【他大学でも役に立つ】知っておきたいオープンキャンパスでの8つのホスピタリティ

2017年6月6日(火)

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ムサビのオープンキャンパスが今週末開催されます。
武蔵野美術大学オープンキャンパス2017

●会期:20176月10日(土)、6月11日(日)
●時間:両日10:00-16:30 *入退場自由
●会場:鷹の台キャンパス
*お車でのご来場はお控えください



オーキャンネタを連投してますが、
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今週末に向けて研究室や学生さんは対応マニュアルだったり追い込みに入ってる時期だと思うので、今日はちょっと視点を変えて、「来場者のための情報」ではなく「運営側のための情報」を書きます。つまり、学生さん・研究室スタッフ・教職員向けに。
「ムサビ」「オーキャン」に限らず、どこでも関係することなので他美大の方も参考になるはずです。


東京ミッドタウンに関わる人間が絶対に受けなくちゃいけない研修がありまして。
それはなにかというと、「ホスピタリティ研修」。通称「ホス研」です。
ミッドタウンでは勤務してる人はもちろんだけど、1日だけのイベント運営の場合でも受けなくちゃいけない厳しいルール。


  • 去年のキッズワークショップ前に行われたホス研の様子

手羽はミッドタウンでイベントやるごとに研修受けてるので、もうホス研のプロっす。

「へ?ホスピタリティ研修?人工呼吸とかAEDの使い方の講習?」
と思ったあなた。
はい。手羽と同じ英語レベルですね(笑)

「ホスピタリティ」とは「おもてなし」の意味で、「1日のイベントといえどもミッドタウン内でスタッフ腕章をつけている以上、お客さんは『ミッドタウン関係者』としてあなたに接します。なのでミッドタウンの人間として対応してください」
ということなの。

例えば、お客さんから「トイレはどこですか?」と聞かれて、「あ。私は今日だけの人間なんでわかりません。受付に聞いてもらえます?」と初歩的な情報まですべて受付に回してると、受付も混乱しちゃうし、お客さんもたらい回しにされてる悪い印象を受けます。
ほら、ムサビ生だと1号館事務局でたらし回しにされるでしょ?あれ、すんごく嫌なもんです。(職員だって、たらい回しにされるんだから最悪です)
自分も主催者側の人間だと認識し、他人事にせず、おもてなしの気持ちをもって対応するための研修、それが「ホスピタリティ研修」

至れり尽くせりなサービスを増やすのは大変ですよね。でも、ちょっとしたことを意識するだけで、来場者の満足度を上げる(クレームを減らす)ことができるんです。

ムサビのオープンキャンパスは学科研究室独自にやってるし、学生さんがメインとなって動いてる企画がほとんど。普段高校生対応・学生対応をしていない職員も駆り出されるので、「オーキャンでの来場者対応ではこういうことを気を付けてほしいなあー」ってポイントを8つ書かせてもらいます。
意外とわかってるようでいて気が付いてない点だと思うから、これを読んだ人は他の人にも教えてあげてね。


では、いきなり実践編に突入します。

ここはムサビオープンキャンパス。日曜の午後2時。
●●学科の学生相談コーナーに高校2年&保護者がやってきて、ムサビの主な就職先を聞き、学生さんはこう答えました。


  • *写真はイメージです。

「そうだねー。視デは毎年電博とか代理店によく就職してるよ。芸文はキュレータとかかな?空デの生徒はシニックが意外と就職強そうな気がする。工デはインハウスになる人が多いって聞くね。基礎デは柴田文江もいるしデザイナー目指すなら最高じゃないかな。ファインアート系だと・・・油画科とかはよくわかんないなー。受験は小論文で受けるの?だったらBTとか読んでた方がいいかも。でも、うちの学科はなんでもできるから楽しいっすよ。タマのゲイガクなんて座学だけでしょ?あんなのより、こっちにおいで!一般大学よりも楽しいし。え。就職のことをもっと聞きたい?うーん、今日日曜で就職課も閉まってるから無理だね・・・え?まだパン屋は営業してるかって?・・・・とりあえず、そういうのはインフォメーションセンターで聞いてみて」


はい。よくある学生さんと来場者の会話ですね(笑)

このセリフのどこがいけないのか?

