London, Great Britein :ロンドンは町のあちらこちらに、モダンな彩り
ロンドンでは、11月中旬になると近代的な装飾が街を彩り始めます。伝統的な飾りというよりも、その年ごとにデザインを変えて、通行人を楽しませるようなモニュメントが多いです。冬は昼間でも、どんよりとグレーの曇り空で、青空が永遠に見られないかのような錯覚に陥ることも。そこで気持ちを明るくしてくれるのが、ロンドンの街に溢れる、クリスマスのイルミネーションです。
ショーウィンドーやデパートの装飾もクリスマス一色になり、賑やかです。ロンドンのメインストリートともいえるOxford Streetと、交わるRegent Streetのイルミネーションは、バスの2階に乗ると間近で見ることができます。 テムズ川南岸のサウスバンク、ハイドパークなどでクリスマスマーケットが開催されています。随所にあるパブも、アットホームなクリスマスの飾り付けがされていて、暖かな雰囲気になっています。クリスマス当日は家族と過ごす伝統のため、基本的に商店は休みになり交通機関も止まるものが多いので、散策時にはご注意を。
Prague, Czech Republic :
旧市街広場の中央に輝くツリーと、レトロな雑貨に出会えるプラハ。
ロンドンから格安航空会社のフライトで、チェコ共和国の首都プラハに飛びました。共産時代の面影の強い街並みを想像していましたが、「まるでおとぎ話のような」という言葉通り、色とりどりのパステルカラーに塗られた建物が並んでいました。
旧市街広場の中央には、周辺の路地からも見える大きなツリーが。 色数を抑えた細かなイルミネーションで品よく輝いていました。その周りに並ぶクリスマス市の屋台で、チェコらしいレトロな小物やオーナメントをたくさん見ることができます。広場を囲む歴史的な建物がライトアップされ、古い建物に見守られているような雰囲気の良いクリスマス市でした。
Dresden, Germany :
世界最古のクリスマスマーケットには、木製玩具や陶器が並び、
ドレスデンの街には沢山のヘルンフートの星が。
プラハの駅で購入した切符で特急に乗り約2時間強、ドイツ東部の古都ドレスデンに到着です。第二次世界大戦で街がほぼ壊れてしまい、その建物の断片を使って再建した旧市街。黒々とした建物が独特の雰囲気です。旧市街の広場で賑やかに開催されている、ドレスデン シュトリーツェルマルクトは、ドイツ最古のクリスマスマーケットのひとつ。 起源は1434年にまで遡ると言われています。
ドイツとチェコとの国境にあるエルツ山地は、木工工芸品の産地。 そのため、木製オーナメントの屋台もたくさん出ています。 細部までとても丁寧に作られている品が多いです。
また、この時期のドイツでは、光る紙立体のような星が窓辺や街に飾られている光景をよく見かけます。そのなかでも、四方八方に突起があり存在感のある「ヘルンフートの星 (Hernhuter Stern)」はドレスデンの東110kmにあるヘルンフートが発祥の地。17の四角錐と8つの三角錐で構成されていています。かつてドイツのプロテスタント教会が、イエスの誕生を知らせたベツレヘムの星を象徴するものとして飾り、広まっていったそうです。プロテスタント教会の多いドレスデンの街ではとても親しまれていて、ショッピングモールや道にも大きなヘルンフートの星が光っていました。
ヘルンフートにある、160年の伝統を持つヘルンフーター・シュテルネ社では、製造模様の見学や歴史的な展示品を巡るガイドツアー、クリスマススターをかたどった室内での映像体験ができるそう。
ドレスデン市内ではいくつものクリスマス市が開催され、子供が楽しめる体験型のお店、陶磁器、布製品、お菓子の屋台など、お店がひしめき、賑わいをみせていました。さらにドレスデン城内の中庭では、中世のクリスマスマーケットを再現した市も開かれていて、ロウソクの薄明かりに照らされた屋台を覗くと、中世にタイムスリップしたような気分になれます。
Hamburg, Germany : クリスマス当日。
静まり返ったドイツの街 ハンブルグで、家庭の温かなクリスマスディナー
12月25日は、日本のお正月のように商店もほとんどが閉まり、道にはイルミネーションが光っているものの、街全体が静かになります。欧州に帰る家がない私をみかねたドイツ人の友人が、実家での夕食に招いてくれました。ドレスデンからドイツ北部の港町ハンブルグまで、国鉄に約5時間乗って、ありがたく向かいました。駅のホームで、友人がいつも通りの笑顔で迎えてくれました。
彼女のご実家には、優しいご両親と、黒い大きな犬がいて、リビングには暖炉がありました。クリスマスツリーが輝き、まさに絵本のなかで見たようなクリスマスの光景が広がっていました。
室内のクリスマスのデコレーションは、とても家に馴染んだ様子で飾られていました。流行り廃りのない伝統的な装飾に、家族の歴史が刻まれていくように見えました。食卓で、ドイツの激動の時代を切り抜けた一家の話を聞いて、平穏に集える時間の大切さが伝わってきました。
欧州の冬は、寒くて長いです。だからこそ、クリスマスマーケットで家族や友達に贈り物を選んで、クリスマス当日は、家族でテーブルを囲む、温かいクリスマスが存在していました。ツリーの下に置いてあったプレゼントの包みを開くたび、ノートや日用品などそれぞれが欲しがっていたものや、サプライズの小さなギフトが出てきて、 何度も「ありがとう」と言う姿に一家の絆を感じました。雪の降るハンブルグでの、静かで暖かなひと時でした。
欧州のクリスマスマーケットは、
日本の神社の夏祭りのような、地元に根ざしたイベントでした。
いくつかのクリスマス市を巡ってみて、極寒のなかの店主と家族連れのお客さんのやりとりを見ていて、ふと日本の神社の夏祭りを思い出しました。
毎年いつもの場所で、ごく自然に行われていて、訪れる人が歳を重ねるたびに思い出が増えていくような、地元に根ざしたイベントという印象を受けました。
右の写真のように、ドイツ周辺は大きな荷物を持ってひとりで移動している若者も多いです。冬に欧州を訪れる機会があれば、クリスマス市を覗いてみてはいかがでしょうか。
【前編】にあたる 「地域ごとに個性豊か!職人技術とセンスが溢れる欧州のクリスマスマーケット」では、ウィーン、ブダペスト、ニュルンベルクで見たクリスマス市をご紹介しています。よろしければ併せてご覧ください。
デザインとアートディレクションを東京藝大で、写真をイギリスの大学院で学んだのち、東京のデザイン事務所でグラフィックデザイナーとして勤務。その後、フリーランスでデザインと写真の仕事をしています。主な作品に、杉並区の公式キャラクター「なみすけ」など。 制作のバックグランドになった旅のことや、様々な国で見たものを、美大出身の視点で発信しています。