【作家インタビュー 齋藤華奈子さん】素のままの素材と記号を組み合わせて、記号とその意味がわかるもの、わからないものを制作をしている

「コクとキレ」は京都市立芸術大学の大学院で彫刻を専攻するメンバー11名によって大阪で行われる展覧会です。展覧会に先立ち、出品する作家それぞれの人となりや思考性、作品スタイルについてインタビューを行いました。展覧会は2015年10月13日より、大阪の海岸通ギャラリー・CASOにて行われます。 語り手:齋藤華奈子 聞き手:山田毅

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齋藤さん

お久しぶりです。
山田です。

交換留学でロイヤル・カレッジ・オブ・アート(Royal College of Art, RCA)に行って、しばらく経ちますが、そちらはどうですか?楽しんでますか?こちらもいよいよ後期が始まり、展示の準備も進んでいます。

それで広報の一環で、僕が書く作家にインタビューしているものなんだけど、齋藤さんとはメールの往復書簡的なものをかわすというものが掲載できたらなと思いました。他の作家にも聞いていることですが、いくつかの質問に答えていただけたらと思っています。

それで早速ですが、
①齋藤さんの作品の特徴(技法、素材、コンセプトなんでもあり)を教えてください。
②京芸というところとRCAというところはどうですか?(違いや共通点とか)
③最近興味のあることはなんですか?

このあたりです。お忙しい中とは思いますが、ご協力お願いします。

山田

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山田さん

おはようございます。往復書簡、面白いと思います。イギリス時間になってしまいますが、質問の内容を返信しますね。よろしくお願いします。


①齋藤さんの作品の特徴(技法、素材、コンセプトなんでもあり)を教えてください。

A:私の作品の特徴といえば、素のままの素材と記号を組み合わせて、記号とその意味がわかるもの、わからないものを制作をしている所でしょうか。

②京芸というところとRCAというところはどうですか?(違いや共通点とか)

A:RCAについては、そもそも立地しているロンドン自体、イギリスの社会制度や文化がベースの上に移住してきた他国の方が相当数いるので、そういう環境の元、在学している生徒も経験してきたことや興味のあること、どういう視点で物事を捉えているのか、という部分にかなりの幅があって面白いです。幅がある理由のいくつかに、芸術とは異なる分野から進学されている方がいたり、イギリス以外のEU諸国、その他の国からやってきた留学生が多く入学していることも関係があると思います。多くの面で異なっている者達が在学することで、作品についてや自身が着目しているトピックを、より広い視野から感じたり、思考ができる刺激的な場所になっていると思います。一言でいえば楽しくて新しいことが出来そうな場所、という印象です。

多くの異なる物をジョイントさせる思考と感性は京芸にもあります。関西の食で例えるなら、沢山の素材を投入するお好みやきとか。ロンドンに行く前には京都のカフェで抹茶ソフトクリームにヨーグルトとコーヒーゼリーが入ったパフェを食べました。今挙げたのは関西の食に関することでしたが、そういう感性と類似するものが京都市立芸術大学もカリキュラムの中にも、異なるものを組み合わせる、あるいは混在させる形で存在しているように感じていて、その思考と感性自体がRCAの環境と類似していると思います。その他、彫刻の学科は先生のタイムスケジュールや生徒が自由に制作する環境を優先しているところが京芸の彫刻と類似しています。

異なる点も沢山あるのですが、それはまた今度お伝えしたいと思います。

③最近興味のあることはなんですか?

A.最近はモニターに関係した素材とナイフやフォークを通常と異なる使用の仕方ができるよう加工をする事に興味があります。身近に興味のある人物は大家のALI。彼はアフリカ系イギリス人で、ALIはアフリカの人同様、ロンドンにいても木の枝で歯を磨くし、彼にみそ汁をあげるとライムとチリペッパーで味付けをして食べます。

齋藤

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齋藤さん

こんにちは。山田です。

①齋藤さんの作品の特徴に関してですが、「素のままの素材と記号を組み合わせて、記号とその意味がわかるもの、わからないものを制作をしている」というのは、素のままの素材というのは、例えば鉄とか石とか、そういうことですかね?齋藤さんがよく使うものとか、好きなものってありますか?

それと「記号」とありましたが、具体的には、どのようなものなのでしょう?少し気になりました。前回の展示作品とか、過去の作品を引き合いに出してもらえると助かります。

②京芸というところとRCAというところはどうですか?ということで、多くの異なる物をジョイントさせる思考と感性ということを共通点にあげていただいたようで、お好みやきの例えがわかりやすかったですww 齋藤さんのRCAのアトリエ?とか制作場所の写真などありましたら、見たいなーと思いました。

③最近興味のあることはなんですか?っていうので、ALIさんについて書かれていますが、彼にみそ汁をあげるとライムとチリペッパーで味付けをして食べますって、ものすごい味覚してますね。僕もフランスにいったときに、ラディッシュで煮物を作ろうとして、大失敗したことがありますが、そちらでは日本のお料理はできそうですか?そしてALIさんについては、なんだか気になりますね。

