コラムニストの憂鬱その6「栗ちゃんと僕〜ニー〜」

前回のコラムの続き。 栗ちゃん、かわいい。誰よりもかわいい。

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前編

早稲田のロータリーで出会い、そのまま引き連れ鳥貴族。
事務所にいた栗ちゃんと一時間ほど雑談をし、
そろそろ寝たくなったので「栗ちゃん、もうそろそろ帰って」と言った。

彼は「はい」と気持ちの良い返事をした。

この時は、一晩だけのお付き合いだと思った。東京では多くの人とすれ違う。
こんな交流があっても良いだろう。
去り際、その日の夜に開かれる僕のイラスト講座のチラシを渡した。
栗ちゃんは「行けたら、行きますね」と言った。

毎週土曜日の18時から五反田で「微学校」という講座を開いている。
月に3度ほど開講し、第二週目が僕の担当。
この講座、生徒不足に困っている。波があるのだ。
多い日は7名ほど参加してくるが、少ない日は1名だったりする。
マンツーマン、これじゃ寂しい。
本音を話せば、1人でも多くの人に参加をしてもらいたい。
だから、これ読んだ方も参加してね。

当日18時。
準備も終わり、
受講生も集合したので授業をやり始めようとした瞬間・・・
扉が開いた。
栗ちゃんだった。
正直、驚いた。

「行けたら、行きます」と言って、来る人なんて初めてだ。
僕が「本当に来たんだ?」と言うと、彼は「来ました」と返した。


その日、また飲みに行き親交を深めた。
2daysまるでフェス。
こんな長時間を共に過ごすということは、
僕と栗ちゃんの話が合うと考える方は多いと思う。
ハッキリ言おう、コレが全く合わないのである。


早稲田理工に入るほどの勉強家の栗ちゃんと僕の話はまず合わない。
まず、共通体験が皆無。
二人で話すこと云えば好きなAVとか昔の思い出話くらいしかない。
しかし、それが逆に良かったりもする。
趣味が合いすぎる人は、そのことの会話に夢中になる。
世代も異なり、共通点もない我々は自分のパーソナルを話すしかないので、
短時間でお互いを知れるメリットがある。

ある昼、栗ちゃんと事務所でダラダラしていた。
あまりにヒマなので「なんか面白いことないのかね?」と聞いた。
「ないですねぇ〜」と彼。
「じゃ、何か私に相談事はないのかね?」と更に問いかけた。
「あるっちゃ、ありますね」と彼。


栗ちゃんの悩みごと その1
「イマイチ、キャンパスライフがパッとしない事」

ハッキリと言おう。
僕のムサシノアートユニバーシティの
キャンパスライフも結構にパッとしていない。
大学生活を明るくしたい!という問に答える人間として
適切な人間ではないことは重々承知。
だが、若い人にアドバイスを送りたいという欲は誰もよりもある。

ヨシムラからの回答 その1
「髪をハデな色に染めろ」
栗ちゃんは、当初この回答に対して欺瞞の目を向けた。
だが、僕からすれば髪を染めればパッとする、
これは間違いのないこと。
今、最も勢いのあるバンドSEKAI NO OWARIのFukaseを見て欲しい。
めちゃくちゃハデな髪色。
そして、NBAの往年の名プレーヤー、デニス・ロッドマン並みに
頻繁に染めかえる。
彼のカリスマ性や神秘性を支える一環として、
ハデな髪色はかけがえないものだ。
だから、髪を染めればそれなりに目立つはずとアドバイスをした。
栗ちゃんは、この話を聞くと納得したようで、スグに髪を染めた。
黄緑色に。


栗ちゃんの悩みごと その2
「無口な事」

僕は無口ではないが、当然ながら芸人並みに話が上手いわけでもない。

ヨシムラからの回答 その2
「バンドマンになれ」
確かに無口は、しんどい。
社会に出て”沈黙は金”という金言を嫌ほど理解したが、
大学生には無用。
キャンパスライフとは、軽妙洒脱な会話と共に成り立つものだ。
だが、簡単に口ベタを治すことなど、なかなかの難儀。
どうすればいいか?
つまり逆説的。
無口でも済まされるキャラクターになれば良いのである。
つまり、バンドマンになることだ。
もちろん、栗ちゃんは二度目の欺瞞の目を向けた。
そんな彼に、僕はミッシェルガンエレファント、
ブランキージェットシティの動画を大量に見せた。
HEY HEY HEYでの彼等は、とっても無口。
バンドマンとは普段は無口、演奏はハード、これがベスト。
もちろんモテる。
まずは見た目から。
僕は栗ちゃんにZippoライターが組み込まれたゴツいバックルをプレゼントした。
だが、ロックを知らなければ、バンドもクソもない。
ロック教育のためにまず『マッドマックス 怒りのデスロード』を見ろと進めた。
説明する必要もないと思うが、120分間荒野を激走続ける屈指の名作映画である。
ロックを濃縮した映像が堪らない。
栗ちゃんは都合の良い事に『ドラえもん』といった幼児向け映画以外は、
一切鑑賞したことない男だった。
彼の映画史が『マッドマックス』のみになる。
二十歳を超えて、見た覚えのある実写映画が『マッドマックス 怒りのデスロード』
のみという奇妙な男がココに誕生した。
すごくお気に召したらしく計4回も見に行ったらしい。正にマッド。
同時に、革ジャンを着る理由もできた。
酒場で「革ジャン着てますけど、パンク好きなんですか?」と
絡まれた場合も「いや、俺、マッドマックスなんですよね」と云えばカタがつく。


また別の日、事務所でダラダラしていた。
とてつもなくヒマなので「なんか好きな人いないの?」と聞いた。
栗ちゃんは意外にも「気になってる人はいます」と即答。
僕は「じゃ、その人にLINEしてよ」と言った。
彼は、あんまりノーと言わない人間なので、すぐに文章を打った。
案外、うまくLINEのやりとりは続き、デートの約束をすることに成功した!

ある夜。
栗ちゃんに、新宿に呼び出しをくらった。
女性を誘ったのは良いもののドコで何をするのか、分からないと云う。
新宿は大好きな街。
手始めに、よく行くタイ料理店を紹介した。
「ここでは、タイ風エビの天ぷらを食べなさい」と指示。
その後、ゴールデン街で安価な立ち飲み屋キャロットで飲酒。
ここは野菜ジュースを焼酎、炭酸水で割ったキャロット割りが名物。



飲酒しながら、僕はこう言った。
「僕って良い人だろ」
栗ちゃんは
「ヨシムラさんは、東京であった人の中で一番良い人です」
と返答。
すごい褒めようっ!!

ちなみに、そのデートで栗ちゃんは告白してフラれた。
その次にデートした人は付き合ったらしい。
だから、最近の栗ちゃんは付き合いが悪い。

しかし、栗ちゃんはかわいい。誰よりもかわいい。

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OTONA WRITER

ヨシムラヒロム / Hiromu Yoshimura

中野区観光大使やっています。最近、29歳になりました!趣味は読書です。