」「しばらく残ってしまう」ことで、去年の屋外展示でも雪でつぶれてしまった作品がいくつかありました。
屋外で展示またはパフォーマンスを考えてる方は雨以外に雪のことも考えておきましょ。「雪が降ったらどうしよう」ではなく「ムサビ卒展では雪は降るものだ」を前提に。
 
 
 
18.ネットは便利で怖いもの
手羽の学生時代と今の学生さんの一番大きな違いは「ネットがあるかないか」です。
いろんな情報を収集でき、自分で情報発信する手段を持ってるのはすごく羨ましい。こうやって過去の事例を知ることができるしね(自画自賛)
ムサビ卒展では「1200人のうちの1人」なので、展示を見てほしい人は自分から宣伝するべきです。去年話題になった東北芸工生の「書き時計」が典型例ですが、去年は自分でメディアにプレスリリース流したムサビ生がいたっけ(笑)
あ、手羽にFacebookかtwitterで連絡くれたら宣伝しますよ。10人ぐらいは来場者が増えるはずです。

一方、昔よりも周りの目を気にしなくちゃいけなくてかわいそうだなあ、とも感じてます。
手羽の頃は友達と教授以外に「君の作品はダメだ」と言われることはなかった(情報が入ってこなかった)んで「オレってまさか天才?!」と勘違いしたまま卒業することができたけど、今はネットでいろいろ言われちゃいますからね・・。
作品の「好き嫌い」は人それぞれだしそれを語るのは自由なので、ネットでの評価を無視するか参考にするかは自分次第です。でも卒展時期は気が付かないうちに精神が不安定になってるんで、個人的には進んでエゴサーチをやって自分を追い詰める必要はないと思ってます。

また、「文脈を読まれずに叩かれるケースも想定しないといけない」というめんどくささも出てきてます。


  • *写真は加工しています。

これも去年の卒展写真です。
作品を見ればオマージュであることは一目瞭然だし、解説文にもそう書いてあるけど、文脈も文章も読まれずに「パクリだ」とネットで騒がれてしまう可能性が今はあるので、こういった形でわかりやすく出さないといけない、とかね。
昔は「わからない方が悪い」だったけど「誰でもわかるように作ってない方が悪い」の世界。某美大さんのことや某デザインウイークの事故で今年は更に厳しい目でチェックされるはずです。その状況がいいことなのか悪いことなのかは抜きにして。



19.いろんな人がくる。
おかげさまでムサビ卒展は来場者が毎年増えてて(去年は大雪のせいで減ったけど)、来場者が増えるってことは「いろんな人がやってくる」ってことでもあり。

「説教を始める話の長いおじさん」なんてのはこの業界にいる以上あきらめるしかないのだけど、作品や機材、貴重品の管理はいつも以上にしっかりしましょ。
悪意のある盗難のケースももちろんですが、ギャラリーにあまりいかない一般のお客さんだと「持ってちゃいけないものどうか」「触っちゃいけないものなのか」の判断ができないので、「サンプルで作った紙冊子」とかだと悪意なく持って行ってしまうことがあるんです。
うちの子も、お皿とかだと平気で展示されてるものを手に取っちゃうの。彼らのデフォルトは「カバーがなくて目線より下にあるものは触っていい」なんです。「作品に触っちゃダメだからね」と会場に入る前に言っても、触りたくなったものは素直に触ってしまう。その気持ちは美術教育的には大事だけど、親としては怖くて怖くて。そういうケースも想定する必要があります。

「いろんな人がくる」から個人情報管理も大事。
「興味のある方は連絡ください」と作品の横に電話番号やメアドを書いておくのを止めはしません。でも、こういう時は捨てアド・捨てアカの方がいいです。特に女性は。ほんとに「いろんな人」がいらっしゃるので。
「作品を売ってほしい」「制作してほしい」「うちのギャラリーで展示を」な話で不安な場合は研究室に相談しましょ。

ちなみに依頼系だと「うちの店の空間が空いてるから作品展示して(絵を描いて)」話も卒展ではあり、多くは「学生さんの発表する場を提供したい」な善意の気持ちでおっしゃてくれてます。
非常にでありがたい限りなのですが、このケースは事前に条件を確認した方がいいです。
●壁に設置する方法がない(釘が打てなかったりピクチャーレールがない等)
●スポットライトもなく薄暗い空間
●人がほとんど通らないスペース
●厨房のすぐ横で油がべったり
●半屋外で雨にあたる
●交通費・運搬費や材料費がでない(出ないケースの方が多いと思った方がいい)
●展示期間が決まってないor勝手に撤去されてた
●上司や管理会社と調整してなく設営日に現場で揉める(大人の世界じゃよくある話)

なんてことがよくあって、これが悪意があってそうしてるわけじゃないのが非常に難しいところで・・。

この手の話は「言った言わない」「聞いた聞いてない」に必ずなるので、後でお互い嫌な気持ちにならないためにも、相手から口頭ではなく文字で条件をもらっときましょ。


てなわけでムサビ卒展まであと2週間を切りました。

平成28年度 武蔵野美術大学 卒業・修了制作展
●会期:2017年1月19日(木)~22日(日)
●時間:9:00-17:00
●会場:
武蔵野美術大学鷹の台キャンパス
*車でのご来場はお控ください。

WEB http://www.musabi.ac.jp/sotsusei/


では、次は来年の「卒業制作で知りたかった30のこと」でお会いしましょう!

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。