クリエイターたちが考える“サードウェーブな生き方”とは?LIVING vol.1イベントレポート

誰しも一度は考える「自分の生き方」について。疑問を抱いているのは私たち美大生だけではありません。一人前のクリエイターだって自分らしい生き方を日々模索しながら暮らしているんです。「人々の生き方」「自分の生き方」を考えたい、そんなことに興味があるクリエイターを対象に、以前インタビューで紹介した「株式会社CRAZY」がイベントを主催。ということでそのイベントに美大生ヤマシタフミが潜入してきました!クリエイターたちが「生き方」に向き合い、語り合う様子をお届けします!

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以前紹介した「株式会社CRAZY」クリエイターお二人のインタビューはこちら

インハウスでもフリーランスでもない、
"場所”、"時間"、 "組織"などの枠にとらわれず、
自由にクリエイティブを表現する"新しい生き方"とは?


そんなテーマの下に集まった、職も性別も年齢もバラバラな20人ほどの初対面の人々。
彼らにただ一つ共通していることは、「生き方」に対して強い関心を持っているという事のみ。
でも、そんなたった一つの共通点から話は膨らみ、クリエイティブに関する様々なものの見方や価値観が浮き彫りになっていきます。

〔話し手〕

林 隆三 
株式会社CRAZY 
チーフアートディレクター
インテリアデザイン会社にてオリジナルプロダクトのデザイン・開発、インテリアコーディネートを担当。ゼネラルな能力も評価され、海外の最先端現代デザイナーをより広く認知していくための国内プロモーションを担当。その後、フォトクリエーションを中心した空間ブランディング集団に所属。アーティストのCDジャケットやPV撮影での美術スタイリング、展示会・イベントでの空間演出に従事する中でブランド誕生直後のcrazy weddingに外部アートディレクターとして声がかかり、仕事を重ねる中で本格的に事業に参画。

江連 有美
株式会社CRAZY 
クリエイティブディレクター
2009年、武蔵野美術大学卒業。同年、博報堂プロダクツ入社。 入社2年目に若手の登竜門と呼ばれる広告賞で準グランプリを受賞。職種にとらわれず、企画など根本的な部分から最終的なアウトプットまで一気通貫した仕事をして評価を得る。大手飲料メーカーや保険会社など様々な業種を担当しながら経験を重ね、2014年11月よりデザイナーとして参画。
▼ポートフォリオ
http://cargocollective.com/yumiezure

〔聞き手〕

加藤 晃央
株式会社モーフィング 
代表
「アートをもっと一般の人に広める」ことを事業テーマとし、美術館のPR業務や教育施設でのワークショップを請け負う。しかし、まだまだ一部の限られた人の間でしか、アートは楽しまれていないことを実感し、アートを広める場所を「アート寄りな場所」ではなく「一般寄りな場所」に変更。そして「ARTSY」を編み出す。全国の美大を中心にキャリアデザイン関係の講義やセミナーを多数行うなど幅広く活動。得意なことは、思いつきの行動と、意味のないイタズラ。

会場の株式会社モーフィング(東京都国分寺市)にあるSHARE BASE amata では緩やかに音楽がかかり、集まったクリエイターたちはお酒を片手にソファーに座って談笑をしています。今回のイベント名『LIVING』というタイトル通り、まるでリビングのような雰囲気の中、全員がグラスを手にしたところで、司会による乾杯の音頭。
乾杯!!!!!

ーサードウェーブな生き方と富

司会 「今、生き方や働き方を考える機会が多い中で、そういうことが所謂ビジネス職なんかに多いと思ったときに、もの作りやクリエイティブに携わる人はどのように考えているんだろうという話から、じゃあクリエイティブ関連の人を集めて、そういう話をしてみたら面白いんじゃないかという話になったのが、今回のイベントのきっかけです。
そこで、最近よくサードウェーブっていう言葉を耳にすることも多いと思うんですけど、インハウス(企業に所属すること)が主流、フリーランス(個人で仕事をすること)も増えてきた中で、その一歩先の新しい働き方が出てきているんじゃないかと感じています。
これについて、サードウェーブが主流なポートランドのことを研究している松本大地さんという方がいらっしゃるんですが、この方は
『富のイメージが変わったということは、ひしひしと感じます。『富=お金や名誉』ではなく幸せな暮らし、楽しい暮らしが富という風に変わってきています』
という風におっしゃっていて、このように富の評価軸、判断軸が変わってきていると言われる中で、今日は『クリエイターにとっての富とは?』というテーマで進めていきたいと思っています。
もの作りをされている方にとって、働くことだけじゃない、ライフスタイルの中での富って一体何なのか?知ろう、そして一緒に考えようということで、無茶ぶりもあるかと思いますが、よろしくお願いします!」