はい。全部です。

これって、満足度が非常に低い対応なんですよ。それはなぜか説明していきましょう。


(1)美大用語が使われている
つい使ってしまう「工デ」「視デ」「ゲイガク」などの学科略称。
美術予備校に通い、予備校講師が話してるのを聞いて初めて略称を知るわけで、これから美大を受験しようと思ってる生徒さん、そして保護者を始めとした一般の方、つまり世の中の多くの方には一切通じません。なので、先ほどの会話は「コウデ?シデ??ゲイブン???」と何を言ってるのか全然わからないのだけど、自信満々に学生さんが語ってるから聞けない状態になっていると思われます。

設定がムサビのオープンキャンパスなのでそれはないと思うのだけど、世の中的には「ムサビ」も通じません。「そんなわけないよー」と思うのは、狭い美大の世界に慣れちゃってる証拠。そんなもんですよ。面倒でも「視覚伝達デザイン学科・・・私たちはシデと略してますけど・・」と必ず説明しましょう。
それと「一般大学」も美大生は気が付かない美大用語です。早稲田の人が「私たち一般大学は」とは言わないっしょ?美大以外の人が聞くと、通常は違和感を感じる単語だったりします。


(2)美術・デザイン業界用語が使われている
「電博」「代理店」「キュレータ」「シニック」「BT」「インハウス(デザイナー)」などの意味を知っている高校生&一般保護者(美大OB以外)は皆無なので、「今年は電通と博報堂両方から内定もらったやつがいる」と自信満々に語っても高校生にはその価値は全くわかりません。
「ファインアート」は美術予備校に通ってる高校生でも知らない人の方が多いです。
デ情新入生が使いたくなる単語ナンバー1の「インタンジブル」とかは、いかにも専門用語なので説明する時には気を付けると思うけど、上記の単語も使う時には補足を入れないと全く伝わってません。とりあえず、就職系・カタカナ単語は「ん。相手は理解してないかも」と疑ってかかった方がいいってことです。


(3)デザイナー・作家の名前は知らない
手羽調べですが、高校生は「柴田文江」という名前をほぼ100%知りません。ムサビ生でも一部の学科(笑)以外は知らないかも。でも、「けんおんくん」「人を廃人にするソファ」「レミパン+」は知ってる可能性が高い。
高校時代の自分を思い出せばわかりますが、著名デザイナーや作家の名前は知らないもんで、著名人の名前を出すときは「高校生は『佐藤可士和』は知ってるけど、『森本千絵』はほぼ知らない」をラインに考えてもらえればいいです。
 
 
(4)ムサビに「生徒」も「●●科」もない
先生でも知らない人が時々いるぐらいなんですが、大学生は「学生」で、「生徒」は高校生のことなんです。全然意味が違うんですよ。
「え?同じようなもんじゃん」と思うかもしれないけど、「オープンキャンパスで学生が生徒に説明をする」で意味が通じるのは、学生と生徒が違う言葉だからなのね。
聞く人が聞くと「この人はまだ生徒の気分なのか・・」「この先生は『学生』じゃなく『生徒』扱いしてるんだな・・」と感じるので、これも気を付けた方がいい単語。

また、ムサビは「油絵」「映像」ではなく、「油絵学科」「映像学科」です。


  • 空間演出デザイン「科」じゃなくて、空間演出デザイン「学科」!

