「IAM インスティテュート オブアート マルタランゲージプログラム」

「IAM インスティテュート オブアート マルタランゲージプログラム」は、若い日本のアーティストに向けて、地中海に浮かぶ歴史ある小さな国、マルタ島(マルタ共和国)にて、6か月間アーティストが海外に進出するために必要な「語学研修」と「制作活動」を行うプログラムです。今回はこのプログラムの内容や魅力を、発起人である猪瀬 直哉さん、マネジメント宮原あき子さん、そして参加者の西 毅徳さんと谷口 洸さん、4名それぞれのインタビューを通じてご紹介します。

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地中海・マルタ共和国に6か月滞在する、日本のアーティストが海外に進出するためプログラム

アーティストが海外に出る際の壁となる「語学」と「制作と発表の場」を、このプログラム「IAM インスティテュート オブアート マルタランゲージプログラム」でサポートしています。

滞在中、マルタ大学語学学校にて英語研修と並行して、期間中2回のゲストチューターによるチュートリアルに参加したり、本プログラムが用意したアーティストスタジオにて制作を行い、ファイナルショーとして展覧会にて作品を発表していただきます。
マルタ共和国は、1964年に英国から独立したため英語とマルタ語が公用語です。一年を通して気候が温暖で、治安が良く、快適な環境で研修生活を過ごすことができます。語学学校では様々な国からの生徒とのふれあいの中で文化や環境の違いも学べるでしょう。
多くのアーティストが海外に行った際、英語の学習をしながら慣れない環境の中でスタジオや展示会場を探すのは困難を極めます。このプログラムは、制作、語学学習をより充実させるべくIAMがサポートし、アーティストが今後の海外進出を目標とした活動をする足掛かりとなる環境を整えたプログラムです。

研修期間中は、現地日本人スタッフがサポートしますので、語学に自身のない方も安心して制作に取り組むことができます。



発起人・猪瀬 直哉(いのせ なおや)さんインタビュー


ーー「IAMインスティテュートオブマルタランゲージプログラム」発足のきっかけをお聞かせください。

これまでの僕の経験や、そこで得たことをこれからのアーティストに知ってもらい、今後のアーティストとしての活動を、日本というボーダーを超えて、グローバルなフィールドで活動できるプラットフォームを作りたいと思ったことがきっかけです。
アーティストはキャリアやコネクションがない状態のまま海外で活動しようとすると、言語や文化の違いに悩まされながら、住居、スタジオ、展示会場、長期の場合はビザなど、全て自分自身でオーガナイズしなければならず、金銭や時間の無駄をした挙句、結局何も身に着けることができずに帰国した、というような状況に陥りがちです。
僕の場合は本当にラッキーで、ある程度そろった環境の中でスタートすることできました。


ーープログラム内容についてお聞かせください。

地中海に浮かぶマルタ共和国にてアーティストが6か月間滞在し、IAMが提供するアーティストスタジオで制作を行いながら、グローバルに活動するための語学研修を行います。
そのほか、研修中に2回のチュートリアルとファイナルショーを行うことで、経験豊かなチューターさん達から生の声を聞いたり、今後のアーティストの方向性、作品に興味のある方々の動向をうかがい知ることができます。


ーー今後のプロジェクトにおける展望や参加される方へのメッセージをお願いします。

とにかくいい環境を整えたいですね。作品制作と英語学習がスムーズにできる環境をより良くしていくことが目標です。
2019年のファイナルショーは、Valletta Contemporary という、今のところマルタで一番エスタブリッシュされた会場での開催が決まり、現地のスポンサー様から展覧会を助けてもらったり、いろいろな人に多大なるご協力をいただいております。
プロジェクトを成熟させるにつれ、規模をもっと大きくしつつも敷居は低くして、多くの人に参加してもらえるようにしたいですね。

ご承知の通り競争の激しい業界ではありますが、僕は業界全体が盛り上がらないと駄目だと思っているんです。でなければ、本当に伝えたいこと、表現したいことが伝えられるようにならない、と思っています。なので、このプログラムに参加して、ある程度恵まれた環境とは言え、それでも日々起こる海外生活での問題からサバイバル能力を身に付けて、フレキシブルでインターナショナルな生き方を学んで欲しいと思っています。
「水が川から海へ流れる」ように日本人アーティストが世界へ羽ばたいて欲しい、そのサポートを全力で致します。このプログラムをもっともっと多くの方に知っていただきたく思います。

