【美大4年生必見】手羽の卒業制作26ヶ条 場所編

2017年11月25日(土)

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卒展出品経験と教務課時代の卒展担当経験、あちこちの美大卒展を見る趣味から、教育的効果・美術的評価ではない視点の
「卒展ではこういう部分を気を付けるといいよ」
「卒業制作で陥りやすい点」

を26ヶ条にしてまとめました。
ムサビ生向きな内容になってるけど、他美大の方、またこれから展示を考えてる人にも参考になると思います。


これまでの話はこちら。
【美大4年生必見】手羽の卒業制作26ヶ条 準備編

今回は、どこに展示するかの「場所決め編」をお送りします。
学外美術館での卒展だと「どこに」という問題は発生しないので、これはある程度自由に展示場所を選べる学内卒展でしかあてはまらないかもしれません。


6.いい場所・やりたい場所がいい展示になるとは限らない


  • 2016年度武蔵野美術大学卒業・修了制作展会場風景

ムサビは12号館・9号館の地下展示室を各学科合同の展示場として利用しています。いろいろ卒展見てきたけど、学内卒展でこういう合同展示場パターンってあまりありませんね。

んで、この両展示室は来場者が足を運びやすい場所にあり、空間も天井高もあるから人気の高い卒展スペースの一つになっています。手羽が卒展担当やってる時は、あまりにも人気があったんで、ここで展示しなくちゃいけない必然性と「ちゃんと作れるか」の実現性をプレゼンしてもらって絞ってました。来場者が来やすい場所ってことはその年の卒展の印象として残ってしまう場所でもあり、あまり変な空間にしたくないのもあって。(今はそこまで厳しくないようです)

でも、こういう学科ごちゃまぜの共有スペースだと、学芸員が展示コントロールしてるわけじゃないから、隣に来るのがどんな作品・作者かわからない怖さがあるんです。
事前に資料を見せあってどういう作品が隣に来るかはある程度調整してるけど、「作品から見えてこない作家性」というか、自分と同じようにしっかり作ってくれる人だったらいいんだけど、「未完成でやっつけの作品をドサっと隣に前日に置かれる」なんてリスクがあるんです。静かな作品の横にゴチャゴチャした作品が来ちゃうとか。「え。聞いてないよ」な。
同じ学科の人だったらどういう作品を作る人かわかるんで対策がとりやすいんだけどね。

お互い「ここでやりたい!」と言い合って譲り合わず、結果、作品が影響しあったり、引きが取れなくてちゃんと見られなかったりしたら、自分の作品も何割か悪く見えてしまう。自分の空間も大事だけど、「引きの空間」「作品以外の空間」も展示って大事で。

なおかつ準備編で書いたように、お互いが通常の精神状態ではなく、そして卒展という自分にとってかなり大事な展示だからお互いが必死。いつもなら「他の場所も考えてみた方がよさそうだな」と柔らかい発想で気持ちを切り替えられるのに、それができない状態の可能性もあります。

卒展の展示では「いい場所で作品を見せる」よりも「いい空間を作る」ことを優先すべきだと思っています。いい空間になれば自然と作品も何割かよく見える。
ごちゃごちゃして「引きの空間」が取れないような人気場所だったら、そこはやめて、早く違う場所を探した方がいいですよ。これほんと。


7.屋外作品は学内全体に影響する


  • 2016年度武蔵野美術大学卒業・修了制作展会場風景

屋外大型作品を大量に展示するのも、実はムサビ以外の卒展ではあまり見ないケースです。
ただ、大型の屋外作品はシンボリックな存在になるので、屋外作品がしょぼいと学内全体、特に近くの建物の作品全体がしょぼく見えちゃうんですね。意識してなくても、屋外作品ってその空間周辺を支配しちゃうので、作者の学生さんは責任がかなり大きい。

