過去の五輪エンブレムを調べてみた

今回の一件をポジティブに考えるなら、「エンブレム」という言葉が浸透したことだと思う手羽です。ほんの2ケ月前はみんな「シンボルマーク」と呼んでましたからね。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「ちょwwお前、このタイミングでそれ書く?空気読めよ」なことをするわけがなく、純粋に知りたいことがあって。

ほぼ1年前に美大ラウンジブログ(裏)で
TOKYO 2020 大会エンブレムデザイン募集
という記事を書きました。
当時はそんなに注目されなかったんだけど(笑)、公式サイトから公募要領が消えたこともあって、この1ヶ月はすごいアクセス数になってるんです。それまでは1日数百アクセスしかなかったのが、エンブレム発表日は1日で2000、白紙撤回のあった9月1日は4000アクセスを超えました(笑)
以前書いた
2020年東京五輪公式エンブレムと美大
も「いいね!」数・リツート数は少ないのに、ジワジワとアクセスランキング3位に入ってしまいました。→


んで、「そういや、これまでのオリンピックエンブレムはどうやって決まったんだろう?てかデザイナーは誰なんだ?」と疑問に思い始め、調べてみたんです。
検証サイトとか過去のエンブレム画像一覧サイトはいっぱいあるんだけど、これが意外とまとまってないもんなんですよ。

おっと、本題に入る前に、「エンブレム」と「ロゴマーク」の違いについて面白い記事を発見したので貼り付けておきます。
IOC・JOCの定義による「エンブレム」と「ロゴ」の違い
簡単に書くと
•エンブレム:オリンピック・シンボルを含む
•ロゴ:オリンピック・シンボルを含まない

で、今回の一件は「エンブレム問題」ではなく、どちらかというと「ロゴ問題」という解釈ができるそう。
面白いなー。


さて本題に。
まずは日本で開催されたオリンピック関係。
前回東京オリンピックをはじめとして、これは書籍・文献がたくさんあるので、簡単に。
(参照・引用元を最後にまとめて表記させてもらいます)

●1964年夏季東京オリンピック・シンボルマーク
河野鷹思氏、亀倉雄策氏、杉浦康平氏、田中一光氏、永井一正氏、稲垣行一郎氏の6人のデザイナーによる指名コンペで亀倉雄策さん案が選ばれた。

●2016年夏季東京オリンピック・招致シンボルマーク
栄久庵憲司さんがデザイン。

●2020年夏季東京オリンピック・招致シンボルマーク
2011年9月12日~26日まで、プロアマ問わず、ロゴデザインを募集、審査委員会(水野正人、佐藤可士和、小山薫堂)による選考を実施。グランプリに選ばれた島峰藍さん(当時女子美術大学生、のちに東京芸術大学大学院へ進学)のロゴをもとにブラッシュアップして制作。

●1972年冬季札幌オリンピック・シンボルマーク
1966年10月、指名コンペが行われた。指名されたのは、原弘、亀倉雄策、栗谷川健一、田中一光、永井一正、細谷巖、和田誠、仲條正義の8名。永井一正さん案に決定。

●1998年冬季長野オリンピック・シンボルマーク
世界中のランドー・アソシエイツの社内選考を繰り返して、(100人以上のデザイナーが参加。1000点以上の作品から)12案だけが長野オリンピック冬季競技大会組織委員会への第一回プレゼンに提出。篠塚正典さん案に決定。
ちなみにランドー・アソシエイツ社はピクトグラム等のデザインもトータルに請け負っています。

★参照・引用元:
東京デザイン2020フォーラムVol.1 » 永井一正
能ある鷹も 爪を剥がし オリンピックのシンボルマーク・ロゴの変遷
2020年オリンピック招致ロゴ&サイト比較 : これ、誰がデザインしたの?
オリンピックと美大
株式会社イデア クレント 代表取締役 篠塚正典 | Ginza Official – 銀座公式ウェブサイト


招致ロゴ以外は指名か指名コンペってことですね。
栄久庵さんがご存命だったら、この事態をどう見ていらっしゃるか・・。


さて、海外はどうでしょう。
夏季オリンピックに絞って調べてみたんだけど、日本語であんまりそういう情報が転がってなく、いうほどみんな選考過程とかデザイナーとかに興味ないということかもしれません。
英語で書かれたものならたくさんあると思うので、つくづく「世界的なもの調べようと思うと英語が読めないとダメだなあ・・」と。


1992年バルセロナオリンピック
ホセ・マリア・トリアス・フォルクさんがデザイン。
ちなみにホセさんは志摩スペイン村のシンボルマークもデザインされてます。
ただ、今回の記事で唯一この情報ソースだけがWikipediaでして・・。
「参考にしても信用しちゃいけない情報」がWikipediaと言われてるから、公式情報があればぜひ教えていただきたく・・。
 
