【ビダソツ】暗黙の仕事もある

年度末はなにかと忙しいですね・・・の手羽です。

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微妙に昨日から続いてる話です。

「暗黙のルール」って組織・社会だとどこにでもあること。
3月に卒業して研修でもう働いてる人もいると思うんで、仕事の話と絡めてもう少し書いてみます。


こんな想定シーンを作ってみました。
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毎朝カウンターに誰かが小さな花を活けてた。
お客さんからの評判もいいし、働いてる人もなんとなく気持ちがいい。でもその人が辞めることになり、今後どうするか課内で検討して「続けた方がいいからみんなが交代で花を活けようよ。花は自腹購入」と決まる。1年目はみんな事情を知ってるから朝10分早く出てきて交代でやる。生け花を習い始めたりする人も出てきたり、「この花きれいだなー。今日の担当は誰?うまくなったねー」なんて会話も生まれる。会社報で「私達の素敵な取り組み」みたいな形で紹介され、更にモチベーションも上がる。

でも1年後、「人によって花にかけるお金が違うのは不平等」という声が生まれ、みんなでお金を出し合って割り勘でやるようになる。さらにその1年後、新しい人が入り「なんで自腹でやる必要があるの?」という声が出て、さらに1年後に「これは仕事ですか?仕事なら業務中にやってもいいわけですよね?10分早く来てやるって意味がわかりません。残ってやったら残業代がつくんですか?」と上司に問い詰める人が出てくる。
「いや、仕事じゃなくてみんなで職場の雰囲気を自主的にですね(ゴニョゴニョ)」
「それはおかしいと思います!(怒)花が必要というなら、造花でもいいじゃないですか」
「生きてる花の方が、ほら、季節感が出てさ」
「だったらレンタルサービスとかあるんだからそれを使えばいいじゃないですか」
「でも、ほら、レンタルだと定期的にお金かかるでしょ。だったら生花の方がまだいいじゃん」
「それなら活ける時間を業務扱いにするべきです!そして課長もやるべきです」
なんてやり取りが発生する。
「じゃ、やりたい人だけやることにしよう」となり、昔の経緯を知ってる人達だけが継続し、更に不思議で複雑なルールが作られる。
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どうですか。10年以上働いてる人なら「いててて」と感じる想定シーンじゃないかしら(笑)
あえて例えを「花」にしましたが、似たようなことはどの職場でもあるはずで。

「課でブログやSNSを作って発信する」もそうかもしれません。
最初は「提案した人。やりたい人達」がやるので、仕事かどうか関係なく面白くやるし、そのへんをはっきりさせなくてもうまく回る。でもその人が担当から外れると「これは仕事ですか、仕事じゃないんですか?業務中にブログ書いていいんですか?残業扱いになるんですか?日曜の取材は仕事扱いにして代休取れるんですか?どれくらい効果があるんですか?今の仕事が忙しいからそのためのパートさんを雇ってもいいですか?」という人が現れる。
どうですか。大学広報ブログやってた人は「いててて」と感じるんじゃないかしら(笑)


今度は手羽の経験談を。

入職した時代はOA機器はほとんどなく、パソコンは共有のMS-DOS機が3台だけ、コピー機は会議の多い教務課と総務課に1台ずつしかありませんでした。
教務課に配属された手羽は「手羽君は新人だからコピー機の管理をお願い。毎朝コピー用紙を補充し、少なくなったら発注してね。2台しかないコピー機だから大事な仕事だよ。そしてみんなが来る前にやらないと意味がないからね」と言われ、「そういうもんか」と何も疑いもなく2年間毎朝その作業を10分早く来てやってました。
業務にはない「暗黙の新人担当作業」ってやつです。

で3年目に手羽の下に新人が入ってきて、「よし、これでこの仕事を引き渡せる!」と新人さんに引き継いだ数日後に他の人から「そんなの、気がついた人がやればいいじゃん。10分早く来て仕事じゃないのに仕事としてやるのはおかしいでしょ」と言われ、手羽が2年間毎朝やってきた作業が「そんなの」の一言でなくなりました・・。
それももっともな話。
ただ、手羽の今までの経験だと、「気がついた人がやればいいじゃん」と提案する人はだいたい気がつかない人なんですよね(笑)
その人がコピー用紙を入れてる姿も発注してる姿も一度も見なかったし。


「最初は誰かの好意で始まった。その人がいなくなってルール化した」ってケースは会社みたいな組織だとよくあります。上記のコピー機の件も恐らく始まりはそう。
きっちりと制度化することでいいことももちろんあるけど、矛盾が多く発生し、逆に自分達の首を絞めることにもなる・・・場合もあって。しかも「好意」って金額におきかえると結構かかるんですよね。
結局、組織・社会は「『人』で構成されてるもの」なので、グレーゾーンにしておいた方がうまく回る場合もあるってことを新人さんは知ってた方がいいかも。
あ、「昔の慣習、暗黙の作業を文句言わずに黙ってやれ」って意味じゃないからね。「いい場合もある」ってことを知っておくことが大事で、過去の経緯を調べて変える必要があれば変えればいいんです。

「外線電話を最初に取るのは新人さんの仕事」と決めてる職場もあるんじゃないかしら
「そんなの出れる人が出ればいいじゃん」という考え方がある一方、「どんな相手からどんな内容の連絡が職場に来るか学べる」「接客マナー」「報告のトレーニング」等のOJTとしての意味合いもあります。
「そんな仕事、全然クリエイティブじゃない!」とすぐ怒らず、むしろ「普通のものから新たな価値を考える」というポジティブな考え方が美大での学びだし、その方がクリエイティブ。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。