お客さん目線でのワークショップで大事な12のS!

2017年4月28日(金)

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4月26日に開催した
【おめでたい紙コップ】ミッドタウンアワード&キッズワークショップ説明会に行ってきた
で、手羽からはキッズワークショップの申込詳細とスケジュール、そして、

「お客さん目線でのワークショップで大事な12つのS」という話をさせてもらいました。


・・・え?去年は「大事な9つのS」だったじゃないかって?よく覚えてますね(笑)
考え出したらどんどん思いついちゃって。アイデアが豊富な人間はほんと困ります。


手羽は美大主催の造形ワークショップを発見したら必ず子どもを連れて参加させてました。多分造形ワークショップに参加した回数だと、うちの子は日本の小学生の中でベスト5に確実に入ると思います。でも、「なんだ。これは自分のためじゃなくパパが行きたいから行ってるだけなんだ」ってことがバレてしまい、もう一緒に行ってくれなくなったけど(涙)

なので主催者側よりも参加者側としてワークショップを体験する機会が多く、そこで「これって誰のためにやってるんだろ?」と感じるワークショップもいっぱい見てきてます。
あるワークショップに参加したら工作キットをそのまま使ったもので、「これで『美大生がやってるワークショップです』とは言ってほしくないなあ・・」と思ったこともあるし、教員が造形ワークショップの指導ができなかったことが明確で「こんなグタグタで全然子どもが楽しんでないワークショップなのに『うちの大学ではPBLやってます!』って自慢してほしくないなあ・・」と思ったり。どことはいいませんが。

んで、ミッドタウンとデザインハブのキッズワークショップをずっと担当してきたので、「どういうものがこの場所では合ってるのか」「こういう失敗しがち」という話を説明会ではさせてもらってます。
あ、注意してもらいたいのは、ここで語っているのは「造形ワークショップの定義」や造形教育効果的な視点ではなく、あくまでも運営とか「参加者の視点」です。「造形ワークショップとはどうあるべきか?」だと全然違う話になるので。
ただ、ワークショップについて「主催者視点」で書かれたものはたくさんあるんだけど、「参加者視点」で書かれてるものがなく、オープンキャンパスでのワークショップとか何かの参考にしてもらえれば。


最初のSは「Story」
「こどもが入り込みやすい世界観か?」です。

造形ワークショップは「見立てる」演出をよく使います。
「突然宇宙にやってきたぞ!!君ならどうする?!」
「怪獣が復活した!やっつけて捕獲しよう!」
「ここは海!みんなで魚をみつけよう!」
「君は忍者だ!巻物を作ろう!」
とかね。ストーリー全体がわかりやすい作りになってる方が世界観に入りやすい。
つまり、「今から何が始まり、何が目的で、何をやって、最後はどうなるのか」が無理のないストーリーで構成されてると、子供が何をやればいいのかすぐにわかるメリットがあるんです。単なる「風鈴を作ろう」な「工作」が目的であれば別にいらないんだけど。

人が全然来ないような場所であれば説明に1分でも2分でも使えるんだけど、ミッドタウンのような商業施設ではドンドン人がやってくるから、とても受付・導入に何分も使えない。
といって「パネルに説明書いてるんで見てね」じゃ、ほったらかしすぎるし、今までの経験上、子供たちはパネルなんて読みません。完全に主催者の自己満足。
また、ストーリーには「オチ」が必要で、最後の最後で「あ。こうなるんだ」というビックリ&喜びがあった方が満足度が高くなります。


続いては、

「Simple」
簡単なステップ・説明でできるか?

「ストーリー」とも関係するんだけど、子どもの制作ステップが少ない方がやりやすいし、なによりワークショップのテーマが簡潔になってる証拠でもあります。
造形ワークショップとしての中身を取るか、イベントの切り回しを取るかは難しい選択なんですが、たくさんの人に対応しなくちゃいけないのが大前提の商業施設のイベントであれば、作業工程が少ない方がよく、2つか3つ、多くても4ステップぐらいでおさめたい。

次が「Short」
短い時間で完成できるか?

