大学改革の見方-美大の場合-

内容的にあえてTOPバナーをグレーにしてる手羽です。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

今日の話は大学職員向けだけど、一度触れたいなーと思ってた話で。
一般の方には全く価値のない記事だと思うので読み飛ばしてもらって結構です(笑)


文科省と日本私立学校振興・共済事業団がやってる事業に「私立大学等改革総合支援事業」というのがあります。大学職員でこれを知らない人はいないと思いますが、一応説明を。

「教育の質的転換・大学力の向上のために私立大学が組織的・体系的に改革を取り組んでたら助成金を多く出しましょ」という事業で、平成25年度からスタートしました。
もう少し書くと、「文科省が推奨する取り組みの実施状況に応じて経常費補助金を傾斜配分する」というもので、つまり選定されなかった大学の分のお金を『国』がやってほしいことをやってる大学に多くあげましょ、ちゃんと改革してないとこういうことになるよー、というやり方。いわゆる「メリハリある配分」ってやつで、大学規模等で自動的に配分される一般補助を縮小し、その分特別補助など競争的資金で差を付けようよ、というのがこの15年ぐらいの大学行政の流れでもあります。

この「私立大学等改革総合支援事業」のやり方はすんごくシンプルなんです。
これまでは調査書を出して審査員がそれを評価し、面談し・・・みたいなステップが多かったけど、完全なポイント制。
・タイプ1 【教育の質的 転換】
・タイプ2 【地域発展】
・タイプ3【産業界・他大学との連携】
・タイプ4【グローバル化】
の4タイプがあり、「学生による授業評価結果の活用をしてますか?」「大学間連携とか地域連携を協定書結んできっちりやってますか?」「留学生との交流スペースがありますか?」「地域連携を専門とした組織はありますか?」「それとは別に産学連携やってる組織はあるの?」「IRの組織は作ってる?」なんて感じの質問項目がズラっとあって、「全学的にやってる 7点」「1部の学科でやってる 3点」「やってない 0点」という形で点数が決まっています。国が進めたい事業が「重点項目」になっててそれは点数も高い。
詳しくはこちらを。
平成27年度 私立大学等改革総合支援事業 配点区分表

で、自分たちで採点をし合格点(選定ライン)を超えたら採択・・という形なのね。
あ、「●点以上だと合格」ではなく他大学の点数(取り組み具合)によって選定ラインが変わるから、例えばタイプ1「教育の質的 転換」は平成26年度は選定ラインが78点だったけど、平成27年度は88点と10点上がってたりするんです。


えーと、ムサビは3年前1タイプ採択されたんだけど、今年・去年とタイプ4つとも取れませんでした(涙)
タマビさんもそうです(涙)
でも、女子美さんがすごくて。
平成27年度はタイプ2とタイプ3が採択されてて、平成26年度はなんと全タイプ採択されてたんですね。全タイプ採択されたのは約500校中8校しかないんです。すごいでしょ?これって理事長と学長、執行部の強力なリーダーシップと、「やるしかないよね」と改革を支持する(問題意識を共有してる)教職員がそろってないとできないこと。


そういう視点で、女子美さんの出してる情報を見ると、
学校法人順天堂と連携・協力に関する協定を締結
女子美と水産総合研究センターが包括連携協定を締結しました
相模原市との「包括連携に関する協定締結」
相模原キャンパスに「国際交流ラウンジ」がオープンしました
「ああ。なるほど・・」と今までと違う視点で情報を読み取れるんじゃないでしょうか。


ちなみに「教育の質的転換に関するSDを実施していますか?(他大学等の取組事例の紹介)」という項目があるので、神戸芸術工科さんからの依頼は「職員研修」だったけど、頼まれてないのに執拗に手羽が
神戸芸術工科大学SD研修をやってきた1
「SD研修」と言ってたのはそういうわけです。これで神戸芸術工科さんは3ポイント入ったはずで、手羽からの秘密のプレゼント(笑)


もちろん「お金欲しさに国の言う通りにやるのか?」「国の考え方自体が古い」「そんな簡単にYESNOで答えられるものではない」という考え方もあります。大学人として手羽も「それはどうなの・・」と感じてる部分も正直あります。
t例えば岩室とか笠間とか遠方地域での産学連携活動をいっぱいやってるけど、小平市とか地元でやってないと「地域連携」ポイントにならないんです。え、全国で頑張るより地元で小さくやることを推奨してるの?それが地域連携?と思ったり。

ただ、各大学の個性を生かしつつ読み替えることも許されてるので、どう解釈しつつ改革(のよう)に結びつけるか、がポイントともいえる、と。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。