さぁ、トークセッションの始まりです。株式会社CRAZYの林さん、江連さんと、株式会社モーフィングの代表を務める加藤さんの自己紹介が行われ、まずはCRAZYのお二人の仕事に関わる事情を紐解いていきます。

ーなぜ今の働き方を選んだの?

加藤 お二人はなぜCRAZYにジョインすることになったんですか?」

 「学生の頃は建築の勉強をしていて、その中でインテリアに興味を持つようになってインテリアの仕事をしたいと思うようになりました。
でも始めは建築の仕事から始まってその後、インテリアの会社に勤めることができました。そこでデザイン以外のプロモーションだったりとか、多岐に渡った仕事をさせてもらって、デザイン以外の仕事の面白味を知る事になりました。
その中でも特に、スタイリングという仕事に触れてとても面白いなと思うようになり、その後勤めた制作会社でPVやジャケットの美術のスタイリングをするようになりました。そこで、今のCRAZYの外注のパートナーとしてWeddingのスタイリングの仕事を一緒にするようになるうちに、声をかけてもらってジョインしたという感じですね。」

江連 「私はCRAZYに入るまで、六年半くらい広告制作会社でデザイナーとして、主に大きな企業の広告制作をやっていました。前の会社では口を開けて待っていればどんどん良い仕事が入ってくるような状態で、自分も努力すれば認められてキャリアアップできるような状態だったんですが、それでいいのかなって考えていたら、たまたまCRAZYの募集を見つけて、一から立ち上げができるということで。今までにそういう経験がなかったので、挑戦してみたいなと思ったんです。
そこで元々友達だったリュウちゃん(林さん)がCRAZYに入ったっていうのを聞いて、話してみたら面白いと言うので、それならばと思ってジョインしました。」

加藤 「会社が成長するにつれて必要になったポジションに、途中からお二人は入られたわけですね。それについての期待はありましたか?」

 「ありましたね。もちろん責任も大きいですし、それこそ自分で作っているという感覚もありましたし、まだ認知されてないブランドだからこそ自分がやらなきゃっていう感覚が大きかったと思います。」

同じクリエイティブ職といっても、その仕事内容も仕事環境も様々です。
ここからは各自の社内環境や労働の環境に迫ります。
仕事の現状を踏まえての理想とは、どんなものでしょうか?
様々な業種に就いているゲストの方々の働き方にも、踏み込んでいきます。

ー働くことにおいて、理想の環境とは?

司会 「もの作りに関わる方に聞いてみたいのが、クリエイターの方だけの少数精鋭で仕事をやると、すごく話のスピードが早かったりとか、理解度が高くてやりやすかったりするのかなと。逆にCRAZYみたいなデザイナーが少ない環境でやるのとではメリット・デメリットってどんなものがあるんですか?」

 「僕はそれこそ、同じ職種の人間だけが集まるような場所でずっとやってきたので、今の環境が新鮮ではあるんですけど、それぞれ特徴はありますね。個人的な感覚として、同じ職種の人間が集まるとライバルになるんです。もちろん切磋琢磨することにも繋がるんですけど。目指している方向がわかりやすかったりとか、同じ言語を使っているので話も早くなります。
逆に違う職種の人間が集まる今のような環境だと、使っている言語が違う。文化も全然違うし、でも、だからこそできることが増える。新しい発想とか今まで自分にはなかったものが取り込めるっていうのがすごく面白いと思うし、知らないからこそできること、新しい可能性や革新的なことが生まれてくるのかなとも思います。」

