山田:寺嶋くんは、何をつくってる作家なんですか?って言葉にできますか?
寺嶋:ん!?むずかしいなー。
山田:以前の作品を見たことがあるんだけど、あれは映像化が目的ではないんだよね。
寺嶋:そうなんですけど…そのー…つくりたくないんです!
山田:ほう。
寺嶋:一応、自分の態度って言うのを、こういうカタチで見せるけど、いつも展示をするたびにフラストレーションが溜まるんです。ホームセンターとかに僕らはよく買い出しにいくじゃないですか。で、同じものを大量に買ったりして、作品をつくる。いろんなホースを大量に買ったときがあって、何メートルも。そのときに店員さんにどういう風に見えてるかっていうのを考えたことがあって、作品のためにホースを買っていくんですけど、それを説明するとつまんないじゃないですか。全然面白くない。もしもそれが個人的な生活のために使うホースだったら、家の中どーなってるんだってその人が想像するかもしれないじゃないですか。そういうことが面白いというか。
山田:じゃーそういうことに似たことを、アクションとしてやってるってこと?
寺嶋:うーん。難しいです。
山田:でも基本的には、もの(いわゆる彫刻)をつくってないんだよね。
寺嶋:つくってないですね。
山田:作品の発想って言うのは、日常の生活の中から生まれるの?ほらさっきのホースの話も実際にそういう目で見られてるって言う視線を感じたりしたんでしょ?そういうことを映像化してるっていうか。
寺嶋:身近な体験といろいろと考えてることが繋がる瞬間はもちろん大事にしてます。だけど展示になっちゃうと、「作品」を見にやって来たみたいになるじゃないですか。それがあんまり面白くないというか。繋がり方も繋がれる人もある程度決まってるし、身近ではなくなる。間口が狭すぎる。なにかわからないものが街にあって不意に出くわしてしまうっていうそういう感じとかは面白いと思ってます。
山田:展示って何なんだろうね?
寺嶋:うーん、だから他の方法も探しつつです。
山田:それは、なんなんだろうね。
寺嶋:今のところ僕が街中でやってることは、その場で人に還元されるものは少ないけど、その場で起きたことと人とが強く結びつく方法もあると思ってます。展示には別の役割を持たせて続けていきたいです。
山田:そのさ、美術の領域でそれを行っていることに関しては、どう思ってるの?ほら最近はデモとかさ、流行ってるって言ったらだめだけど、あれだっってアクションだし、布教活動とか、チラシ配りとか、そういういろいろがあるわけでしょ?そういう中で美術の文脈ってどう思ってるのかなって。
寺嶋:最終的には、映画が撮りたいんですよ。
山田:ほう。
寺嶋:映画って1つのドラマの中で、2人の人間の関係性とか間にあるものとかを見せたりするじゃないですか。そういう方法じゃなくて、別のやり方をいまはいろいろ試してる。
山田:映画はいつから撮りたいの?表現のはじめは映画を撮りたいと思ったの?
寺嶋:いや、僕もともとは絵を描いてたんですよ。学部のときです。
山田:寺嶋くんって、たしか教育学部にいたんだよね?そこでは美術もやるの?
寺嶋:そこは美術教師になるためのところなので、まんべんなくカリキュラム組まれてます。
山田:へーそうなんだ。そこで絵を描いてたんだ。油絵?
寺嶋:油絵です。空中に人の頭が浮かんでる絵を描いてました笑
山田:狂ってるなー笑
寺嶋:町で見かけた人を記憶して、首だけ浮かべて描いてたんです。そのあとぱっと変わりましたね。そのときは、いろんなものに顔の皮膚をくっつけるっていうこととかをやってました。
山田:だんだん今のに近づいてきてるね。
寺嶋:そうですね。土を掘って、頭を埋めて、ホースで呼吸したり。いろんな人と顔をくっつけて、顔をぐるぐる巻きにしたり。トマトを包帯で頭に巻き付けて、つぶしてみたり。そういうやつをいっぱいやって、写真で記録してました。
山田:どんどん身体的な方向に行くんだね。
寺嶋:どんどん動きに興味が移っていって、演技みたいなのじゃなくて。
山田:仕草?
寺嶋:仕草。自然て言うのがあるかわかんないけど、そういう動き。京都駅で、僕がうつぶせに伏せてる所を記録した映像があるんですけど。最終的にJRの職員さんと警察が、画面に挟み撃ちに入ってきて、起こされるって言う。僕がただ寝てるだけで、人の動きを誘発して、一応街中なんだけど、舞台っていうか。通行している人たちもいろんな動きをしてくれるんですよ。演技してる意識が僕にしかないから1人だけ動きが不自然だったりして。
山田:勝手に物語が生まれるよね。それを映像で記録するっていうのは、映画的だね。すごくそれだけで劇的だもんね。
寺嶋:中身の話しとは別のことだけど、無線の入れ方とかも良くて、一旦後ろを向いて入れたりするんですよ。いい仕事してくれるんです。
山田:その偶然生まれちゃう物語っていうの?
寺嶋:偶然のカタチとか、小銭をばらまく作品も人間で形をつくるってところから始まってるんです。
山田:人が集まってきて、去っていくところだよね。
寺嶋:そう消えていくんです。
山田:いろいろ繋がった。
山田:最近興味があることはなんですか?
寺嶋:なんか趣味じゃないけど。日頃やってることで、飲食店でご飯を食べるじゃないですか。誰かと食事したときに相手にポラロイドカメラで写真を撮ってもらうんですよ。食べ終わった皿と僕の笑顔みたいな。それを食べた机の裏に貼って帰るっていうのをやってます笑
山田:それヤバいね。持って帰るんじゃないだ。
寺嶋:持って帰りません。貼って帰ります。けっこう前からやってます。探してみてください。
山田:あるかもってこと?
寺嶋:そうです。定期的にやってる活動です。他にもいろいろやってます。
山田:でも最終的には映画が撮りたい?
寺嶋:映画でもやりたいことがあります。
山田:もうそういう行動ひとつひとつが物語を生み出してるよね。ありがとうございます。
そういう目で見ると展示も変わってきそう。楽しみです。
京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻展『コクとキレ』
作家|今井菜江 上田純 金昇賢 黒木結 齋藤華奈子 許芝瑜 田中美帆 寺嶋剣吾 林宗将 山田毅 渡辺伊都乃
会期| 2015年10月13日(火)-10月25日(日)
休館日| 10月19日(月)
時間| 11:00-19:00(最終日のみ~17:00)
会場| 海岸通ギャラリー・CASO
http://www.caso-gallery.jp/exhibition/2015/post-4.html
イベント|
①ミドルパーティー
2015年10月17日(土)16:00-18:30
※11:00からパーティーは始まっています。ピークタイムは16:00からです
②トークイベント
2015年10月24日(土)16:00-18:30
東京から移住して、現在は京都で、編集者をしたり、本屋の店長をしたり、村作りに携わったり、そして再び美術を学んでいます。東京と京都のアート・デザインの世界にまつわるあれこれを配信していけたらと思っています。