猪瀬直哉
IAM Institute of Art Malta Language Program アートディレクター
2012年に東京芸術大学油画専攻を卒業し、文化庁新進芸術家海外研修員として渡英。
2017年にロンドン芸術大学チェルシー・カレッジ・オブアーツ MA Fine Arts を修了し、現在はロンドンを拠点に活動中。20th DOMANI・明日展に選出され、国立新美術館や高松市美術館で展示。作品収蔵先には高松コレクションやベネトンコレクションがある。初個展「Blue」が銀座 THE CLUB にて2018年12月1日(土)から2019年1月31日(木)に開催された。


                             
マネージメント・宮原 あき子(みやはら あきこ)さんインタビュー

ー「IAMインスティテュートオブマルタランゲージプログラム」に賛同したきっかけをお聞かせください。

英語留学は目的を絞った方がより効果があがります。日本のアーティストは英語環境とは程遠く、海外の大学進学に不可欠な世界共通の試験(IELTS, TOEFL等)を受ける必要があることすらわかっていない、など、留学エージェントの立場から気付くことが沢山あります。そういった視点からこのプログラムに協力できることが沢山あるのでは?思ったことがきっかけです。
また、アーティストという職業は、欧州では既に確立している業種ですが、日本ではアルチザン、クラフトマンとも異なるということの認識もまだ不十分なのではないかと思っています。その点このプログラムは、自分が通ってきた道で苦労してきたアーティスト自身が考えた内容になっているので、「これはとても必要で面白いかも!」と思いました。


ーーこのプログラムの利点はどんなところでしょうか。また、進めている上で見つかった改善点などはありますでしょうか。

利点は英語圏で地理の狭いマルタ島で行うプログラムであることです。世界のアーティストの多くが別荘件アーティストスタジオを構えており、マルタのアートマーケット事情が未開の地であることから、フロンティア精神のある学生には良い場所だと思います。
また、比較的人脈が作りやすいことも利点の一つです。せっかく素晴らしい作品を作っても、それを展示など、公表する機会がなければ作品が生きません。そういった面で、人脈を作ってそれを生かすのもアーティストには必要不可欠な要素です。そういう付加価値を存分に学べる要素がマルタにはあります。
また一方で、スタートして間もないですが、始めたからこそ見えてきたことが沢山あります。それは想定の範囲内と範囲外共にあり、プログラム期間、費用及び費用対効果、募集対象者とその告知方法など、今後の課題は山積みです。(笑)


ーー今後の展望をお聞かせください。

IAMプロジェクトとして、「IAM排出のアーティストが有名になる」「特待生制度を設ける」など、アーティストを含め、プロジェクトそのものが成長し、育っていくプログラムにしたいと思っています。現在はスタジオをマルタの方から借用していますが、ゆくゆくはIAM所有のアーティストスタジオや住居などのアンテナ物件が欲しいですね。
海外に出たいアーティストさん達が、「マルタ発のIAMっていうプログラムがあるのよね」なんて会話に出てくるくらい認知されて、その第一歩となるステージを提供できたら最高です!

宮原あき子
IAM Institute of Art Malta Language Program マネージメントディレクター
2002年よりマルタ在住。Sullivans Travel Centre にて、語学留学生の現地サポートオフィスを運営。マルタにおけるNGO活動として、2015年よりマルタジャパンアソシエーション会長。



参加者・西 毅徳(にし たかとく)さんインタビュー

ーー「IAMインスティテュートオブマルタランゲージプログラム」に参加したきっかけを教えてください。

以前マルタで、「欧州文化首都2018(Valletta 2018 - European Capital of Culture)」の仕事したことがあり、その時に知り合った方からIAMプログラムのことを伺いました。僕の作品のテーマである「光」を、マルタの台地やそれを取り囲む海を照らす光を通して制作してみたいと思ったことがきっかけで参加を決めました。


ーー参加してみた印象は?

