「学生フリーペーパーの魅力」ー只本屋・山田毅さん【前編】

京都のフリーペーパー専門店、只本屋。毎月末の土日のみ京都の東大路五条にあらわれるこの店は、「フリーペーパー文化を根付かせるために細く長く続けられる活動」を目指し、2013年にオープンしました。今回SFF広報部は、フリーペーパー文化についてお話を聞くべく、只本屋代表の山田毅さんにインタビューをしました!前編では、数多くのフリーペーパーを取り扱う山田さんに、学生フリーペーパーの魅力について伺いました。

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ー只本屋について教えてください。

只本屋は2013年に当時学生だったメンバー5人と作りました。設立当初は現在の場所ではなく、出町柳のデザイン事務所の一角で始めました。そのころはまだ東京にしかフリーペーパーコミュニティーがなくて、関西のフリーペーパーのコミュニティーを繋げる活動をやりたいと思っていたんです。学生メンバーたちはイベントをやりたいと言っていたんですが、僕は、イベントをしても1年ぐらいで終わるのではないか‥‥と思って。関西では東京とは全然違う方法で、細く長く続けられる活動を考えようと提案して、月末の2日間だけきまった場所でフリーペーパーの本屋を開くというコンセプトができ上がりました。

ー只本屋では学生は主にどんなことをやっているのですか?

今の店長は大学4年生で、僕は一応代表という役割です。毎月の店舗運営は店長に任せて、代表の僕は「未来を作る」「新しいことを始める」のが仕事です。僕自身は今、京都市立芸術大学の博士課程に通っていて、フリーペーパーという媒体を使って場を作ることを研究制作の対象にしています。
 

 
只本屋は今は愛知にもあるんですが、今度島根にもできる予定です。やりたい人がいればやっていいよってスタンスでいます。学生には本を作ることとか、本屋をやることとかに興味があったりするのと、あとは時間がたっぷりあるので、必然的に運営してもらってる感じかな。あと学生だと多くの人たちに優しくしてもらえるので(笑)。うまく学生の立場を利用しているというか。でも意識的には学生と大人ということで分けてはいないですね。

ー只本屋で現在学生フリーペーパーの比率はどのくらいなのですか?

結構多いですよ。毎年SFFにちょっと顔だして、そこから学生フリーペーパーを引っ張ってくることもありますね。

ー只本屋を月に2回のみ開くことについて、どのように感じていますか?

只本屋を始めた当初、「フリーペーパー文化を盛り上げるための細く長く続けられる活動」という目標を元に、月に2回だけお店を開くことになったのですが、それが今、うまいこと巷で幻の店なんて呼ばれたりして。「今日やっていますか?」という連絡に、ほとんど「やっていません」と答えていたりします(笑)。月2日だと年間で24日しか開いてないので、1年で1ヶ月ぐらいしかお店は開いていないことになるけれど、きちんと細く長く繋がって今に至ってます。毎年やる、毎月やるとかは、そういうルールが見えるのは、待っている人にとってはいいのかなと思っています。

ー只本屋は、この場所を飛び出してワークショップとか講演会をやっていると聞いたのですが、そういう活動を広めるために、努めていることや意識していることがあれば教えてください。

声かけていただくことの方が多いんですよね。
でも、只本屋の活動のルールとしてやりたくないことはやりません。学生が主に運営しているので、学業とかバイト、恋愛などを最優先にしてくださいと常に言っていて。そういうのを我慢した途端に活動の意味わからなくなってしまうことってあったりして。例えば、只本屋に行かなきゃいけないから今日は恋人に会えないです、とか、もうどこに気持ちをぶつけて良いかわからなくなりますよね。だからそういうのはやめて、頑張って営業をしないようにと言っています。楽しいとか幸せであることを大切にするのはすごく重要なことだと思っています。もちろん営業も大事なんですけどね。
ワークショップや講演会に限らず、只本屋に来たお客さんとお話することは良いことだと思っていて。そうすると、ちょっと話しただけでも知っている人になって、知っている人になるとその先に繋がりやすくなる。これを重ねていく先に関係性ができて、その中でフリーペーパーが面白いというのを広げていくことができると思うんです。だから、特に外に出てワークショップや講演会を行うことは意識的には考えていませんが、お声をかけていただいたら出向くようなにしています。
 

