【卒制後の美大生にB級土産ディグのススメ】〜バリ島のユルい歩きかた〜

卒業制作が終わったらやっぱり卒業旅行。おしゃれなパリやロンドン、NYもいいけど、ニッパシが行ったのはバリ島でした。芸術家の街ウブド、そして何よりB級土産との出会い。卒制で凝り固まった美大生に陸サーファーニッパシが自信を持ってオススメするバリ島探検記。

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前回の」「【ニッパシの卒制事件簿】〜 リサーチ緻密にやりすぎてスケール感でスベる〜でご紹介したとおり、卒業制作で考えすぎた挙句盛大にスベってしまった僕。
卒業制作を終えて、最後の学生生活を満喫すべく選んだ卒業旅行先は、バリ島でした。

両親がサーフィンをしていたこともあり、同級生にはサーファーでおなじみ。「バリってことはサーフィンしに行くの?」と、友達からよく質問されましたが、答えはノー。僕のお目当てそれは、卒業制作でバッキバキになってしまった頭をほぐしてくれそうな予感のする、カラフルでジャンクでどこか憎めない「B級土産」だったのです。





実は今までに何度かバリ島を訪れたことがある僕。お土産の種類、定番のキャラはだいたい把握していました。けれど今回の目的は「B級お土産ディグ」。いつもの慣れ親しんだ繁華街ではなく、一度もディグったことのない未開拓エリア、ウブドという村に滞在を決めました。ウブドは芸術の村として有名で、森林に囲まれた閑静なエリアで芸術家たちが気ままに暮らす、いわば美大が村になったようなところなのです。





ウブドには芸術の村らしく美術館やギャラリーが数多く点在していて、バリ島の芸術を一挙に堪能することができます。僕はまず、村のなかにある有名な美術館、ギャラリーを見て回りました。しかし、そこにはB級の香りは全く漂っていません。

芸術品の中には何点か素晴らしいものもありましたが、作風が似通っていて、ちょっと保守的な感じすらするのでした。

美術館を巡り、王道のバリの芸術作品の雰囲気がわかったところで、ついに「B級土産ディグ」の始まりです。美術館の作品の印象が抜けきらなかった僕は、

「もしかしたらB級土産も美術館の作品のように、似通ったものが多いのかな」

と少し不安にもなりましたがさすがはウブド。他の村では見たことのない、唯一無二のB級土産がそこかしこに溢れています。

意味ありげにこちらを見ているひとの顔、バリの伝統工芸とはまたちがう路線に奇妙な進化を遂げたオブジェ、どこか見慣れたキャラクターを思わせる作りの置物...。圧倒的なユルさと、ヘタウマなのかヘタなのか判断のつかない作風がなぜか説得力をもって並んでいます。かなり、攻めている。

そこで僕の脳裏に浮かんだのは
「この攻めてるB級土産たち、一体誰が作っているのだろう?」
という素朴な疑問。一番攻めてる店の店主に聞いてみたところ...

「地元の売れないアーティストが副業として作ってるのよ〜」

とのこと。なるほど。だからそこはかとなく世の中へのディスを感じるものが多いのか!と納得がいった反面、保守的だった美術館を思い出し、「おい!なんで本業は守りに入ってんだよ!」と、ツッコミを入れたくなりました。

このセンスを本業で出せたら、世界で通用する現代アーティストが次々と生まれるだろうなあ・・と、妄想も膨らみます。

ちなみに、僕が一番気に入った「B級土産」はこんな感じのもの。



  • しわしわの体を強調するキリンみたいな首振り人形



こうしてバリ島から海の香りでもなくリゾート地のお土産でもなく、カバンいっぱいの「B級土産」を抱えて帰国した頃には、卒制でガチガチになった頭が少しほぐれているのでした。

さて、この作風が今後の僕にどんな影響を与えたのか、与えていないのか...。
次回の連載もお楽しみに!

(絵と文・ニッパシヨシミツ)

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OTONA WRITER

ニッパシ / nippashi

人間観察が得意なイラストレーターです。 小さい頃は立川のパチンコ屋で育ち、人間観察の基礎を学びました。 大学では6年間建築を学び、新宿歌舞伎町や団地の研究をしました。 最近は人相占いに目覚め、顔面占い師としても活動しています。 個性的な人や面白い建築を発掘し、イラストで紹介したいと思います!