加藤 「役職やチーム、部署ごとに働き方は変わるものですか?」

 「基本的には個人で違っていますね。」

ー働き方のサイクル、クリエイティブ現場のリアル

ここからはゲストの方々も巻き込んで、働き方についての話題が広がっていきます。美大生の私にとってはまだまだ未知なる、意外な現場での働き方も飛び出しました。

 「出社といえば、みなさんは何時くらいに出社されているんですか?」

加藤 「僕は八時くらいには出社してますね。うちは割と早いです。」

江連 「私の前の会社は一応九時って決まってはいたんですけど、夜が遅いから結局十一時とかに来てました。」

司会 「そもそもフリーランスの場合はどうしているのか気になりますね。」

ゲスト(建築事務所経営者・男性) 「僕は建築事務所で働いていたころは朝は10時くらいからで、帰りは早くて終電でした。でも自分で事務所を開くにあたって、変えていこうかなと思っていたんですけど、もおうやっぱり体に染み付いちゃってて、結構時間の使い方は変わらずって感じですね。でもこれからはやっぱり変えていきたい…」

ゲスト(フリーランス・女性) 「私はフリーランスになってから、当たり前なんですけど、自分が全てを決めています。働く時間も仕事の出来の善し悪しも自分次第なので、自分の管理をするのが難しいなと感じましたね。
自分一人だとついつい夜にはできるしー…とか。どこか自分に甘えが出て来ちゃうところがあって。でも半年くらい経ったときに、自分の中でのルールをある程度決めて、どんなに仕事が無くても一旦朝八時に起きるとか、家にいるときでも気合いを入れるために絶対メイクをするとか、あとは全く打ち合わせのない日には走ってます!」

会場からはすごい!ストイック!という声が。

ゲスト(フリーランス・女性) 「会社にいた頃は、みんなが遅くまでやっているから、仕事があるから、と思って良い意味でも悪い意味でもその流れに乗っかっていくだけで、一つ一つを深く考えていなかったんですけど、今は自分の行動一つ一つに敏感になったかな。っていうのは良かった面だと思うし、難しい部分でもあると思います。」

同じフリーランスとして活動していても仕事への取り組み方は実に様々で、フリーで活動することの難しさが伝わってきます。
それと共に仕事場の環境が自分自身に与える影響についても考えさせられました。
さて、続いては会社に所属している方々の働き方にも迫ります。

ゲスト(広告代理店営業部勤務・女性) 「私は広告代理店で営業をやっているんですけど、就業開始時間は九時一五分で一応三十分前の八時四十五分には仕事を開始できるように会社にはいるようにしていて、帰りは十時前後です。帰りが遅いのは全然気にならないです。仕事をしてたらあっという間に十時になっているし、体内時計ができているので、休日でも七時半くらいには起きますね。」

 「すごい。でももし変えられるとしたら、理想の出社時間とかってありますか?」

ゲスト(広告代理店営業部勤務・女性) 「理想を言うと、九時半くらいに出社したいですね。そのくらいの時間って電車が空くじゃないですか。そのくらいに行って、電車が空くくらいに帰りたい(笑)満員電車が苦手なので。」

会場では納得の声も多く聞こえます。

ゲスト(ディスプレイ会社勤務・男性) 「僕は博物館、美術館などの公共施設のディスプレイを担当しています。出社は九時で帰りはまちまち。大体九時くらいには帰れるかなって感じですね。入社した頃は毎晩終電みたいな日々が続いてたんですけど、そんなときに監査が入ってみなし残業が摘発されて、残業代の関係で帰れるようになりました。」

司会 「勤務時間が減ったことで生産性に変化ってあったんですか?」

ゲスト(ディスプレイ会社勤務・男性) 「そうですね、やっぱり昔よりは生産性が落ちたっていう話は聞きます。人によってはもっと時間をかけてガツガツやりたいって人もいますし、その辺の兼ね合いが難しいですね。」

江連 「クリエイティブ関連のお仕事って、時間をかけた分だけ良いものができるってわけではない部分もあるし、期限はあるから、そこまでにいかに良いのを作るっていうのは本当に難しいですよね。パッと閃いて作ったもので上手くいくこともあるし。」