 
ー学生がフリーペーパーの制作、企画や運営をすることについてどう思いますか。

学生といっても個人でやっている媒体もあれば学校のサークルのところもあるし、個人か団体によって全然違います。サークルの場合は大学から予算が出たり、夏合宿や新歓などの行事があったりして楽しんでいるけれど、1人でやっているところは仲間がいないのが悩みですよね。

でも総じてみんなすごいなと思っています。実は僕、すごい根暗な学生だったんですよ。今は東京の会社の株式会社モーフィングに所属をしているけれど、当時はモーフィングに入っていくような学生の気持ちもわからなかった。なんかみんなすごいやる気あるじゃんって思っていて(笑)。大学では演劇サークルに入っていたのですが、本当は演劇サークルに入っているような人も苦手でした。
今は博士課程にいるんですが、最近、サッカーサークルに入って。団体行動とか新歓とか夏合宿で海行こうとか、ぞわぞわしながら参加してて(笑)。そういう学生団体に入るのは実際すごいと思っています。今はもうおじさんなんでね。サッカーサークルも経験と思ってやってます。

ー実際、サークルに入ってみてどうですか?

楽しいけど、当時の自分を振り返ると絶対自分ここにいないなって。そういう気持ち。
 

 
ー大人や企業の方などが作っているフリーペーパーと学生が作っているものの違いはどんなところだと思いますか?意外とパッと見ではわからないものもありますよね。

多くの学生は大人を見習って作ろうとしている部分があるので、差は無くなっているのかな。今日本で3000〜4000ぐらいフリーペーパーがあると言われていますが、それもピンからキリまであって。大人が作っているものでもつまらないものもたくさんありますからね。学生が作っているものは同世代を対象としている部分があるので、対象を絞っているミニコミですよね。京大の作っている「ChotBetter」は学生ならではの、くだらない内容でできていたりして(笑)。

ー山田さんが思う学生フリーペーパーの魅力は何だと思いますか? 期待していることやアドバイスってありますか?

やっぱり、大人には出てこない発想のページがあるので、やはりそこは面白いなと思っています。社会の目を気にせずにタブーに触れていけるのは学生ならではですし、そういうことって本当は大人も好きなんだけど、所属とか周りの目を気にしてなかなかできないこともありますよね。学生だったら、私こういうの好きですってどんどん出していけるのは強みで、それが媒体になっちゃうのは本当に強いです。あと、これは魅力かはわからないけれど学生らしいなと思うのが、誤字脱字がたくさんあってそこを全部シールを貼ってカバーしているところ。こういうのを見ると、頑張ってるなーって。他にも、このページはクライアントと揉めただろうなーっていうのが透けて見えるのが面白い(笑)。そういうものが見えてきたほうが手に取る人にとっても面白くて。数多くのフリーペーパーを見れば見るほど、そんなふうに人間性が透けて見えるフリーペーパーの方が面白かったりしますね。



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山田 毅
1981年、東京都生まれ。武蔵野美術大学芸術文化学科卒。
材木商の父と美大出身の母のもと、山田家の長男として生まれる。
映画好きで、人生の多くのことを映画人や映画作品から学び、自分も同じように映画を制作するために美大に入学する。
大学では、映画制作の傍ら、美術展運営やドキュメンタリー制作などに尽力を注ぎ、芸術と美術、作家と作品、ものつくりの世界に触れる。その影響もあってか、興味は映画制作から映像表現に移り、コントユニット「テニスコート」との出会いによって、さらに舞台表現へと変わっていく。学部卒業後、就職を考えるも大学の研究室に居残り、研究制作を続ける。教務補助、助手、非常勤講師を経て10年間大学に在籍することとなる。
30歳を迎え、心機一転新たな気持ちで何かを始めようと考えていたところ、学部の後輩でもあり、株式会社モーフィングの社長加藤氏に出会う。物事にはしかるべきタイミングがあるらしい。そういう想いもあり、縁あって同社に所属することとなる。
2013年、単身京都へ。京都支部を切り盛りしながら、京都市立芸術大学の博士課程にて、フリーペーパーを用いて場を作ることを研究している。
只本屋ホームページ


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(編集:渡邊桃加)

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