つくる。デモする。ふれる。クリエイターのためのプラットフォーム「DemoDay.Tokyo」(後編)

クリエイターが集い、自らの作品をデモンストレーションする「Demo Day」カルチャーがNYを中心に盛り上がりを見せています。一方で、デザイナーやプログラマーなどのクリエイターが世間からは認知されないという課題も生まれています。そんな状況に疑問を投げかけ、クリエイター自身が主体となって発信できる場所として、新しいプラットフォーム「DemoDay.Tokyo」が始まります。ファッション、映像、音楽など、ジャンルを問わずにデモンストレーションが行われた第一回目の「DemoDay.Tokyo #0」を、PARTNERの学生ライター志田雅美が取材してきました!

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「僕とレタスについて」(長谷川 睦央)


  • ▲アクアポニックスについて熱弁する長谷川さん

なんと現役高校生エンジニアという長谷川 睦央さんによるdemoは「アクアポニックス」というレタスの自動栽培装置について。プログラミングにより農業を自動化するという試みだけでなく、レタスの栽培と魚の養殖を同時にすることで、水耕栽培にまつわる問題と魚の養殖にまつわる問題を解決し、結果育ちもはやくすることが出来るという意欲作です!(感動)
実家が農家を営んでいる私にとって、農業にまつわるイノベーションはなかなか難しいというイメージもあり、とても興味があったので、大変感慨深い気持ちで拝聴しました…



「欲しいプロダクトは自作しよう!」(林 民夫)

株式会社TASKO所属の林 民夫さんによるdemoは自撮り専用ライト「セル*キラ」について。「セル*キラ」はクリップのようなスタイルでスマホに装着して使う、自撮り専用ライト。(私のような根暗美大生には、セル*キラが発する光どころかその存在自体さえもまぶしすぎた…。)瞳の中にキラキラとした円が映る他、暗いところで自撮りをしても”自分だけ”可愛く撮れるのが特徴です。林さんには「実現までの間に他の企業にアイデアを真似されてしまった…」などのびっくり話も交えつつ、「セル*キラ」というプロダクトの現在に至るまでの波乱万丈ストーリーをお話いただきました。



「プログラミングで(クソ)アニメーションを作ろう」(渡邊 敬之)


  • ▲クソコラの素晴らしさを雄弁に語る渡邊さん

渡邊さんは、プログラミングアニメーションの面白い点とクソコラ(何枚かの画像を切り貼りして作成したクオリティを重視しないコラージュ)の素晴らしい点について語りながら、両者の良い点を掛けあわせてアニメーションを作ろうというお話をされていました。
私が特に共感した点は「クソコラは完成度は低くて暴力的なんだけれど組み合わせが面白い」と評されていた点。クソコラには「完成度が低い」というだけで一蹴してしまうにはもったいない魅力が存在していると思いますし、その強さみたいなものを作品化したときの可能性はとても大きいと感じました!



「オープンソースエコシステム」(堤 修一゙)


  • ▲堤さん作、iOS-9-Sampler

新しいiOSが出る度に新機能のサンプルコードの詰め合わせを発表される、iOS-9-Samplerなどで有名な堤修一さんによるdemoは、やはりオープンソースについて!
なにか新しい技術や試みがあるとどうしてもそれが内向き内向きな動きになってしまうというようなことは往々にしてあると思いますが、このようなオープンな試みがどんどん広がっていけばな…と切に感じました。(しみじみ)



「シアタープロダクツとカットソーで描く世界地図」(THEATRE PRODUCTS)


シアタープロダクツプロデューサーの金森香さんは主にCUT&SEWNとTheatre,yoursという試みについてお話されていました。
CUT&SEWNは当該イベント開催地域で沢山の布を集め、それをパッチワークにして展示し、来場者は気に入った部分を型紙で切って持って帰ることが出来るというイベントです。Theatre,yoursはコレクションの立ち上げと同時にクリエイティブ・コモンズのライセンスをつけて型紙を販売するという試みです。
リアルクローズのファッションに関して新しい試みをするとなると、こちらもなかなか難しいイメージがあったのですが、クリエイティブ・コモンズのライセンスを付与するというのはネット的な考えを上手く落とし込んだ面白いアイデアだと思いました!


「Lighting」(矢野 大輔)


  • ▲逗子海岸で行われた光の波プロジェクトの写真

Tokyo Lighting Designの矢野さんは海岸の白波をライトアップする「光の波」プロジェクトと、アイドルのCupitronさんの光る衣装についてお話されました。
波の音だけが響く静かな夜の海岸に打ち寄せる波がぼわっと光り輝いている様子はとても幻想的で是非とも体験してみたくなりました…。なんと最後にはCupitronさんの生パフォーマンスもあり、DemoDay.Tokyoの最後を飾るにふさわしい演目でした!(興奮←筆者実はアイドル好きです)


素敵なデモの数々の後は、イベント全体の総括と、デモに登場した作品たちのエキシビジョンがあり、イベントは大盛況のうちに幕を閉じました。

私が特に印象に残ったのは総括での「言葉は言葉でしかない。しかしなぜか世の中実際モノをつくっている人じゃなくて、それを説明する人がヒエラルキーとして上で、モノをつくるひとが搾取されている。モノをつくる人が居なければ世の中動かないわけで、モノをつくる人と話す人は対等であるべき」という言葉でした。
実際私も美大生として生活している中で、「つくれる」という職能があるが故に「単なるクライアントの手の延長」として扱われてしまうというジレンマに陥ることがあったりもするので、この言葉に強く共感しました。このDemoDay.Tokyoのような作る人のパワーを曝け出せるイベントが広がっていくことによって、「話す人」と「つくる人」が対等に向かえるようになることを切に願うばかりでした…。

私たち美大生のように「モノをつくる人たち」が主役のDemoDay.Tokyo。今回私はこのイベントが、自らの制作についても省みるとても良い機会となりました。
今回はDemoDay.Tokyo #0ということで、次回以降開催された折には是非あなたも参加されてみてはいかがでしょうか!?

DemoDay.Tokyo
NYを中心に盛り上がりを見せている「Demo Day」カルチャーを元にしたイベント。
広告、アート、音楽、映像、ゲームなど、登壇者の領域にはこだわらず、
クリエイター自らが作品をデモンストレーションし、その才能を認知させることを目的としている。

モデレーター:清水幹太(PARTY)・塩谷舞
公式サイト:http://demoday.tokyo/
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執筆 志田雅美 
多摩美術大学美術学部2年。フリーマガジンPARTNER 33-34号 関東代表・編集長。 様々な物事に人々の活動に変化を起こすような新たなアーキテクチャを与えることで問題解決を行うことに興味を持って日々勉学に励んでいます。

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本記事の前編はこちら
つくる。デモする。ふれる。
クリエイターのためのプラットフォーム「DemoDay.Tokyo」(前編)

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