「情熱を伝えるために大切なこと」ー只本屋・山田毅さん【後編】

京都のフリーペーパー専門店、只本屋。毎月末の土日のみ京都の東大路五条にあらわれるこの店は、「フリーペーパー文化を根付かせるために細く長く続けられらる活動」を目指し、2013年にオープンしました。今回SFF広報部は、フリーペーパー文化についてお話を聞くべく、只本屋代表の山田毅さんにインタビューをしました!前編では、数多くのフリーペーパーを取り扱う山田さんに、学生フリーペーパーの魅力について伺いました。 後半では、そんなたくさんの魅力が詰まったフリーペーパーを読者に届けるために学生が大切にすべきことを語ってくださいました。

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ーSFFのような学生団体についてどう思いますか?

学生生活を送りながら、毎月フリーペーパーを制作して世に出すって、すごくガッツがありますよね。その自己承認欲求には感心します(笑)。でも実際自分から行動していかないと交流も生まれないと思うので、積極的に活動している学生はやはりすごいなあと。さっきも言ったけれど僕はすごい根暗な学生だったんで(笑)。

ーそういうガッツをわかってもらうために、制作団体が気をつけるべきことはなんだと思いますか?

制作者は作ることで満足して、郵送した時点で気持ちが終わってしまう人が多いようにも感じます。本当は郵送した先にある、読者に手に届くところが重要でしょ。僕、ゴミ捨て場に大量捨てられているフリーペーパーや、市役所や図書館の受付、駅にたまって風化したフリーペーパーがたくさんあるのを、墓場とかゾンビって呼んでいるのですが、制作者はあそこまで手が届いていないんですよ。一番重要なところは届けることで、だからもしかしたら手作りの手渡しが一番いいかもしれない。むしろ制作者は只本屋やSFFのような場を活用していくことが重要になってくると思います。

ー制作者に紹介したい学生、または一般のフリーペーパーはありますか?

フリーペーパーって、ある種エモーショナルであることが重要だと思っていて。例えば今回のインタビューで文字だけになった時に、なぜ僕を選んだかとか、その時すごく暑かった空気とか、そういうのって多分排除されてしまう。けれど実はそういうのが重要かもしれない。人間味みたいなものが香ってくる媒体がやっぱり面白いですよね。

フリーペーパー『Himagine』さんは全然連絡とってないのに、勝手に只本屋のことを書いてくれていて。「奢るからHimagineの編集部と酒を飲んでほしい」って書いてあって(笑)、すごく面白いし、そういうところに好感が持てるんですよね。そういう細かなところから相手が透けて見える。そんなふうに作り手が見えてくるのはこれから重要なんじゃないのかなと思っています。例えば地域のことを発信するフリーペーパーでも、その人が地域のことをどう思うかが何も見えてこないことがあって、そこが聞きたいのにーと思ったりします。

『えんを描く』っていうフリーペーパーがすごく好きなんですけど、フリーペーパーなんてこれでいいんだよってことを体現してくれるんですよ。娘さんとお母さんで作っているフリーペーパーで、絵を娘さん描いていて、お母さんが文章を書いていて。ただただエモーショナルなんです。そして、娘さんがどんどん成長していくんですね。もう中学生とかかな、長いんですよ、20号ぐらいで。そのどんどん成長していく様をこっちも見ているのがすごい面白くて。これはいつもオススメしているかな。

手作りで作っているフリーペーパーもあるじゃないですか。それってバレたくないかもしれないけれど、どっかで手作りだってバレた方がいいと思うんですよ。え、これ100とか200とか手作りで作っているの? おかしくない? みたいなことが伝わらないと、さらっと流されちゃって。手垢みたいなものに今の人は反応しやすいのかなって思うんです。印刷に出した途端、手垢が見えなくなっちゃう。それはそれでいいところではあるけれど、そうじゃない部分が大切になってくるんじゃないかな。

ー山田さんが大切にしていることはありますか?

