第1回クリエイティブイノベーション学科秋季学科ガイダンスをやってきた

2018年9月17日(月)

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9月14日(金)、初めてとなる造形構想学部クリエイティブイノベーション学科 秋季学科ガイダンスが開催されたので、その様子をレポートします。

 
これまでデザイン・ラウンジでやってきたのは造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコース説明会


  • 9月の新大学院説明会は席が足らないほど

つまり「新大学院説明会」だったんで、「新学科の説明会」としては初めてだったんですね。

新大学院説明会はほとんど告知をやってなかったのに毎回満席でした。社会人や4年生、留学生なら新大学院のコンセプトや必要性は理解できるはずなので、ま、これはある程度想定内というか。
でも、新学科のコンセプトが高校生にどれくらい響くもんなのか全くわからなくて。学内外からも「高校生にはちょっと難しいよ。理解できるわけない」と言われてました(涙)
オープンキャンパスで手ごたえは感じてたものの、オーキャンは「年に2回しかない大きなイベントの中で他学科と一緒に土日終日開催」であって「平日夜に六本木や三鷹で単独開催を数回」という環境で、はたしてどれくらい高校生が集まってくれるのか。
正直なところ、大方の予想は多くて20人ぐらいでした・・。

んでその記念すべき初回の新学科説明を手羽がやることになったんです。
「2回目からはネットでライブ配信するけど初回はやらないんです。だからブログで自分が何を話したか解説しといてください」と言われた。若いモンにいいように使われてる気がする・・・。

美大愛好家として「非公式に美大な話」だとあちこちでちょいちょいやってるけど、「大学公式の場でムサビの話」は今は全然やってないんすよ。広報課時代以来だから10年ぶりぐらいかな?美大の話でムサビ自慢をするのは得意だけど、ムサビの場でムサビ自慢をするのはなんか抵抗がある(笑)


高校生(とその親御さん)が中心なので具体例を多めに出しながら、新学科を作った背景やどういうことが求められてる時代なのか、ってのを話しました。
例を出すと、一つは「シェアリングに対する意識変化」というデータ。

高校・大学生世代はモノをシェアすることに「抵抗がない」と答えた人が親世代(40,50代)の3倍多い、というデータが去年12月に出ています。
手羽がまさにそれ。モノは所有しておきたい派で、お金を払って自分のものにしときたいんですよね・・。どうしてもシェアって煩わしさがあるじゃないですか。
でも若い人はモノをあまり持たない合理性重視、体験・つながりを大切にしてる人が多く、私たちが考えてる以上にそれらサービスを受け入れる土壌があるとも言えます。

また、キーワードになってる「体験」「ヒト視点」「プロトタイピング」「UX」「サービスデザイン」「イノベーション」「美意識」とはなにかを具体的に説明。
そして造形(アート&デザイン)に取り組むことで培われる思考や経験・能力は、「課題発見力・課題解決力」「観察力・鑑識力」「批評力・被批評力」「想像力」「イメージ形成力」「価値判断力」「コミュニケーション力」「プレゼン力」「自己意志決定力」「美意識」「柔軟な発想力」「冷静な知性」「粘り強さ」等があり、今もっとも求められてる人材ともいえるわけで、

その能力「創造的思考力(クリエイティブシンキング)」をベースにして、ビジネス(仕組みづくり)・テクノロジー・ヒューマンバリューを実践的に学ぶ場、それがクリエイティブイノベーション学科なんですよ!と。
あ、「デザイン思考を学ぶ学科」「造形を軽視した学科」とよく勘違いされてますが、デザイン思考だけじゃなくアート思考も含めた創造的思考力を重視してて、むしろ「造形」で学べる本質ってなんだろう?と考えて生まれた学科なんですね。そこんところよろしくお願いいたします。

なので、専任教員の専門分野も、

舞台美術が専門だったけど今は映像表現をやってる篠原先生、デザインマネジメントの井口先生、家具デザインだったのに今は地域のつながり等リレーションデザインをやってる若杉先生、東北大学で素粒子物理学を専攻してたのにサービスデザインの長谷川先生、心理学の荒川先生、そしてもうすぐ公表される情報デザイン系の先生、とバラエティに富んでます。

若杉さんや長谷川さんは業界で有名な方なのでお二人に目がいきがちですが、個人的に新学科は心理学・荒川先生がキーになってると思ってます。だってサービスデザインにしてもなんにしても行動心理学などが深く関係するのに、美大では選択教養科目でやるぐらいなんですよ。心理学の専任教員を配置してる美大の学科ってないはず。
ちなみにこの荒川先生の写真は落合陽一的ですが、どっちかというとアンガールズ田中の方が似ています。

