【グッドデザインを学ぶ科目は「社会」?!】GOOD DESIGN EXHIBITION 2019に行ってきた【その2】

2019年11月4日(月)。祝日だけどムサビは授業日です。

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現在、六本木の東京ミッドタウンではグッドデザイン展、通称G展が開催されています。
GOOD DESIGN EXHIBITION 2019 2019年度 グッドデザイン賞受賞展
●会期:2019年 10月 31日(木)ー 11月 4日(月・祝)
●時間:11:00-20:00*最終日 18:00まで / 入場は閉館 30分前まで
●会場:東京ミッドタウン各所
●入場無料
●主催:公益財団法人日本デザイン振興会

今日までです。急げ!!

てなわけでG展レポートをお送りしております。
昨日までの話はこちら。
【グッドなデザイン】GOOD DESIGN EXHIBITION 2019に行ってきた【その1】

では手羽が気になったものをガンガン紹介していきますよ。








ところで。
「あんたのデザイン、グッドだね!」と勝手に決めてるわけじゃなく、「応募対象の事業主体者」または「デザイン事業者」から応募されたものが対象になってるのはご存知ですか?
つまりグッドデザイン賞は公募制なんです。1957年当初は審査委員自身が街へ出て「よいデザイン」を探す選定方式だったけど、1963年から「公募形式」に変わっています。
「申請しないと対象にならない」という仕組みだと知らない人は意外と多いんじゃないかしら。何を隠そう手羽も8年前はそうでした。勝手に「うん、グッドだね!」と勝手に表彰してるもんだと(笑)

今年は4,772件の応募の中から1,420件が受賞しており、晴れて受賞したものは亀倉雄策さんデザインの有名な「Gマーク」をつけることが認められます。

このGマークを使う場合は(総事業費によって違いますが)最低年間22万円かかります。
この「Gマークを使うのにお金がかかる」ことも知らない人は多いはずで(行政機関や学校法人等公共機関・団体だと使用料は無料、個人や中小企業だと半額)、最初聞いたときは「なるほど。社会の仕組みってうまくできてるんだなあ」と感心したっけ。


昨日紹介した通り、設立からしばらくは優れた工業製品のデザインが対象だったけど、生活の質を総合的に向上させることが目標になり、2000年前後から情報やメディアそのもののデザインを対象とする「コミュニケーションデザイン部門」が新設されたりしてます。
1998年の審査基準に「ソリューション(問題解決方法)の適切性」「システム的解決により生活次元でのベネフィットを生み出しているか」という言葉が初めて登場するんで、このあたりがヒト視点に切り替わりだしたターニングポイントになるのかな?(詳しい方教えてください)

今のグッドデザインについて、わかりやすい説明がサイトにあるので引用させてもらいます。
デザインの良さって?|学生向け紹介ページ
デザインは、見た目を美しくすることが得意です。でも実は、得意なのはスタイリングだけではありません。使いやすくする、安心・安全にする、産業を発展させる、技術を革新する、話し合いを活性化する、環境負荷を軽減する、社会課題を解決する、など... なにかをより良くすることが「デザイン」の得意なことで、それを鮮やかに達成しているのが「グッドデザイン」ではないかと、グッドデザイン賞は考えています。

言いたいことがここに全部書かれてますね。

社会情勢によって変わるというか、その時代に起きてる課題を解決するのが「デザイン」なので、毎年見てると徐々に災害対応系、医療系、福祉系、少子高齢化対策系の割合が増えてる印象があります。


  • 自動車用帰宅支援キットや災害用ログモジュール


  • 医療シミュレーション用臓器モデルや眼科手術訓練用シミュレータもグッドデザイン


2005年に世界一細いインスリン注射用針がグッドデザイン大賞を受賞したのが「ああ。これもデザインなのか。デザインって使えるんだなあ」と医療界に思われだしたきっかけかもしれません。
患者の不安を軽減させるのもデザインの力なんです。





今回のG展で一番手羽が「この発想はすごい」と思ったのが、こちらの「棟下式(むねおろししき)」でした。
棟上げ式は昔からありますが、その逆の「棟下ろし式」という考え方。
高齢化が進むと空家問題もどんどん増えるから、棟下式をすることで思い出の家への感謝と共に区切りをつけ、ホっと胸を下すことができる。今まで「作る」ことが大事だったけど、これからは「壊す」「無くす」ことをポジティブに捉えられる仕掛けが必要で、この発想こそデザインだな、と。
(数年前のミッドタウンアワードデザインコンペっぽいけど)


手羽がプレゼンでよく使ってるネタをひとつ紹介します。
タマビプロダクトの和田先生が2014、2015年はグッドデザイン賞審査員をされてて、当時何度か「世界一受けたい授業」でグッドデザインを紹介してるんです。
でも、ことごとく科目が
【社会】和田 達也 先生|常識を変えた!グッドデザイン最新版
【社会】和田 達也 先生|あっ!と驚く技術と発想!暮らしを豊かにするグッドデザイン
「 美術」ではなく「社会」だったんですよ。

指導要領的に「美術(デザイン)」ではなく「社会」にあたるからじゃないかと推測するのだけど、私たちからすると衝撃的な出来事で「あ、世の中の人はグッドデザインって『美術』という解釈にならず『社会』の括りと捉える教育受けてるんだ。いくら美大が『これもデザインです』と頑張って発信してもそりゃ通じないよな」と。
この解決方法として梅原真さんが以前から提案してるのが「図工・デ」だったりします。

どうしても中高の美術教員はファインアート卒の方が多く、こういう「広義のデザインの考え方」が弱い傾向にあるので、美術の時間にほとんど教わらない(教えない)プロジェクトデザイン、ブランディングデザイン、コンセプトデザイン、サービスデザイン、エクスペリエンスデザイン、コミュニケーションデザイン、そしてソーシャルデザイン等など「いろんな『デザイン』の展覧会」がグッドデザイン展だから、グッドデザイン展こそ中学や高校の美術学習、そして先生の勉強に最適だと思っています。


G展はミッドタウン室内だけじゃなく外にも展示していて、


  • 大型遊具などは1階に展示してるし、


  • デザインタッチ企画として、深澤直人さんと五十嵐久枝さんがデザインしグッドデザイン賞を受賞した遊具で遊べたりもします

また、21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3では「2019年度ロングライフデザイン賞受賞展」をやってます。
こちらも今日11月4日までです。


さて、あえて11月2日にG展へ行った理由がありまして、その日5階のデザイン・ラウンジでは・・・という話は長くなったので明日に続くっ!



以上、
旭日重光章、天坊昭彦氏に エネルギー安定供給に尽力:日本経済新聞
天坊理事長が、旭日章のうち、旭日大綬章に次ぐ第二位の勲等の旭日重光章を受章されて、話が大きすぎてどう祝うべきなのか全くわからない手羽がお送りいたしました。
デザインの力でこの課題を解決してくれないくれないかしら・・。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。