美大を卒業して何やってるの?第1話-ムサビ卒・べべつこさんの場合

ご要望の多かったこのシリーズをいよいよスタートさせる手羽です。

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ムサビ日記・美大日記・美大ラウンジ時代に人気の名物シリーズがありました。

それは、日記OBOGにリアルな現況を書いてもらう「久しぶりに日記を書いてもらおう」シリーズです。
ムサビ日記:室長の手羽 日記を書いてもらおう
美大日記:ムサビの手羽 久しぶりシリーズ Archive
美大ラウンジ(裏)-久しぶりシリーズ


日記を書いてきた卒業生に1年に一度、現況報告をしてもらう。
美大卒業後、一体彼らは何をし、何を思い、どんな変化が起きているのか、もしくは変わってないのか。
「同じ卒業生をずっと追っかける」という企画は、たぶん大学業界でも他にないんじゃないかと。

でも、みんなが一番知りたい情報なのに意外とこの情報が存在しないんですよね。
大学広報だと超有名企業で働く人、大きな賞を受賞した人、ガツガツ活躍してる人しか紹介されません。
でも、そんな人ばかりじゃないのは当然で、むしろそんな人じゃない人の方が多いわけで。
美術に関係ない仕事をしてる人もいるし、子育てに専念してる人もいる。
手羽もいってしまえば、「誰もがイメージできる美大出身者の仕事」ではないです。
ただそれは「狭い世界」「わかりやすい世界」でしか見てないからなのかもしれない。


このセキララな現況報告シリーズから、共感と「美大卒の生き方」「美大での学びとはなんなのか?」「卒業後、どんなことを思っているのか」を感じていただけるはず。
PARTNER_WEBでOBOGシリーズを続けるか迷ったりもしましたが、むしろ
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日本各地、世界各地のライターそれぞれのフィルターを通し、
世界とつながる感覚や刺激を提供します。
「美大生フィルター」を通して見える
ひと、もの、こと。

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をうたうPARTER_WEBに一番向いてるコンテンツだと気が付きまして。
受験生はもとより、現役美大生、美大卒業生、保護者などいろんな人に読んでほしいと思ってます。


最初は「ゴールデンウイークぐらいブログ書くの休みたいなー・・あ、OBOGに書かせればいいんじゃん!オレ、天才!!」ぐらいな軽い気持ちでGW特別企画としてスタートさせたんですが、誤算だったのは日記ライター卒業生がどんどん増えてGWだけでは収まらなくなったこと。
「いや、そんなの最初からわかるだろ」って話ですが、こんな人気シリーズになるとは全く思ってなく、最初はそれぐらい軽いノリだったの(笑)
なので、これまでのように「季節限定でまとめて掲載する」という形ではなく、長期的に紹介する形にしていきます。
美大OBOGの言葉を参考に、手羽美術大学★のディプロマポリシーを考えるテイで。
また、ずっとブログを書いてきたメンバーなので、PARTNERライターさんには書き方の参考になるかも。
文章だけでこれだけの「興味をひく読み物ができる」って意味で(ライターOBOGのハードル上げてます)


というわけで、前置きはこれくらいにしてさっそく。

トップバッターはムサビ・視覚伝達デザイン学科卒のべべつこさん。
「PARTNERで久しぶりシリーズやるか!」と決めた時に真っ先に思いついたのがこの人です。
なぜ最初にもってきたのかは、読んでいただければわかるはず。

では、はりきってどうぞ!!!

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お久しぶりです、べべつこです。

はじめてこの「卒業企画」に参加させていただけることとなり、何を書けばいいのかなーと模索しながら近況報告していけたらなと思っています。よろしくお願いしますー。


それではまずは自己紹介から!

2014年に武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科を卒業しました、べべつこと申します。
在学中はテック系の記事やことが好きでよくそれ系のブログを書いておりました。
また、芸術祭では脳内視覚化プロジェクトというプロジェクションマッピングコントをやったり、巨大テントの中で特撮映画を上映したり。

卒業制作展では「理想の人格ポーカー」というコミュニケーションゲームを作って12下展示室前でずっと遊んでもらっていたので、卒制展にいらしてくださった方とはお会いしているかもしれませんね。


で、です。
実はべべつこ、就職活動を一切せずに卒業を迎えました。(どーん

卒業後すぐイギリスはロンドンへ飛び、美術大学の基礎課程コースにて大学院への準備と語学勉強。
その後、今年4月に一時帰国し、現在はとある外資系イベント会社に勤務しております。
そして先日めでたく大学院への合格オファーをいただいて、夏にはイギリスへと戻る予定でいます。