目立つ場所に置きたい気持ちはわかるけど、目立つ場所に置く以上シッカリ作ってほしいし、「3日間ぐらいで作りました」的、垂木とベニアを組み合わせたような作品は避けてほしいな、と。
逆にちゃんと作った作品が屋外にあると、「今年の卒展は良かった」と言われやすい傾向にあります。これほんと。


8.この時期の風の強さと寒さはハンパない。


  • 2016年度ZOKEI展会場風景

屋外作品で忘れちゃいけないのは風対策。雨よりも実はやっかいで。
特にビル風(ムサビだと中央広場や12号館前、9号館前、2号館)はほんとにバカにしちゃいけません。
私の同期が卒展で中央広場にトタンで作ったような作品を設置したら、風で1日もちませんでした。 ブーフーウーの家状態でトタンが飛んでく姿は今でも忘れられません・・・。

そして、屋外は寒い!!
屋外展示は
●室内よりも大きな作品が展示できる
●通りすがりの人も見てくれる可能性が高い。→目立つ

というメリットがある一方、卒展中、室内展示のみんなは来場者の方となごやかな空間を過ごしているのに、屋外展示組は寒くて寒くて作品のそばにはいれないし、 準備・撤収も凍えるように寒い中ずっと作業をしなくちゃいけないデメリットがあります。


9.雪は降るものと思え


  • 2015年度武蔵野美術大学卒業・修了制作展会場風景

これは2年前のムサビ卒業制作展最終日の写真です。
3年に一度ぐらいの頻度でムサビ卒展は大雪日とぶつかるんです。ちなみに10年に一度の頻度で卒展で火事が起きてます・・・火事ダメ絶対。

屋外に展示する場合、雨対策で漏電ブレーカーつけたり屋根つけたりは考えるけど、雪対策まで考えないことがほとんど。でも雨との違いは「雪には重みがある」「しばらく残ってしまう」ことで、2年前も雪の重みでつぶれてしまった屋外作品がいくつかありました。
屋外で展示またはパフォーマンスを考えてる方は雨以外に雪のことも考えておきましょ。「雪が降ったらどうしよう」ではなく「ムサビ卒展では雪は降るものだ」が大前提にないとまずいです。


10.卒展時間は明るい


  • 2016年度武蔵野美術大学卒業・修了制作展会場風景

今の状況からは想像しにくいですが、卒展の時期は午後4時台って外はまだ明るいんですね。
日の出入り@東京(東京都) 平成30年(2018)01月 - 国立天文台暦計算室
2018年1月18日前後って日の入りが17時ぐらいでしょ?午後5時過ぎから暗くなる感じ。
ムサビの卒展時間は9時から5時までなので、「屋外設置で暗い状態がデフォルト」な展示は会期時間と矛盾してるので、室内設置を選択した方がいいです。
「そんなの囲み・壁を作ればいいんだ」かもしれないけど、それだと室内でやるのと同じことだし、これは次章で詳しく書きますが、囲み自体が作品になってないとまずく、ただ暗幕で光をさえぎればいいってわけにはいかないのです。


なんで屋外作品のことばかり書いてるかというと、何を隠そう手羽の卒業制作は屋外展示だったんです。ええ。目立ちたくて。最初「正門にぶらさげたい」と教務課に申請したらあっさりボツになり、12号館前に展示しました。
でも屋外展示って、設置が大変なわりには、寒くて作品のそばにいることができないから見に来てくれた友達とも会えなかったし(当時は携帯もなかった)、芳名帳をおいても風で飛んでいくし、寒いからみんなじっと作品を見てくれず通り過ぎちゃうし、あまりいい思い出が残ってないんです・・。
大型作品だったんで外に展示するしか選択肢はなかったんだけど、「目立ちたいから屋外に作品を置きたい」ぐらいな理由であればやめた方がいいですよ・・経験者として・・。

ただ上述したように、屋外に大きな作品がビシっとあると大学全体の展示が引き締まるんですよ。
寒くて大変だけど、ぜひ立派な屋外作品を置いてほしいな、と。



次はいよいよ「制作編」。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。