8月13日(土)と14日(日)に鷹の台キャンパスで
2日連続のシニアアートプログラム「版画(リトグラフ)で絵手紙を作ろう」を実施しています。今日はそのレポートを。
今回ムサビとして2つの初の試みがありまして。
一つ目が「(基本的に)シニア対象の実技講座」であること。
一般の方向けの公開講座、実技講座はいろいろやってるし、小学生以下を対象としたキッズワークショップ(先日のミッドタウンワークショップしかり)もありますが、シニア向けの実技講座はやったことがないんですね。というのも高校生や大学生対象であればそれなりに告知ルートが確立されてるけど、メインをシニア対象とした場合、どういう告知・接触方法があるのか。今回いろいろ勉強させてもらいました。
ただ一番難しかったのが「ていうかシニア世代(シルバー世代)って何歳なの?」問題で・・。
実は明確な基準がないんです。映画館のシルバー割引は60歳以上だけど、JALや美術館、ディズニーランド等テーマパークは65歳以上だし、東京都の電車バス乗り放題シルバーパスは70歳以上。
「一般的には企業定年の60歳以上なんじゃない?」「定年の年齢もあがってきてるよ。雇用継続もあるし。60歳をシニア世代というのは今は変でしょ」「じゃ妥当なのは70歳以上?」「でも2日連続だから全員70歳以上だと受講者の体力的にちょっと大変かもしれないね」なんてやり取りがあり、いろいろ悩んだ結果、WHOや人口構造を示す世界データでは高齢者を65歳以上と定義付けてるので、今回は「(基本的に)65歳以上」とさせてもらいました。
若いスタッフ達が「50歳から上でしょ」と言っててぶん殴ってやろうかと思ったけど、AKB48劇場のシニア限定公演は50歳以上だったらしい(涙)
ま、「なんのために分類するのか?」によってシニア(シルバー)層は範囲が変わるってことですね。
初の試み二つ目が「通信教育課程とのコラボ」。
この夏休み期間中は鷹の台キャンパスで通信教育課程の夏期スクーリングを行っているので、スクーリング教室を使って、通信教育研究室に実施してもらったと。社会連携チームと通信教育の連携は実は初めてで。
というわけで、手羽は受付・撮影担当として出勤したのです。人手が足りないもんで・・。
講師は油絵学科版画専攻の遠藤竜太教授、そして通信教育課程油絵学科版画コースの永井研治教授と助手の鈴木富美子さん。
まず永井先生から版画に関するレクチャーオリエンテーション。
版画は凸版画(木版画等)、凹版画(エッチング等)、平版画(リトグラフ等)、孔版画(シルクスクリーン等)の大きく4つに分類でき、今回やるのはリトグラフ。
リトグラフの「リト」はギリシャ語の「lithos」が語源で石の意味。アロイス・ゼネフェルダー(Aloys Senefelder 1771-1834年)が発明した版画方法で、もともとは平らな石を使っていた(今は金属板を使うことが多い)。
水と油の反発作用を利用した版種で、版を彫ったりはせず版面に直接描いた絵をほぼそのまま紙に刷り取れるのが特徴です。「絵画に一番近い版画」と言えます。
・・と知ったかぶりで書いてますが、手羽は全然版画の知識がなく・・・つくづく美大を卒業して「学生時代に強制的に教えてほしかったなあ」と思うのが版画・陶磁・写真です。彫刻出身の手羽が思ってるだけでデザイン系の人は「石膏取り」というかもしれんけど、いろんなシーンで遭遇・関係し、いろいろ応用が利くのがこの3つだと思うんですよね。
レクチャーも終わり、さっそく作業開始。
下絵を描いてきてた方は速く、
周りを保護するアラビアゴムを塗る作業に入ってた。
ここまできたら本チャンの絵を描いて
刷る作業に。
ほい。1版完成。
今回は3版が目標で、こういう実技講座で好きな色で3版までやるのは珍しいかもしれません。
さて、リトグラフの道具を紹介しましょう。
ところで、皆さんも美術の時間の版画でバレン(馬楝)使ってゴシゴシやったと思いますが、バレンを作る職人さんがいなくなってきてるんだそう。彫塑で使用する「のこぎり」は1夏使ったら新潟の鋸研ぎ屋さんに出してたけど、やはり後継者不足でそれもできなくなってきました。
「道具を作る(メンテする)職人さんの後継者不足」は美大としても深刻な問題になってきてます。
通信教育では授業の効率を上げるためにいろいろ工夫をされてて、
女子美さんの版画工房にも「表面をなでる」「ほじらない」って書いてありましたね。
■女子美術大学オープンキャンパス2016に行ってきた
これは版画業界の共通注意事項なんだな。
あ、「先生用ストッキング」って別に先生のための作業用ストッキングというわけじゃなく、版面の汚れをふくためのものです(笑)
とかなんとかやってたら他の方も版が完成し、刷り作業に。
先ほど1版できてた方は2版目に入ってて、
こうやって色が重なるとより版画らしくなる。
ちょっと版がずれたのもいいですね。
最後に中間講評をし、片付け作業。
このペースなら3版までいけそうですね。でも2日連続の実技講座なので体調に気を付けながらゆっくりやっていきましょ。
手羽も版画の作業を1日見るのは初めてだったんですが、版画は段取りというか守らなくちゃいけない手順が多くて、手羽には向かないかもしれないなあ・・。
え?リトグラフのことをもっと知りたくなった?
ごめんなさい。事前申込制なので今回は無理ですが、無料で勉強できるいい方法がありますよ。
ムサビは美術やデザインに用いられる素材・道具に関する用語、技法の知識などを提供するWebコンテンツ
■武蔵野美術大学 造形ファイル
を平成14年からやってます。平成26年10月からスマホやタブレット端末からも閲覧できるようになりました。
これがすごい情報量でして、リトグラフに関することだけでも、
■リトグラフ
■プリントインク(リトグラフ用)
■リトグラフ用具
■製版インク(リトグラフ用)
■アルミ板
■ジンク板
■石版石
■平版
■プレス機
■リトクレヨン
こんだけの情報が出てるんです。さっきの手羽の知ったかぶりも造形ファイルから使わせてもらいました(笑)
これが学内で全部作って全部無料公開ですよ。すごいでしょ?こういうところがムサビたる所以かもしれませんね。もちろん通信教育課程に入学していただけると嬉しいのですが(ぼそっ)
以上、スクリーングも残り10日ぐらいで、
通信制向けレクチャー講座も残りふたつとなった手羽がお送りいたしました。
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。