作品制作と語学学習が同時進行できることです。アーティストスタジオが学校と寮の近くにあり、とても良い環境で作品の制作に取り組むことができます。スタジオのオーナーさんがものづくりに長け、機材も充実しているので、元々ある設備を加工して、リクエスト通りの新たな設備を作ってくれたりするところが、僕にとっては何よりも有難いところです。以前、「作品を天井から吊るしたい」と相談したところ、僕の希望通りに天井にフックを取りつけることをご了解いただき、そのお手伝いも一緒にして下さいました。
英語は得意とは言えませんが、今後の活動において「自分の言葉で作品を語る」ことも必要だと思うので目下勉強中です。個人レッスンでは、僕にあった方法で語彙力を伸ばす方法などを指導して下さるのでレッスンがとても楽しいです。


ーーマルタの良いところ、また、何か困ったことはありますか?
良い点は、リラックスできる場所が多いところです。大好きな猫も沢山います。(笑)
マルタ島は東京都の半分くらいの大きさなので、車でなら行きたいところに短時間で行くことができます。島を東西に横断すると渋谷から浅草くらいの距離ですが、あいにく電車はなく、公共のバスを使うと車の倍以上の時間がかかります。そのため移動は不便ですが、その分、自然が沢山あって、作品のもととなる素晴らしいランドスケープが広がっています。
制作に使用する素材は量販店で入手できますが、東京と比べると種類が少なかったり、注文したものと違うものが届いたりするので事前準備と確認が重要です。

西毅徳
2016年 多摩美術大学環境デザイン学科主席卒業。空間演出研究所設立。
2017年 環境芸術学会(IEAD)入会
2018年 東京芸術大学デザイン専攻空間演出研究室修士課程修了
現在、東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻デザイン研究領域(空間・演出)在籍
ruido314.wixsite.com/takatoku-nishi
 


  • 旧首都イムディーナにて

 
参加者・谷口 洸(たにぐち あきら)さんインタビュー

ーー「IAMインスティテュートオブマルタランゲージプログラム」に参加したきっかけを教えてください。

元々、欧州留学を考えていましたが、大都市ですと自身の作品スタイルが、ただ流行を追うだけになってしまうことを懸念し、ヨーロッパから少し離れたトルコやモロッコなどを候補としていました。その場合、主な滞在先はNGOなどが運営するアーティストレジデンスになりますが、すべて自分自身で調べて手配しなければならず、かなりの労力と時間が必要だったと思います。また、一度は現代美術の発祥の地であるヨーロッパに行ってみたいと思っていました。このプログラムはそのような点も含め様々な環境が整っているため、参加できてよかったと思っています。


ーー参加してみた印象は?

最大の魅力は作品制作と語学学習が両立できるところです。学生さんの中には、語学の為だけに留学をする方もいらっしゃると聞いたことがありますが、その間に作品制作を続けるのは難しいと思います。その点このプログラムは、アーティストスタジオが学校から徒歩圏内にあり、整った環境の中で作品制作に取り組むことができます。贅沢ですが、環境が整いすぎて制作に集中しすぎるとキリがなくなってしまうところが悩みでしょうか。(笑)
オーストラリア留学の経験がある為、ある程度の英語力はありますが、今後の進路を海外も視野に入れているため、集中して勉強できるところが利点です。


ーーマルタの良いところ、または、何か困ったことはありますか?

展示できる環境が多いというのが最大の魅力です。自己の作品を多くの方に見てもらえることは大きなモチベーションになります。また、時間の流れが緩やかなので、空気感や光などの環境に影響されてか、感覚が研ぎ澄まされ、自分を「画」として俯瞰してみることもできます。一方で、日本と違い、油絵具やその他の材料が入手困難な場合や値段が高額なことがあります。

谷口洸
2017年 東京芸術大学絵画科油絵専攻卒業
現在、東京芸術大学大学院美術研究科壁画第一研究室絵画専攻修士課程在籍
http://k10600570akira.wixsite.com/akira-t-art-japan
 


  • 首都ヴァレッタにて


 
▼プログラム概要
・タイトル:IAM Institute of Art Malta Language Program
・募集要項:日本人アーティスト
・支援内容:プログラムにおける住居、語学学校、学生ビザ、航空券等の手配。制作に使用 するアーティストスタジオ、展示会場、チュートリアルの手配
・WEB URL:https://www.iamlpmalta.com
・Facebook : IAM Institute of Art Malta Language Program
・Instagram : iam_instituteofartmalta

【2018年9月から2019年10月 第1期プログラム例】
展示会
・Transnational Tokyo ヴァレッタ・マルタ
2018年10月12日~14日 
http://transnationaltokyo.com
・Land Politics ヴァレッタコンテンポラリー・アートギャラリー
2019年3月19日~23日
https://www.vallettacontemporary.com/

チュートリアル
・第1回チューター:2018年11月11日 
近藤正勝

・第2回チューター:2019年3月20日 
マーク・ラングレー




(インタビュアー/文・山本舞衣子)

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