なんて話をぴったり30分で。

あ、いい話ばかりだけじゃなく、
・多分4年間みっちり授業が入ることになる。
・市ヶ谷キャンパスでは大きな造形物は作れない
・ノートPC購入が必須
・まだ誰もチャレンジしたことがない分野なので、コンセプトに自信はあるけどどうなるか私たちもわからない。試行錯誤の繰り返しになるはずでまさにプロトタイピング状態の学科
・この分野の誰もが知ってるスタープレイヤーがまだ存在しない

と、ある種ネガティブ要素になりそうなこともちゃんと。
タマビさんを見てると「上野毛キャンパス生の疎外感」みたいなものがうっすら感じられるので、そういうことも発生するかもしれません。1,2年は鷹の台だからそこまではないとは思いますが。
ただ、全部ポジティブ変換できるはずで、「イノベーション」「起業」をキーワードにしてる学科なんだから、「大きなものが作れない」ではなく、自分でスポンサー企業見つけて作ってもらうような人(自分で作る必要はない)が、この学科の人材目標なんじゃないかとも思っています。


続いて荒川先生からカリキュラムの話。

細かいカリキュラムや時間割はまだ外にでてないので、説明会だから知れる情報の一つかもしれません。

あ、書き忘れてました。満席になりました(涙)
くどいですが、「平日夜に六本木で単独開催」で、ですよ。
誰だ誰だ、「高校生には新学科のコンセプトは理解できない」なんて言った人は。
私たちが思っている以上に高校生は賢いんですよ。

そして入試の説明。
これもやはりネットで「ムサビが実技試験無しの入試をやっちゃダメだろ。あきらかに戦略ミス」と言われたりしてますが、基礎デザイン学科は50年前から実技不要の入試やってるし、最近だとセンターB方式もあるし、そもそも通信教育課程は入試自体やってないんですよね・・。
むしろムサビ90年の強みを生かした形なんだけど、今回わかったのは「意外とそれが知られてなかったんだなあ」ということかな。

最後は質疑応答。

さすがなのが「質問ありますか?」と聞いたら普通は手が挙がらないもんだけど、ドンドン質問が出てくる。まさにクリエイティブイノベーション学科がほしい人材。

「IoTやテクノロジーについてはどのようなことが学べるのか?」
「商品開発、価値創出に心理学はどう関係してくるのか?」
「院入試に向けて考えるべきことは?」
「日本の芸術家は世界に進出しにくいという話を聞くが、グローバルな人材育成についてどのように考えているか?」

な質問がありました。

荒川先生の他に

井口先生と篠原先生にも答えてもらいました。


実は一番前の席に彫刻学科の同級生が座ってて。卒業式から会ってなかったから、ウン十年ぶりの再会。
芸術系高校に通ってる子供さんが今年受験で、「この学科が気になる」と突然言い出したそう。子供はオープンキャンパスに行ったけど、どういう学科か心配で聞きに来た、と。
「手羽くんのブログ、面白いから時々見てるよ」と言われた(笑)

私たちがイメージしてたペルソナは「SFCや理工系を目指してるけど、美大やデザインにも興味ある生徒さん」ですが、芸術系高校の先生が「実技はもう勉強してるんだから、大学ではそれをどう世の中に使うか学んだ方がいい」と新学科を推してくれてることもわかってきました。
このパターンは想定してなくて、ほんとやってみないとわからないもんだなあ、と。


さて、次回以降の新学科説明会は、

こういうスケジュールになっています。
「学科ガイダンス」は今回やったようなレクチャー形式で全回デザイン・ラウンジ。10月6日(土)、27日(土)、11月12日(月)はネット配信もされるので地方でどうしてもいけない方はそちらをチェックしてください。
「個別相談会」はその名のとおり個別相談で、三鷹ルームとデザイン・ラウンジでやります。こういう時に外部拠点があると便利ですね。


説明会はまだプロトタイピング状態です。
手羽の説明も「たたき台」みたいなもので、どういう情報を受験生が欲しているのか、どういう説明が理解しやすいのかいろいろ試作してる段階。今回やってみて個人的に「こういう要素も入れないとダメだな」と気が付いた点がありました。
ぜひ聞きに来て、いろいろ質問してほしいんです。
 

以上、次会場にいるのは

君だっ!
の手羽がお送りいたしました。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。