超絶レコメンド!村上隆のコレクション展とそのステイトメント

横浜美術館で開催されている展覧会「村上隆のスーパーフラット・コレクション展―蕭白、魯山人からキーファーまで―」、みなさんはもう足を運んだだろうか。先日、美大卒業生からPARTNER編集部にもこの展示について「超絶レコメンド」と噂が舞い込んできた。そんな開催中の村上隆のコレクション展について紹介しよう。

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「村上隆のスーパーフラット・コレクション展―蕭白、魯山人からキーファーまで―」

今回紹介するのは、横浜美術館で開催中の「村上隆のスーパーフラット・コレクション展―蕭白、魯山人からキーファーまで―」だ。森美術館でも「村上隆の五百羅漢図展」にて村上氏本人の作品展が開催されており、すでに観に行ったという方も多いだろう。
「村上隆の大規模展示が同時期に2箇所で!?」と思われるかもしれないが、森美術館の村上隆展と対照的に横浜美術館のコレクション展では、村上氏本人の作品ではなくこれまで村上氏の独自の眼と美意識で蒐集してきたコレクション群が展示されている。

村上氏のコレクションの特徴とも言えるのは、国内外の現代美術や、日本の古美術、日本、アジアの骨董、ヨーロッパのアンティーク、現代生活陶芸や民俗資料など、現在約五千点を数え、圧倒的な物量と多様さを誇るところ。「彫刻の庭」、「日本・用・美」、「スタディルーム&ファクトリー」、「村上隆の脳内世界」、「1950-2015」という5つの空間構成を通して、作家の美意識の源泉やコレクション行為の持つ意味、芸術と価値、また政治、経済、社会との関係等について広く考えることができる展示となっている。


「村上隆のスーパーフラット・コレクション ―蕭白、魯山人からキーファーまで―」メイキング映像



超絶レコメンド!まずは村上氏の「挨拶文」を読んで

この展示、アート・デザイン系のメディアなら数ヶ月前に、あちこちでニュースとして紹介されていた。でも敢えて会期終了が1ヶ月後に迫った今、PARTNER編集部が本展を紹介するに至った理由、それは美大卒業生から「超絶レコメンド」との噂が飛んできたから。

「横浜美術館で開催されている村上隆のコレクションの一部を紹介する展覧会、『面白いらしいよー』と聞いていたので行ってみたのですが、想像以上の良さでした。作品の面白さはもちろんなのですが、私がレコメンドしたい部分としては、村上さんの挨拶文です。この文章を読めただけでも価値があったな、と思うぐらい胸打たれたので、ちょっと長いですが是非読んで欲しいです!」


  • 以上3点:photo by Maho Sugimoto

  • photo: Yuichiro Tanaka

村上隆ステートメント

この度は「村上隆のスーパーフラット・コレクション展―蕭白、魯山人からキーファーまで―」に来ていただき、ありがとうございます。
アーティストの村上隆です。そして、今回はコレクターの村上隆です。そして、時に画商として、映像作家として、企業家として、いろんな形での表現活動をしているものです。まぁ、日本国内的に言えば、大変いかがわしい人間であります。まぁ、世界どこでもいかがわしいかもですな。ははは。アーティストは、黙って、アート作品造ってりゃいいんだよ、的な声が聞こえてきそうで怖いです。

しかし、こういういろんな事に手を染めているのには一応自分なりに筋を通して、活動しているつもりなのです。その話とはなにかといえば、「芸術とは何か?」という疑問に対して、あまりにも愚直に付き合ってきた結果、あれもこれもに手を出してきたというわけなのです。
体験、体感しないと理解えできない、頭の悪さが、そういう生き方を必然的にしてしまったということでもあります。

まあ、自分は「アホ」ですよね。天然の「アホ」。賢けりゃ、その問いに解析結果が弾き出され、コレコレこういうことでありますな、ふむふむ。。。と、物事の構造が理解でき次の人生の問いに向かって前進できたであろうに。。。宇宙や数学の謎、つまりこの世の成り立ちの不思議に向かって突貫できたであろうに。。。
しかし、私はこの世を知りたいがために、その理解をするためのレンズを「芸術」とし、こだわってきているのです。そして、その問いかけも、あまりにも卑近、俗っぽい、低レベルなところから始まっています。