 
1996年アトランタオリンピック
これが全然見つからない・・。
情報求む。
 
 
2000年シドニーオリンピック
ブーメランを素材にしたオリンピック新ロゴ - JOC
JOCのWEBサイトに発表会のことは書かれてるんだけど、誰がデザインしたかの記載はなく、「25万豪ドルかかった」とかそういう情報だけなんですよね・・・。
 
 
2004年アテネオリンピック
ロンドンの有名ブランドコンサルタント会社・Wolff Olins(ウルフ・オリンズ)がデザイン。
ウルフ・オリンズ社はユニリーバ、GEのロゴをデザインしてるし、2002年に博報堂と連携協定を結んでおり、「東京メトロ」や「ディー・エヌ・エー」もそうだし、なんと東北大学さんのロゴマークもデザインされてます。
東北大学、公式ロゴマークを発表
 
 
●2008年北京オリンピック
こちらに詳細が書かれています。
Beijing2008::ロゴ
引用させてもらいます。
============
2002年7月2日、北京五輪組織委員会は、全世界のデザイナーに呼びかけ、大会エンブレムの設計を募集。それからの3ヶ月間、1985作品が寄せられました。2回にわたって審査の結果、上位10点の候補作品が決定しました。(中略)この後、北京五輪組織委員会はさらに社会各方面の人々を招き、これらの作品に対する意見を求めました。(中略)現在のエンブレムには、腕を大きく伸ばす、足のデザインを変えるなどの修正が加えられています。他にも、デザインの筆使いを太目にし、頭部と全身の比例を少し調整し、印章としての完成度や自然さを増すなど、細やか変更も多数加えられました。「中国印」の大きな修正は8回か9回に及び、繊細な修正は毎日のように行われたということです。
============
採用されたのは当時45歳の郭春寧さん。
ちなみに原研哉先生は北京オリンピックのシンボルマーク最終エントリーにも残っています。
HARA DESIGN INSTITUTE::北京オリンピックシンボルマーク設計競技案

ちなみに各競技のシンボルマーク(ピクトグラム)は、
新世界日语
==========
著名なデザイン機構がデザインを担当し、中央美術学院や清華大学美術学院が入選案への改善作業に携わりました。この間に、内外のデザインの専門家やアーティスト、オリンピックの専門家、選手の代表など様々な人から貴重な意見が寄せられた
==========
学生さんが関わってるそうです。若いデザイナーの力を総動員したところは、1964東京オリンピックを髣髴とさせますね。
 
 
2012年ロンドンオリンピック
デザウマ これが今回のロンドンオリンピックの公式ロゴです。
ロンドンの有名ブランドコンサルタント会社・Wolff Olins(ウルフ・オリンズ)がデザイン。
そうなんです。アテネオリンピックと同じ会社が担当されてるんですよ。
ロンドンオリンピック招致委員長が直々にこの会社を指名したそうで、40万ポンド以上のロゴ制作費やデザイン自体、そしてマスコットキャラクターも含めいろいろあったよう・・。
 
 
2016リオデジャネイロオリンピック
8月28日 東京2020エンブレム 選考過程に関する記者ブリーフィング・質疑応答(全文)
引用が↑ここからっていうのもなんですが、
===========
ロンドンもリオも、個人コンペではなく、最終的な展開案まで含めたデザイン会社間のコンペにより、エンブレムが作成されております。
===========
とのこと。リオのエンブレムもいろいろ揉めてるのはご存知の通り・・・。

なお、オリジナル書体はNokia、Vodafone、TOYOTAなどの大企業のカスタム書体を手がけるDalton Maagだそうです。
フォントブログ - 次期リオデジャネイロ・オリンピック2016のオリジナル書体が公開されました。
Dalton Maag | Home



シドニー以前の情報は個人ブログレベルだとあるのだけど、信用できるソースをなく、調べるのをやめました・・・。
ただこの範囲でわかるのは、「完全オープン参加のロゴ公募」「その国のテイストはいれつつも、国の象徴的なものをそのまま入れたデザイン」は少なそうってことですね。

ちゃんと調べればもっと精度の高い情報が見つかるはずですが、この2日間、空き時間を使って調べたレベルだとこんなもんってことで。詳しい方、教えてください!!
あ、今年の美大の卒論はこれをテーマにしたものが多くなりそうですね(ぼそっ)
手羽のこれは研究論文というか、夏休みの宿題レベルかな。


ところで。
PARTNER主催のこういうイベントが緊急開催されることになりました。
9/10(木)PARTNER関東支部でイベント開催決定!東京五輪エンブレム問題について美大生が意見交換。
開催決定したのが白紙撤回前。
その時はまだ「デザイン界の問題」だったけど、状況が全く変わったんじゃないでしょうか。
学生さんがこの件をどう捉えているのか興味のある方はぜひ!


以上、敵に回すと怖いけど味方にすると頼りない手羽がお送りいたしました。



今日のまとめ
●もちろん手羽美術大学★のロゴは

です!!


よし、手羽美術大学★開設の野望がまた一歩近づいた!!

tag

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。