ベルリンのアトリエ「Mosaik」で感じた本当のアウトサイダーアートの精神

ベルリンの中心部から少し離れたSpandauというエリアにあるアトリエ「Mosaik Berlin」。ここでは精神的な障害を抱えながらもアートを作り続ける人々が集まっています。そこでは理屈抜きの「本当のアート」がありました。

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  • ©Kunstwerkstatt Mosaik Berlin

学校でもない、福祉施設でもない取り組み
アートが盛んな都市、ベルリン。日々、若いアーティストが国内外からやってくる、とても新陳代謝の良い場所として知られています。そんなベルリンではアートに関して色々な取り組みが、個人のプロジェクトベースで発生したり、政府が援助をしたりとコラボレーションや連携が上手くできている印象です。このアトリエ「Mosaik」も、そのひとつ。精神に問題を抱えていると診断された人の中でもアートの素質がある人々がここに毎日集まり各々が制作をしています。Mosaikは政府が運営するプロジェクトではなく、企業として運営されています。ドイツでは、障害者の働く権利を守るため、こうした取り組みに政府は援助をすることが決まっているそうで、Mosaikも政府からの援助を受けながらアトリエとしてアーティストの作品を販売し、経営を回しています。


  • ©Kunstwerkstatt Mosaik Berlin

アーティストの興味はそれぞれ
このMosaikではどのようにアーティストが選出されるのでしょうか?代表のNinaによると、アーティストは、2週間のインターンシップを経てアートの素質があるかを選ぶそうです。「2週間もあれば、誰が飛び抜けているかはすぐ分かります。」こうして選ばれたアーティスト達の興味はそれぞれ。ここはアート学校ではないので、方法論を教えたりは一切しないそうです。その代わりアシスタントが付き、どんな素材を使いたいか、どんなテーマで制作をしたいかを一緒に練りながらアドバイスをするのみに留まります。アーティストは皆、アートの教育を受けたことがないというから驚きです。なんといっても作品のクオリティがものすごく高く、アウトサイダーアートとは何なのか?もはや、アートとは何なのかをとても考えさせられました。


  • ©Kunstwerkstatt Mosaik Berlin

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理屈は、いらない。
Ninaは言います、「ここでは、作品を好きになるのに理由はいりません。これは、好きだな、これはなんか嫌いだなと理屈抜きで自由に言うことが許されています。全てのアーティストの作品を好きになる必要は全くないのです。」もう一つ面白いと思ったのが、ここのアーティスト達は誰も、自分たちの表現方法を1つに決めず、油絵から版画、彫刻、インスタレーションなど様々な方法でアウトプットをしている点です。アシスタントはアーティスト達に「こんな素材はどう?」と提案してアーティストの可能性を広げようと試みているそう。 「アーティストは有名になろうとか、そういう気持ちで制作をしている人はいません。もはや、アーティストになるためにアートをするという概念さえ分からない人がほとんだと思います。」


  • ©Kunstwerkstatt Mosaik Berlin

Mosaik Berlinは、所属アーティストのためにも外の世界との繋がりを増やして行きたいと考えているそう。施設は立地的にベルリンの郊外に位置しているので、まだまだ外部のアーティストとのふれあいも少なく今後はオープンデーを増やすなどもっとMosaikを開かれたアトリエにしていく予定だそうです。ベルリンに御越しの際は是非Mosaikのイベントやオープンデーをチェックしてみてはいかがでしょうか?



Kunstwerkstatt Mosaik Berlin

Atelier für Künstler mit Assistenzbedarf
Askanierring 155
13585 Berlin

Website:http://kunstwerkstatt.mosaik-berlin.de/

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OTONA WRITER

wasabi / wasabi

ベルリンでフリーランスの翻訳家・ライターとしてアーティスト・ステートメントの日英翻訳や移住情報の発信をしています。現地のアート情報や空気感が伝わる文章を発信していきます。掲載媒体はブログ「WSBI」、ドイツ大使館公式ブログ「YOUNG GERMANY」、外国人向けの日本文化情報サイト「Tadaima Japan」他。