大学時代に演劇サークルの「劇団むさび」っていう演劇サークルに入っていたんですが、そこで一番最初に見た演劇が小学生が笑ってしまうような、すごくくだらない、でもすごく面白い作品だったんです。当時の僕は美大生らしい作品を作らなければいけないと、すごく凝り固まっていたんですね。だからその演劇を見て、自分が好きだった世界って本当はこっちかもしれないって感じたんです。
実際劇団むさびに入ってみたら1回の公演で100人ぐらい見に来るような大きな団体で、意外と人気だったんです。そこで自分が作った作品に対して100人もの人がドッと笑いを返してくれる体験をして。すごく衝撃的でした。それまでは小さなギャラリで作品展を開いて数人の友達が見に来てくれるような経験しかなくて。そこから自分の物作りに対する意識がガラッと変わりましたね。僕が好きなのは、ただ自分の作品を外に出すことではなくて、人から反応をもらうことに喜びを感じるんだってわかりました。今の只本屋の運営でもその時の感覚を大切にしています。

ーSFFや只本屋はフリーペーパー制作にどのような影響を与えていると思いますか?

只本屋でコミュニケーションを意識しているように、制作者が交流することによって次に繋がったり、頑張っていてよかったというツイートを見たり、誰かの何かの場所になっているのはいいのかなっていう気はしますよ。

只本屋は演劇にすごく近いんです。場を作って、お客さんを呼んで、自分が伝えたいことを伝えることを演劇の一つの形とすると、只本屋は場を作って、お客さんが来て、会話を繰り返す。即興劇に近い感じかな。僕としてはコミュニティーアートのような、一つの表現作品として只本屋っていうのをやっているような気がします。





実は今回のインタビューの前日、SFFスタッフが宿泊する予定だった場所の鍵が壊れて開かないハプニングが起きたのですが、その際に山田さんが駆けつけてくださりました。そんなハプニングの翌日に行われたインタビュー。すぐに打ち解け合うことができ、出身学科が同じメンバーとは特に話が盛り上がりました。
全国各地から集められたフリーペーパーを取り扱う只本屋は、毎月末、土日に開かれています。紙媒体に興味がある方、是非訪れてみてはいかがでしょうか。
只本屋ホームページ

また、私たちSFFは全国の学生フリーペーパーの制作者と読者が一堂に会し、交流をはかることを目的とした、学生フリーペーパーの祭典です。
今年で開催13年目になるSFF2018は、過去最大規模となるフリーペーパー出展数100以上、来場者数1000人以上を予定しています。今回は学生フリーペーパーだけでなく、企業や社会人が制作するフリーペーパーも誘致しており、出展数もSFF史上最多となる予定です。
学生と大人が作る全国の幅広いフリーペーパーを、会場で手に取れるチャンスです。本やフリーペーパーが好きな方、学生の熱気に触れたい方、是非この機会に本の町・神保町で開催されるSFF2018にお越しください。
>>詳しくはこちら
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山田 毅
1981年、東京都生まれ。武蔵野美術大学芸術文化学科卒。
材木商の父と美大出身の母のもと、山田家の長男として生まれる。
映画好きで、人生の多くのことを映画人や映画作品から学び、自分も同じように映画を制作するために美大に入学する。
大学では、映画制作の傍ら、美術展運営やドキュメンタリー制作などに尽力を注ぎ、芸術と美術、作家と作品、ものつくりの世界に触れる。その影響もあってか、興味は映画制作から映像表現に移り、コントユニット「テニスコート」との出会いによって、さらに舞台表現へと変わっていく。学部卒業後、就職を考えるも大学の研究室に居残り、研究制作を続ける。教務補助、助手、非常勤講師を経て10年間大学に在籍することとなる。
30歳を迎え、心機一転新たな気持ちで何かを始めようと考えていたところ、学部の後輩でもあり、株式会社モーフィングの社長加藤氏に出会う。物事にはしかるべきタイミングがあるらしい。そういう想いもあり、縁あって同社に所属することとなる。
2013年、単身京都へ。京都支部を切り盛りしながら、京都市立芸術大学の博士課程にて、フリーペーパーを用いて場を作ることを研究している。



(編集:渡邊桃加)

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SFF=Student Freepaper Forumとは、全国から集まった学生フリーペーパーを手に取り、その制作団体と直接交流することができる年に一度の祭典です。本やフリーペーパーが好きな方、学生の熱気に触れたい方、是非この機会に本の町・神保町で開催されるSFF2018にお越しくださいませ。