全て「●●学科」なの。これも似て非なるもの。
まして、「油画科」なんてものはムサビに存在さえしません(笑)


(5)他大学(他学科)の悪口はむしろマイナスイメージ
え?手羽に言われたくない?
冗談で終わるような話であればいいんだけど、他大学や他学科の悪口はマイナスイメージになります。
信じられないかもしれませんが、「地方相談会で●●美大の先生(or職員)がムサビの悪口を言ってた」 とチクリ電話がよくかかってくるんです。本当に。比較対象になるってことはある意味ありがたいんだけど、気をつけた方がいいっすよ>美大関係者
手羽が某東京造形大のキャンパスツアーに参加した時、おもいっきり先生が「ムサビは2月、3月は工房が使えないけど、うちは使えます」と説明しててね。手羽がいるとは知らず。
そういえば、手羽がブログを始めた10数年前、「T美大は坂ばかり」と書いたらタマビ内で「ムサビのやつがタマビをディスってる!!」と騒ぎが起こったことを最近米山さんから聞かされました。今なら愛情で言ってるんだとわかってもらえるはずだけど、当時はまだ駆け出しだったもんで・・。同じことを言っても「誰が言ったか」で情報って変わるもの。
どこで誰が聞いてるかわからないし、今はすぐに(冗談で言ったとしても)ネットに書かれちゃうので、比較する時は相手の良い面を説明した上で比較しましょう。


(6)「なんでもできる」は売りにならない
つい使ってしまう「なんでもできます」というセリフ。
でも高校生や保護者は「その学科で何が学べるの?他と何が違うの?」を一番知りたいんですよね。
「なんでもできる」って中途半端な印象を与えてしまうだけで、実は売りでもなんでもないんです。
また、「なんでもできる」といっても、実際はなんでもできませんよね?例えば芸術文化学科の施設で陶磁を作れるかっていうと作れないし教えてくれる先生もいない。そういうことです。何でもできるは嘘。でも、 「ヤル気とコンセプトがしっかりあれば、素材関係なく教授は評価してくれるし、その気持ちは誰も止めない。『油絵学科だから油絵描かないといけない』ってことはない」は事実。
できれば学生さんが事前に集まって、「うちの学科の売りってなんだろうね?(「なんでもできる」を除く) 」を語り合って欲しいなーと思ってます。


(7)最低限の全体案内は知っておこう
トイレの場所、自動販売機の場所、お店の営業時間など、ほとんどの情報は全体パンフレットに書かれています。バスの時刻表も入ってます。
全部を覚えておく必要はないんだけど、「全体パンフレットにそういうことが書かれてたなー」てことだと把握しておきましょ。 そうすることで、無駄な「たらいまわし」を減らすことができます。全部インフォメーションセンターに誘導することは、親切なようでいて決していいことではないのね。

ちなみに。
9号館1階WEBスペースで両日とも就職はもとより学生生活、全体的な入試相談(全学科の実技合格作品展示も)に対応できる体制にしてあるので、それ系の話があればそっちに振ってください。


(8)でも学生さんなんだから許される
教職員が上記7までを守れてないのは問題外ですが、生の声を聴きたい!という需要が高いから「学生さんによる相談コーナー」などがあるわけで、学生さんがマニュアル通りにしゃべってもつまらないし、誰もそんなのは求めてません(笑)
いろいろ書いてきたけど、あまり気にせずに学生さんらしく、学生さんが普段使ってる言葉でしゃべるのが一番。ただ相手は本気で相談してるので、本気で対応してあげましょ。



以上、ホスピタリティってことだと、最近の学生さんが作るイベントサイトやSNSで、「いつどこで」な最低限の基礎情報が書かれてないことが多いのが気になってる手羽がお送りいたしました。
制作風景や会議風景をアップするのはいいんだけど、お客さんがまず一番知りたいのは「んで、そのイベントはいつどこであるの?」であって、ポスターの撮影風景とかはそれを盛り上げる手段でしかないんだよね。サイトだとTOPに、SNSだとプロフィール欄とか埋もれない場所に日時と場所をいれるべきなのに、それができてないものが最近特に多く・・。
また展覧会の出展者募集をSNSでやってて、その説明会日程は頻繁に出てくるけどその展覧会の会期がいつなのかが一切出てこないとか。「その展覧会の時期が大丈夫か?」がわからないことには説明会に参加するかどうか決められないことに気が付いてないんだよね・・。
ちなみに数年やってるものだと「2017年」とはっきり書いた方がいいですよ。去年の情報とごっちゃになっちゃうんで。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。