まず、、、、芸術はなんで高額で取引されるのか?
それから、、、、古いものはなぜ、高額になってゆくのか?
古くて、かつ、芸術的に高い価値の持つものとあ何か?
有名な名物の古いものと、無名のものとの間にある差とは何か?
芸術における良し悪しとは何に起因しているのか?
価値に個人的な思い入れは関係あるのか?
国によって、価値の変動はあるのか?
画商ってどういう商いを行うのか?
コレクションを集めてゆくとはどういうことなのか?
美術館とはなぜ出来たのか?
人はなぜ、美術を鑑賞せねばならないのか? 等など。

子供のように「なぜなに」を繰り返し、実体験し、主に失敗したり騙されたり、金をすってしまったり。。。そういうふうにあっちゃこっちゃでボコボコになりながら、それらの疑問への答えを自分なりに探してきました。そして、その過程の1つが、このコレクションたちなのです。

今の日本は相続税とかそういう部分でコレクションをするのに不利な国です。台湾とか、香港とか、アートコレクションに有利と聞いています。だから、そういう有利な国へアートコレクションは羽ばたいてゆくでしょう。日本にはいい芸術は何も残らないんです。残念ながら。

コレクションに罪はない。
でも、集めた僕に罪はある。

いつの日か、これらの作品たちが、僕の会社、カイカイキキの倉庫を離れて、より多くの鑑賞者の目に触れる場へ、羽ばたいていゆくのが、僕の願いだったりもします。
ほんのひととき、僕が、芸術を理解する「試金石」として集めた作品を見ていただいて、ああ、この時代の芸術の流行りはこんな感じだったよね〜、とか、いや、こいつ趣味悪いわ〜、とか、ぐわ〜!感動した!と涙する、とか、そういう激情に触れてくれたら、展覧会を開催した意味もあるよなぁ〜と思います。

〜中略〜

で、まとめ。「芸術とは何か?」

アートって、芸術って、なんだろう?と思うと、やっぱ、1人の人間が生きてきた社会、人間関係、自体の中で育まれたモノの文化の結晶なんです。だから、僕は逢坂さん(※逢坂恵理子=横浜美術館館長)と出会ったこの時代をこうして結晶化できる事を大変嬉しく思っとります。

ということで、是非、この展覧会で2016年、初春の今の芸術とは何か?を、一緒に考えていただけたらと思います。そして、リアクションもあると嬉しいなぁ〜。なんかいいアイディアあったら教えて下さいね。
よろしく〜!

村上隆

>> 以上引用。全文はこちら




今この瞬間の「芸術とは何か」の探求

このコレクションは、村上氏本人の作品を観るだけでは知り得ない、村上氏のアートへの探求が詰まっている。展覧会を観ながら再びこの文章に目を向ける。きっとひとつ視点が増えるだろう。2016年2月(現在)、今この瞬間の「芸術とは何か」の探求を彼のコレクションから一緒に考える展示。
芸術を学び、つくるみなさんにとって、一緒に探求したいテーマにちがいない。

六本木・森美術館「村上隆の五百羅漢図展」は、村上氏にとって14年ぶりとなる個展。3月6日で閉幕となるが、このコレクション展と合わせて観ることで、「芸術とは何か?」を追求し、様々な作品をコレクターとして集めている村上隆が今、作っているものは何か、彼の今の表現とはなんなのか、より立体的に伝わってくるだろう。


スペシャル映像「村上隆の五百羅漢図展」


「村上隆の五百羅漢図展」メイキング映像


ふたつの展示、それぞれに相互割引やサービスもある。ぜひ利用して賢く両方とも楽しんでほしい。

みなさん、お見逃しのないように。



▼開催概要
村上隆のスーパーフラット・コレクション ―蕭白、魯山人からキーファーまで―
会期:2016年1月30日(土)〜4月3日(日)
休館日:木曜日
開館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
NEW 4月1日(金)、2日(土)は開館時間を延長!20:00まで(入館は19:30まで)開館
URL:http://yokohama.art.museum


村上隆の五百羅漢図展 終了
会期:2015年10月31日(土)〜2016年3月6日(日)
休館日:会期中無休
開館時間:10:00~22:00(火曜は 10:00~17:00、入館は閉館の 30 分前まで)
会場:森美術館
URL:http://www.mori.art.museum/contents/tm500/

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