ちゃんとした作品を参加者に作ってもらったり、美術の楽しさ・気づきを生み出すにはやはり最低1時間、通常だと3時間ぐらいは必要です。だけど商業施設では買い物ついでに「あ。なんかやってる」とその場で決める家族が多いから、長くても30分、できれば20分以内に終わるものの方が喜ばれます。

「ずっと大盛況だった」というのは、よく言えば「人気があった」なんですが、悪く言えば「回転率が低い」ことを表してます。
進学相談会ブースとかでもそうなんだけど、「あの大学(学科)のブースはいつも行列ができてる。羨ましいなー」というシーンがあって。これも「人気があるから」「親身に相談のってるから」「行列が行列を呼ぶ」「行列があった方が見栄えがいい」とも考えられるけど、悪く言えば「説明が長い」「周りの状態が見えてない」でもあり。
お客さんの満足度は「並ばずにできた」のと「ずいぶん待たされた」のどっちが高いかっていうと、答えは明白ですよね。


4つめは「Safety」
当然「子供にとって安全かどうか」です。

意外と子供ができる行為は少ないです。スティックのりも必要以上にベタベタ塗っちゃうし、色塗りも枠内におさめて塗ることはできないし、「何色と何色を混ぜると何色になるか?」なんての高度すぎ。
カッターをある程度使えるようになるのは中学生以降なので、キッズワークショップではカッターは持たせず、せいぜいハサミ。「とんがってるものは先っぽを丸める・わかりやすくする」などの工夫が必要になってきます。
また、「Safety」には「洋服のSafety」もあって、事前申込制のワークショップであれば服装の指定ができるんだけど、その場参加型だと「いかに汚れないように作れるか?」もポイントになってきます。


5つめは「Space」
会場の空間づくり(装飾)もちゃんとて考えているか?

「美大がやるイベント」なので、もちろん変な空間は作れません。
でも、「見栄えのいいものを簡単に設置し撤去できるか」の方がイベントでは大事で、通常イベントだと数日前から建込できることは少なく、当日2,3時間で設営・撤収することがほとんど。
「高校の文化祭看板みたいな、ユルユルでベコベコでムラムラでグラグラでガタガタな装飾になった」なんてのは特にミッドタウンのあの場所では絶対に許されない世界。

ちなみに毎年「4方向に壁を作って空間を作る」「屋根を作る」という企画が1,2つ出てきます。「あの空間にはそれは合わない」のもあるんですが、「それを短い時間で制作・設営・撤収できるのか?」「その壁や屋根を作ってる時間があったら、ワークショップの中身をブラッシュアップした方がいいんじゃない?」ということで1次で落ちる可能性が高いです。


関係するので、6つめの「Smart」も続けて。
行動も含め美しいか?という問題。

ミッドタウンキッズワークショップ会場は4方向丸見え・・


  • 去年のミッドタウンキッズワークショップの様子

いや、吹き抜けで2階、3階からも常に見られてる状態だから5方向丸見えの中でやらなくちゃいけません。大抵は近くに「裏面(バックステージ)」「見えない部分(受付のテーブル下とか)」があるもんなんだけど、この場にはないのよね。

最初にミッドタウンさんから言われたのが「スマートにやってください」でした。
常にアッパー層のお客さんが見ており、なおかつシャレオツな商業施設だから、裏方的なものをお客さんに見せてはいけない。携帯使ってる姿とかはもちろんだけど、段ボールとかゴミとか自分たちの荷物とか、ミッドタウンに似合わないものは見えちゃいけない。
常にオンステージの意識がミッドタウンでは求められます。
「見せたい部分」の作りは当然としても、「見られたくないスペース」の作りもしっかり考えなくちゃいけません。
キッズワークショップへの応募を考えてるグループは連休中に下見しといた方がいいですよ。


長くなったのでまさかの続くっ!!

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。