21_21 DESIGN SIGHT「トランスレーションズ展 -『わかりあえなさ』をわかりあおう」も見てきた

2020年11月16日(月)

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11月14日、

【巡回展もやります】「見えてないデザインー社会に問い続けるムサビー」に行ってきた
を見た後に、お隣の21_21 DESIGN SIGHTでやってるこちらの展覧会も見てきました。
これが手羽好みの展覧会で。

トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう

●会期:2020年10月16日(金) - 2021年3月7日(日)
●休館日:火曜日(2月23日は開館)、年末年始(12月26日 - 1月3日)
●開館時間:平日11:00-18:30(入場は18:00まで)|土日祝10:00-18:30(入場は18:00まで)
●入館料:一般1,200円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料
●展覧会ディレクター:ドミニク・チェン
●参加作家:市原えつこ、伊藤亜紗(東京工業大学)+林 阿希子(NTTサービスエボリューション研究所)+渡邊淳司(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)、Google Creative Lab+Studio TheGreenEyl+ドミニク・チェン、エラ・フランシス・サンダース、島影圭佑、清水淳子+鈴木悠平、Takram、長岡造形大学、永田康祐、noiz、長谷川 愛、シュペラ・ピートリッチ、Ferment Media Research、タニア&ケン・フィンレイソン+Google Gboard team、本多達也、やんツー、ペイイン・リン、ティム・ローマス+萩原俊矢、和田夏実+signed+筧 康明


「翻訳=トランスレーション」と呼ばれる行為を「コミュニケーションのデザイン」とみなして、互いの「わかりあえなさ」を受け容れあう可能性を提示する展示。


  • お。GoToの取り扱い店舗なのね。

一番最初の部屋は、マイクに向かって単語を言うと23ヶ国語に翻訳された言葉がスクリーンに映し出されるGoogle Creative Lab+Studio TheGreenEyl+ドミニク・チェン「ファウンド・イン・トランスレーション」
「翻訳」を具現化したものだけど、これが意外と奥深い。
例えば、さっき紹介した「GoToトラベル」も、完全に間違いとは言えないけどストレートに直訳すると「旅行に行くために行く」になり、あえて「Go」を使いたいなら「Go on a trip」が自然じゃないか?という話もあります。
でも日本人には「GoToトラベル」の方がニュアンスは伝わりやすく、そこに微妙な言葉の「わかりあえなさ」があるし、「大事なのはそんな細かいことじゃなくて」なコミュニケーションの「わかりあえなさ」もある。

「しかし、翻訳の展示でそんなに人は入るのかな?」と疑問だったけど、

「そうか。これってデザインだしコミュニケーションデザインだしソーシャルデザインだ」と遅まきながらメイン会場に入って気が付きました。
日本語を英語にする等「違う国の言葉に変換する」だけじゃなく、普段「企業や自治体の人にアートやデザインを翻訳してくれる人がもっと必要」と言ってるアレだし、言葉以外の例だと、湿布もそうですね。
冷感湿布と温感湿布の2種類があるけど、実は湿布には筋肉患部を冷やしたり温めたりする効果はなく、「スーとして効いてる気がする!」が好みか、「ポカポカして効いてる気がする!」が好みかぐらいの違いしかありません。
「効いてる感じがする」をデザイン(翻訳)したのが冷感湿布と温感湿布とも言えると。

そして「翻訳学」といえば、よく知ってる人がいた!


  • 伊藤亜紗(東京工業大学)+林 阿希子(NTTサービスエボリューション研究所)+渡邊淳司(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)「見えないスポーツ図鑑」

東京工業大学×武蔵野美術大学の合同ワークショップ「コンセプト・デザイニング」でお世話になってるのが、翻訳学を専門にされてる野原佳代子先生。
「東工大×ムサビ」と聞くと、「安っぽいアートとテクノロジーの融合」(笑)をイメージされちゃうんですが、そうならなかったのは野原先生のおかげだし、新学科構想の発想は「コンセプト・デザイニング」での成果がかなり影響しています。

伊藤亜紗さんと野原先生のYotubeがあったのでこちらをどうぞ。


  • 和田夏実+筧 康明「…のイメージ」

他国語に変換できない言葉を展示したエラ・フランシス・サンダースの「翻訳できない世界のことば」

日本語だと「ワビ・サビ」がそうですが、「木漏れ日」も英語で表現できる単語がないんですって。「忖度」って言葉も翻訳者泣かせだと聞いたことあります。
以前、長澤学長も「日本でいう『懇親力のデザイン』をうまくニュアンスごと表現できる英単語がない」と言ってましたね。結局「Conviviality Design」(コンビビアリティ・デザイン)を使ってましたが。


  • 長岡造形大学森本康平助教を中心とした学生21名による火焔土器リミックスプロジェクト「縄文のある暮らし」

小倉ヒラクさんのFerment Media Research「NukaBot v3」
一言で説明すると「ぬか漬けロボット」ですが、糠床にいる微生物の代謝をセンサーで読み取って、その代謝データのパターンを読み取り、スマートスピーカーで糠床の発酵具合を「そろそろかき混ぜなよ」等と音声で教えてくれるってもの。つまり微生物の言葉を翻訳してくれる機械なんですよ。
こんな感じです。


  • グラフィックレコーディングのパイオニアである清水淳子さんとインターミディエイターの鈴木悠平さんによる「moyamoya room」

初対面の人々が集められ、みんなが心の中に抱えている複雑な気持ちや感情=モヤモヤを、目で見えるビジュアルで描き出し、参加者みんなで対話する試み。
確かにグラフィックレコーディングもトランスレーションだわな。
にしても「モヤモヤ」ブームですね(笑)

会場ラストにあるのは、やんツーさんの「観賞から逃れる」
「鑑賞から逃れる」とはどういうことか。
動画を撮ってきたのでご覧ください。こういうことです(笑)

 
ミッドタウンは冬の準備に入ってました。

例年のこの時期はミッドタウンのイルミネーションが有名です。
規制がかかるぐらいの来場者数になるんですが、さすがに今年は人がいっぱい集まっちゃまずいってことで、かなり時期をずらして例年1月から始まる

MIDTOWN ICE RINKが今年は11月19日からオープンするそう。
ラウンジが無くなったら21_21やデザインハブ以外は多分行かなくなるだろうから、ラストスケートするかいな。


以上、21_21を「にじゅういち、にじゅういち」と本気で読んでる人を知ってるので、「ツーワンツーワン」と翻訳しないとダメだなあ、の手羽がお送りいたしました。
翻訳?

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。