でもロンドン楽しんでいるようで、何よりです。

ちょっと写真など送ってもらえるといいかと思いました。また時間があるときによろしくです。

山田

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山田さん

齋藤です、質問の答えを送ります。

①齋藤さんの作品の特徴に関してですが、「素のままの素材と記号を組み合わせて、記号とその意味がわかるもの、わからないものを制作をしている」というのは、素のままの素材というのは、例えば鉄とか石とか、そういうことですかね?齋藤さんがよく使うものとか、好きなものってありますか?それと「記号」とありましたが、具体的には、どのようなものなのでしょう?少し気になりました。前回の展示作品とか、過去の作品を引き合いに出してもらえると助かります。

A:そうです、素のままの素材とは自然にできたもの、という意味です。私が特によく使うものは木と樹脂系のメディウムでしょうか。「記号」とは具体的にはTVやインターネットで流れる動画や画像、また架空のキャラクターや道路標識などの街でみられる看板のことを差しています。私の言う素のままの素材とは人為的ではない、という言葉に言い換えができると思います。さらに言うなら意識的ではない。それとは逆に、私の使用する素材の1つである「記号」は意識的に理解できるものだと思います。

②京芸というところとRCAというところはどうですか?ということで、多くの異なる物をジョイントさせる思考と感性ということを共通点にあげていただいたようで、お好みやきのたとえわかりやすいです。齋藤さんのRCAのアトリエ?とか制作場所の写真などありましたら、見たいなーと思いました。

A:共通点について、今の時点ではそう思います。RCAの彫刻のスタジオはつい先日個人の場所が振り分けられたばかりなので、スペースとしてはまだフレッシュな状態ですが、これから周囲も私も自分のスペースを素材や機材、制作物で埋めてゆくので、今の状態は貴重な一枚かもしれません。


  • 齋藤さんのRCAのアトリエ

③最近興味のあることはなんですか?っていうのでALIについて書かれていますが、彼にみそ汁をあげるとライムとチリペッパーで味付けをして食べますって、ものすごい味覚してますね。僕もフランスにいったときに、ラディッシュで煮物を作ろうとして、大失敗したことがありますが、そちらでは日本のお料理はできそうですか?そしてALIについては、なんだか気になりますね。

A:以外と美味しいんですよ、ライムとチリの入ったみそ汁笑 私も同じものを食べたのですが、爽やかな酸味のある、ベトナム風スープのような味になります。

日本食はロンドンでも作っています。ロンドン中心街には沢山の日本食料理屋や日本食の食材売り場があるので、ロンドンのオーソドックスなスーパーより値段設定は高めですが、日本の食材や調味料を入手することは難しくありません。でも日本食を作るのは時々で、普段はテスコやセインズベリーというスーパーで、パンやじゃがいも、その他の食材を買って食べています。イギリスの食材は大きめに作られており、量が多いので好きです。

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齋藤さん

しばらく連絡が遅れてしまいました。ごめんなさい。いろいろ聞いて、いろいろ理解できた気がします。少し話は変わりますが、最近興味のあることで、最近はモニターに関係した素材とナイフやフォークを通常と異なる使用の仕方ができるよう加工をする事と行っていましたが、その素材はどのように使おうと思っていますか?またそれの写真とかあったら、送ってほしいです。

山田

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山田さん

齋藤です、ご多忙のところ有難うございます。
質問の答えを送ります。

A: 再成形されたナイフとフォークについてですが、使いづらい道具を使うことで、少しずつ、身体が道具に慣れてゆくプロセスを体験していただく作品の一部になります。その他の作品については写真で楽しんでください。


  • TVやインターネットで流れる動画や画像、また架空のキャラクターや道路標識などの街でみられる看板の過去作品の写真


  • TVやインターネットで流れる動画や画像、また架空のキャラクターや道路標識などの街でみられる看板の過去作品の写真


  • 木と樹脂系のメディウムを使用した過去の作品

木と樹脂系のメディウムを使用した過去の作品、TVやインターネットで流れる動画や画像、また架空のキャラクターや道路標識などの街でみられる看板の過去作品の写真についてですが、コンセプトは一緒なので、全ての写真に質問が該当しています。

齋藤

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齋藤さん

ありがとうございました。齋藤さんの文章を編集しながら作品を見ると、また見え方が変わってきますね。それが面白い。いろいろ聞けてよかったです。ありがとうございます。RCA楽しんでくださいね。帰ってきたらお土産話楽しみにしています。

山田

京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻展『コクとキレ』
作家|今井菜江 上田純 金昇賢 黒木結 齋藤華奈子 許芝瑜 田中美帆 寺嶋剣吾 林宗将 山田毅 渡辺伊都乃
会期| 2015年10月13日(火)-10月25日(日)
休館日| 10月19日(月)
時間| 11:00-19:00(最終日のみ~17:00) 
会場| 海岸通ギャラリー・CASO
http://www.caso-gallery.jp/exhibition/2015/post-4.html

イベント|
①ミドルパーティー
2015年10月17日(土)16:00-18:30
※11:00からパーティーは始まっています。ピークタイムは16:00からです
②トークイベント
2015年10月24日(土)16:00-18:30

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OTONA WRITER

山田毅 / yamadatsuyoshi

東京から移住して、現在は京都で、編集者をしたり、本屋の店長をしたり、村作りに携わったり、そして再び美術を学んでいます。東京と京都のアート・デザインの世界にまつわるあれこれを配信していけたらと思っています。