って書くと華々しいんだけど、この超絶人見知りがそんなにスイスイ上手くやってたわけないのですよ。

憧れていた薔薇と紅茶と名探偵の国は、超てきとーで超めんどくさがりで、絶対に自分の意見を曲げない人々の国でした。
人種差別的な言動に怒り狂う日もあれば、英語のできなさに死にたくなる日もあり、自分は完全にただのガイジンだなーと思う日々。

移民がこれ以上入ってくるのを押しとどめたい英国政府の思惑もあり、ビザ、金銭面も含めて立場は最弱です。
なんだあのEU圏民との扱いの違い。完全にレベル1ひのきのぼう。

日本に帰ってくると、周りで飛び交う言語が完全に理解できる素晴らしさと、自国民として手厚く守られていることのありがたみをひしひしと感じます。
でも自分から望んで行っている以上、意地でも溶け込んで知識を吸い取ってこなければならないのです。だってそのために行ってるんだもん!

前置きが長くなりましたが、そんなわけでこのブログのテーマは「人見知りのための生存戦略」です。よろしくお願いします。


わたしは小さい頃から人とうまく付き合おうと思ってまじめに考えてしまうがゆえに人見知りでした。
この人見知りが大学中に何をしていたかと言うと、もっぱらコミュニケーションを取るための方法としてデザインを学んでおりました。
よく「嘘だろう」って言われるのですが、べべつこは本当に本当に人と話すのが苦手、というか対人恐怖症の気があります。
なので、なるべくならたくさん喋らずに人と仲良くなれる方法、人に気に入ってもらうための方法をずっと模索してきました。

そんな一見デザインとはあまり関係なさそうなテーマでも、教授陣や仲間達は雨あられと情報をくれます。
もらったヒントやとっかかりを頼りにひたすら調べるくせがつきました。

これを元に、転機となる授業に出会ったのが3年生のとき。
ソーシャルデザインを学ぶというその授業で、教授が大切にしていたのは

「絶対に他人を巻き込んでプロジェクトを進めて行くこと」

この教えにより、超絶人見知りのわたしは否応無く、知らない会社にアポをとって支援をもらいに行ったり、知らない大人に会いに行って協力を仰いだりしなければならなくなりました。
当時は人に会うのなんて怖くて仕方がないし辛かったけれど、留学して、今働いていて、このふたつのことがすごく役に立っています。
留学も、今の会社も、ほぼ人伝いや突撃してお話をいただくことができました。
思えばあの授業に出会っていなかったら、今わたしはここにいないかもしれないのです。

ただ、完全に人見知りを消してしまいたいかといえばそうでもなく。

べべつこは卒業制作で、人見知りを解決するためのアイテムとして「理想の人格ポーカー」というコミュニケーションゲームを作りました。
これは24年間の枷だった「人見知り」という自分のコンプレックスをなんとかいい方向に昇華できないかなと思ったのがきっかけです。

このゲームのキャッチコピーは「完璧なやつにどうしようもないやつが勝てるときがある」
かっこいいグラフィックデザインも、静謐な文字組も組めなくても、人見知りは人見知りなりの戦い方を見いだせば周りはそれを認めてくれる。
この先も「人見知り」というテーマでずっとものを作り続けて行こうと思えたのは、ムサビのそういう土壌で育てられたからだと思います。

何も後輩の方に伝えられるようなことは持っていないのですが、

「自分の一番コンプレックスの部分にスポットライトを当ててあげるといいかもしれないです」

とだけ。


周りはキラキラ輝いて見えるのに、自分は何も持っていないなーと沈んでしまった時は、いっそそのまま沈みきってみるといいかもです。
海底に巨大な難破船が沈んでいて、とてつもない財宝が眠っている場合だってあるのですよ。
深海魚のかわいいのにも会えるかもしれないし。メンダコとか。

ここまで読んで下さってありがとうございました。

良かったらムサビ日記の他メンバーさんの話もぜひお読みになってみてくださいませ。


八月末までは日本におりますので、もしちょっと喋ってみたいなと思ってくださった方がいたらお声がけください。
ビールでも飲みにでもゆきましょうー。
ほなほな!

ーべべつこ
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他のライターOBOGのハードルを上げちゃったかな?(笑)


ちなみに文中に出てくる「理想の人格ポーカー」は卒業後、ネットでも販売されました。
http://idealcpoker.theshop.jp/
*現在はソールドアウト。

しかし、べべつこさんが人見知りとは全く知らなかった・・海外に住むムサビ日記OGに突然会いにいったり、むしろ活発的な学生さんという印象しかなく。
手羽も相当な人見知りだけど頑張って生きていきたいと思っております。


今日のまとめ
●人見知りだっていいじゃない。だって美大生だもの(いちろお)

よし、手羽美術大学★開設の野望がまた一歩近づいた!!

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。