仙台からはじまった『とっておきの音楽祭』は全国に広がった!
オハイエ!……「オハヨー!」と「イェー!」を合わせた元気の出る言葉。同名の曲がとっておきの音楽祭のテーマソングです。2001年に仙台で初めて開催されたとっておきの音楽祭は、障害のある人もない人も一緒に音楽を楽しむことを目的とした音楽祭です。当初は1度きりの開催のはずでしたが、大きな反響があり、今では鹿児島市、大阪府枚方市、山形市、福島市、東松島市など全国10ヶ所以上で開催されています。ここ熊本でも2010年に西日本で初めて開催され、今年も先日3月22日(日)に第6回オハイエくまもと とっておきの音楽祭が行なわれました。
街全体が音楽に包まれる日
オハイエくまもとでは、熊本市の中心地である上通り、下通りや、観光施設である城彩苑など市街地9ヶ所にステージが設置され、たくさんのミュージシャンたちが音楽を奏でます。あちらこちらから聴こえてくる音楽に足を止める街を行き交う人たちも、いつのまにか音楽祭の参加者です。「みんなちがってみんないい」という合言葉通り、ジャンルもさまざま。ピアノ、ヴァイオリン、合唱、高校の箏曲部、マスクをかぶったアーティストによるエレキギターの演奏まで、1日でこんなに幅広い音楽を耳にできる機会はなかなかありません。いつもの街を歩くだけで「みんなちがってみんないい」と体感させられる特別な日なのです。
熊本市現代美術館もステージに 発祥の地・仙台からのゲストも
熊本の中心街にある熊本市現代美術館。いつもは物静かなこの場所も、ステージと化します。社会福祉施設の利用者、特別支援学校に通う高校生、異なる楽団に所属するチェロ奏者のアンサンブル、素晴らしいおじいちゃんを目指す男性による四重奏など、まさに障害のある人もない人も一緒に音楽を楽しむ空間です。この日、ギャラリーでは華人展が催されていましたが、そこに訪れた人々も美術館の真ん中にできた人集りに加わり、少しずつ理解の輪が広がっていきます。
また、現代美術館では毎年、仙台在住「荒川知子ファミリーアンサンブル」の演奏があります。あたたかいフルートの音色を奏でる荒川知子さんは、とっておきの音楽祭のドキュメンタリー映画『オハイエ! 」の主役でもあります。東日本大震災の被災地であり、とっておきの音楽祭の発祥の地である仙台。あの年も仙台では震災からたった86日で、この音楽祭が開催されました。がれきの中で、家がない中で、音楽のチカラを信じ、こんなときだからこそ開催しよう!と熱い想いで開催されたその模様は、映画『オハイエ2』におさめられています。
たくさんの人の力で……感動のフィナーレ
実行委員長であるNPO法人オハイエくまもと代表の入部祥子さんは、多くの人の協力によって成り立っていることに対し、心からの感謝の意を述べました。100団体700人の参加者とそれを支えるたくさんのボランティアスタッフ、皆の協力がこの音楽祭の成功の鍵を握ります。
また、会場にはさまざまなゲストも駆けつけました。生中継で国立療養所菊池恵楓園からの演奏が披露され、ハンセン病の正しい啓発活動も行われました。プロのミュージシャンと、障害を持つ個性あふれるミュージシャンとのコラボは、他ではなかなか味わえない楽しさや感動があります。
最後に各会場の出演者と黄色いジャケットを着たボランティアスタッフが大集合し、テーマソングである「オハイエ!」を合唱する光景は、あたたかい気持ちで溢れており、胸が熱くなります。
この音楽祭は、音楽の力だけでなく人の力、生きる力を体感できます。慌ただしい毎日に見失いがちな大切なこと、何気ない毎日が幸せだということに気づかせてくれる「とっておきの音楽祭」。今年もこれから仙台、ふくしま、かのや(鹿児島県)、丹波篠山(兵庫県)など全国各地で開催が予定されています。
美大生・芸大生のみなさんもぜひ近くの会場に足を運んで、心動かされる体験をしてみてください。そこで感じたものはきっと、制作にも良い影響を与えてくれることでしょう。
▼参考サイト
【映画 オハイエ!2 公式サイト】http://team-ohaie-movies.jp/about.html
【とっておきの音楽祭】http://totteokino-ongakusai.jp/
【オハイエくまもと】http://ohaie-kumamoto.org/
人が好きです。 人と関わることが好きです。 ときめくこと、わくわくすることが好きです。 楽しみ、楽しませるがモットーです。