地域ごとに個性豊か!職人技術とセンスが溢れる欧州のクリスマスマーケット

寒い冬も心温まるクリスマスの装飾。日本のショーウィンドーや街にも、賑やかで楽しいデザインが溢れる季節です。美大生の頃、キリスト教信仰に基づいた本場のクリスマスを見たい!と思い、留学中に欧州各地の雰囲気の違うクリスマス市を巡りました。今回は2010年に訪れたウィーン、ブダペスト、ニュルンベルクのクリスマス市の様子と、陸路移動など旅の様子も交えてお伝えします。

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Vienna, Austria:上品な装飾、 洗練されたウィーンのクリスマス市

12月の半ば、気温はマイナス5℃とマイナス10℃のあいだ。ウィーンのシェーンブルン宮殿の広場は、雪が照明を柔らかに反射し、中央の大きなツリーは霧のなかに霞んで見える、幻想的な空間になっていました。市庁舎前のクリスマス市が有名ですが、市内随所にオーストリアらしい品のよい商品を売る屋台が出ています。職人技の光る手作りのクリスマスの飾りが所狭しと並んでいました。


  • シェーンブルン宮殿前のクリスマス市。

  • 上品な印象のメインストリートの装飾。

クリスマス市の屋台には、ツリーに飾るオーナメントはもちろん、オーストリアのチロル地方で木彫されるキリストの生誕を表した人形 Krippe(クリッペ)、スパイスの花束、ガラス細工、陶器、皮革製品といった、手作りの品が並びます。屋台で買える Punsch(プンシュ)という甘いアルコールは体を温めるのに最適。毎年クリスマス市オリジナルで作られるマグカップに入っていて、飲みながら歩いている大人がたくさん。お酒に弱い方は、Kinder Punsch(キンダープンシュ)を注文すれば、ノンアルコールの甘い温かい飲み物をクリスマス市のマグカップに注いでもらえます。


  • ひとつひとつ精度が高く、人形の表情も違うので、時間を忘れて見入ってしまいます。


  • 木材の自然の質感を活かしたオーナメントは、オーストリアの山岳地方から。 思わず息を呑むような繊細な手作業。



Budapest, Hungary:贈り物の雑貨を探す、ブダペストのクリスマス市


早朝発のバスでウィーンから揺られること3時間。パスポートのチェックもなく、ハンガリーの首都ブダペストに到着しました。「くさり橋」の美しい夜景が有名ですが、市街はよく見るとさまざまな時代の建物が混在しています。例えば中世の建物もオスマン帝国支配時にイスラムの文化に則した改築が行われたり、さらに第二次世界大戦で破壊された部分は、共産主義のもとで復興、1990年頃からの新しい政治体制など、街並みが怒涛の歴史を物語っています。夜になるとイルミネーションがその街を彩り、積もった雪に足元を気をつけながら、多くの人がクリスマス市に向かいます。


  • 天井が高くて広々とした駅構内。

  • 今にも凍りそうなドナウ川。

  • 寒波が直撃でマイナス10℃。それでもクリスマス市の広場と周辺の道はとても賑わっていました。


  • 筒状に焼かれたケーキ、クルトゥシュカラーチが名物。表面はサクっと、なかはもっちりとした食感。


  • 屋台の商品の上にも容赦なく雪が積もります。

ヴェレシュマルティ広場のクリスマス市で販売される商品は、天然素材で手作り、という決まりがあるそうです。模様の描かれた陶器や、様々な形のキャンドル、羊毛のルームシューズ、クリスマスカードなど、雑貨の種類が豊富。というのも、ハンガリーでは、家族や親しい人への贈り物をクリスマスマーケットで選ぶ習慣があるのだそうです。

ハンガリーの雑貨といえば、伝統的な刺繍文化があり、現代でも刺繍をはじめとする様々な手工芸品を市内で見ることができました。



Nuremberg, Germany:
木製玩具のふるさと、多くの人を惹きつけるクリスマス市といえばニュルンベルク

クリスマスマーケット発祥の地といわれているドイツのなかで、最も有名といわれているニュルンベルクのクリスマス市。中世から栄え、ドイツの歴史上重要な、城壁に囲まれている小さな町です。現代美術が充実している「新美術館」もあります。クリスマスマーケットのために訪れる観光客は200万人を超えるそう。それだけ多くの人を惹きつけるほど、屋台も多く、商品の質が高いそうです。

このとき旅行の拠点としていたオーストリアのウィーンから、ニュルンベルクまでは鉄道で5時間弱。ミュンヘンからは1時間ほどの場所です。ドイツ国鉄 DB(ドイチェ バーン)のウェブサイトで事前に安い切符を予約し、ウィーンの駅の窓口で購入して向かいました。


  • 日本のデパートで見たことのある木製のクリスマスのオーナメントは、ここから来ていたのか!と知りました。


  • ろうそくを灯すと、上昇気流でツリーが回るそうです。

ニュルンベルクは、 森に囲まれた環境なので木彫に長けた人々が多く、15世紀には人形を専門に作るマイスターがいたそうです。中世からおもちゃの街として栄え、のちに国際的な玩具の工場生産地となり、今も木製玩具がたくさん売られています。

左に写真を掲載した商品は、周りにろうそくを灯すと上昇気流でプロペラが回り、クリスマスツリーが回る仕組み。電気を使わずに回るツリーを想像すると、なんだか和みます。

ドイツの屋台で購入できるホットワインは「グリューワイン」と呼ばれています。赤ワインをベースに、シナモンや香辛料の香りがします。かじかんだ手を温めてくれます。


  • ドイツの伝統工芸品のくるみ割り人形は、クリスマスの代表的な装飾品だそうです。


  • 子供向けクリスマスマーケットには大型遊具なども。

  • あっという間の閉店作業。テントは赤と白のストライプで統一されています。

このように、街によって雰囲気や商品も違っていて、地域色が豊かな欧州のクリスマスマーケット。現在のような華やかなデコレーションや、クリスマスの音楽で楽しまれるようになったのは19世紀以降と言われていますが 、ドイツのクリスマスマーケットの歴史は14世紀に始まっているそうです。中世の時代から脈々と受け継がれてきた、職人の技術と、クリスマスを楽しみ集う人々の気持ちに触れられ、あたたかな気持ちになること請け合いです。

後編 : これが本場のクリスマスの楽しみ方!
手工芸品と伝統の飾りに心奪われる、欧州のクリスマスマーケット

↑プラハとドレスデンのクリスマス市、ハンブルグのクリスマス当日の様子をお伝えしています。よろしければ併せてご覧ください。

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OTONA WRITER

五味 由梨 / YURI GOMI

デザインとアートディレクションを東京藝大で、写真をイギリスの大学院で学んだのち、東京のデザイン事務所でグラフィックデザイナーとして勤務。その後、フリーランスでデザインと写真の仕事をしています。主な作品に、杉並区の公式キャラクター「なみすけ」など。 制作のバックグランドになった旅のことや、様々な国で見たものを、美大出身の視点で発信しています。