【その2】OAC主催「創造性を考える教育シンポジウム」に行ってきた

2017年3月13日(月)

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3月4日(土)に聖心女子大さんで開催されたイベントレポートをお送りしています。

これまでの話はこちら。
OAC主催「創造性を考える教育シンポジウム」@聖心女子大に行ってきた



続いて、美術教育からのアプローチということで、聖心女子大学 文学部教育学科教授で美術科教育学会代表理事の水島尚喜先生による「造形遊びと創造性の育成」

登場するなり、水島先生作曲の「大好き図工」という歌をお披露目。
こういう歌です(笑)



最初に紹介されたのが1956年に公開された羽仁進さん監督の『絵を描く子どもたち』という短編ドキュメンタリー映画。
教室にカメラを入れ、小学1年生の児童画を通して見えてくる子供たちの心の動きを7か月にわたって記録したもの。子供の性格や授業・家庭での生活を背景に色や構図の持つ意味が語られており、当時キネマ旬報短編部門NO1をとったそう。戦後からはじまった創造主義的な図画工作の原点ともいえます。

「僕は脱線しやすいので、最初に伝えたいことをまとめておきます(笑)」と出されたスライド。
最初にまとめを出すのは短いプレゼンでは最近のはやりなんですよ。手羽も一回やってみたいの。
ちなみにブリコラージュ(Bricolage)とは「いろいろ寄せ集めて違う価値のものを作る」という意味。

イタリアのレッジョ・エミリア市にあるREMIDAという施設を紹介されたんですが、工場や企業で使わななくなった廃材や売りに出せない廃材などを「素材」としてREMIDAに寄付・供給し、学校の先生や生徒は無料でそれらを授業などで使えるシステム。まさにプリコラージュ。
日本だと3331の「かえるステーション」が一番近いのかな?ちょっと違うか。素材の面白さを知るために社会的な制度としてこういう施設があるってすごいですよね。

水島先生はかなり意識的に「センス・オブ・ワンダー」という言葉を使われてたのが印象的でした。
「神秘さや不思議さに目をみはる感性」で、全ての子どもが生まれながらに持っている感性のこと。
あ、最後に水島先生は「否定・批判するわけではないけど」という前置きで、「あたしい学習指導要領(案)では、方法論的な『創造』になってきてて、創造活動の要素が薄くなったような気がする」とおっしゃってました。



続いては、博報堂生活者アカデミーゼネラルプロデューサ・中村隆紀さんによる「発想する底力の育み方」という講演。 

「博報堂生活者アカデミー」とは、博報堂の企業哲学である《生活者発想》を広く社会で役立てもらうための教育機関で、今回は生活者アカデミーが行っている「発想」に関する教育プログラムを紹介されました。

ここまで「発想」「創造性(クリエイティビティ)」を分析されてるんだ、と手羽にとっては一番刺激的な時間でしたね。この話、ムサビでもやってくれないかしら。

例えば会社で何かアイデアを考える時に、職業人としての「私」で考えてては新しいものが生まれない、「全自分」の感受性がビジネスのシーズにあるはず、という話。
イングレスの開発者であるジョン・ハンケさんは「引きこもりの子供を外に出すにはどうしたらいいか?」を考えポケモンGOを開発したり、以前記事で紹介した「いすみ鉄道」の社長は鉄っちゃんで、鉄道に対する自分の想いをぶつけた。そういう会社視点ではなく、自分視点のシーズ発見アプローチ。
 

他にも「表層的なスキルではブレイクスルーがない」「暗黙知と形式知」「根本知」「暗黙知ストックの底力」「共創とは独創×独創」「成長原理主義が成熟多様主義」「ビジネスモデルではなくライフ」「発想の視野狭窄」「『イノベーション』の意味変化」「身体性・粘着性・脱殻性」などなど、あああ、今日聞いた話を誰かに話したい!!
でも書き出すときりがないので、今日はこのへんで。
 

みなさん、最後まで真剣に聴講されてました。

講演のあとは、

質疑応答。いろんな立場の方から質問がありました。

小泉先生の「赤ちゃんは『おっぱいを飲む』は反射だが、そのあとに『本人の意思』が生まれ、手伸ばし(リーチング)がはじまり。そしてハイハイと成長する。これは『母親と同じもの』『母親と違うもの』『他者の存在』を知るステップでもある。ハイハイは『最後はお母さんのところに戻れるんだ』という原点・愛着の関係があるからできることで、頼れる人がなければ重いっ切った行動はできない」という話。

中村さんの「人間の思考は袋ではなくアースなので、使わないと入ってきてくれない。手で考える瞬間に気が付くこともある。でも『気づき・発見』という言葉に若い人がピーンとこない。『発見』とはグーグルで必要なものを発見すると思っている。ちょっと文献を調べれば100年前に見つかってることなのにネットに情報がないからと『新発見!』と若い人がいいがち」の話などなど。

というわけで、無事に終了。

この教育シンポジウムは「3年間企画」だったそうですが、来年もこのシンポジウム開催してほしいなあ。

ムサビキャリアチームのお二人も、お疲れさまでした!


以上、「しばらく更新休みます」といったのに結局書き続けてる手羽がお送りしました。
もう一個レポート書いたら、休みます・・。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。