ゲスト(ディスプレイ会社勤務・男性) 「時間を決めたら、その中で頑張ろうって気が起きたりもしますよね。永遠に時間があると永遠にダラダラやってしまうし…。」

ーサードウェーブに近い?アーティストの活動

ここで登場されたのがアーティストとして活動されているゲストの方です。
仕事や働くという考え方から、再び富や喜びについてのお話に移り変わっていきます。
クリエイターにとっての喜びとは?
クリエイティブを成功やビジネスと結びつけることの難しさを知っているからこその疑問が、納得のいく答えに近づいていく感覚が強まります。

ゲスト(フリーランスのアーティスト・男性) 「作業場に住んじゃえば一番なんですけどね」

加藤 「アーティストの作業場に住んじゃえばいいっていうのは、社員が会社に住むのとはまた違うじゃないですか(笑)」

司会 「でもフリーランスだと、好きな場所で出来るから、さっきおしゃってた理想に近い形だったりするんじゃないですか?」

ゲスト(フリーランスのアーティスト・男性) 「そうですね。僕も割と満員電車に乗りたくない側の人間なので…(笑)」

加藤 「ちなみに他己紹介すると、この方は、ぶつぶつ交換所っていう色んな場所にぶつぶつ交換スペースを作るっていう活動をしている人なんです。」

ゲスト(フリーランスのアーティスト・男性) 「武蔵美の卒業生が捨てていくものを集めて新入生に配るっていう。大学のゼミで地域通貨をつくる試みがあって、それをきっかけにはじめた活動を続けています。」

加藤 「それを一切ビジネスとかではなく、整備して循環させ続けて出張所まで作るという活動をアートとしてやっている方です。ちなみに今日のイベントでも即席ぶつぶつ交換所を作ってもいいかっていう問い合わせを受けていて…今回はTAKE FREEのスペースがあるんです。」

会場の端にある棚にはTAKE FREEと書かれたプレートと、いくつかのドアノブや外国製のワイシャツ、珍しい文庫本など興味がそそられる品が並んでいました。

司会 「そういう活動って実は、お金じゃない富ってなんだろうの答えに一番近いのかもしれませんね。」

 「なるほどー。それでいうと、ゲストさんの喜びって何ですか?」

ゲスト(フリーランスのアーティスト・男性) 「貰い手がついたときですかね。ゲーム脳なのかもしれないです。いらないと思われているものを集めて来て、提供する場所を現実に作りたいという理想がありまして。ドラクエのダンジョンみたいな。
学生もお金がないですし、処分するにもお金がかかる。じゃあそれをタダでお下がりにしちゃえば一石二鳥だと思って。もう本当に国策でやってくれないかと思ってます。」

司会 「でももしその品が教科書だった場合、出版社の利益の問題とかも発生しますよね。お下がりが続いて循環して大きくなってしまうと…」

 「でた、ビジネスマインド!(笑)」

ゲスト(フリーランスのアーティスト・男性) 「うーん、僕は物の値段が安すぎてしまっていると感じているんです。例えば一万円で服を揃えるとして、二千円で一つずつ買うよりも、お下がりで九割揃えたら残りの予算を一つのアイテムにつぎ込んで良いものを買うことができて、より良いんじゃないかなと思って。良いものであれば長く使えるし、さらにお下がりに出すこともできると思うので、そういうのが理想ですね。」

ゲストの方の考え方に、会場からは拍手が巻き起こり、クリエイティブを仕事とするにあたって考えさせられる、利益を出すことの大切さを再確認させられます。
良いものにお金を出すことで、その市場は盛り上がり、より良い物が生まれることもあります。簡単に物が手に入る時代だからこそ、苦労したり、お金を出して物を評価することを惜しまずにしていきたいと強く感じました。
そして、そんな考え方がサードウェーブな生き方に繋がるという意見は、今回のイベントを盛り上げてくれました。

ーゲスト同士が語り合う、自分の理想とする「生き方」

休憩を挟んで後半は大きな円の形になって、ゲスト各々の細かい自己紹介からスタート。
自己紹介を進めながら自分が聞きたいこと、話したいことを共有し、その後は「自分自身について」「仕事について」「世の中について」大きく3つのグループに別れてのトークが始まります。

まだ確立していない「サードウェーブな生き方」について「枠に囚われることのない仕事を持つ事」「仕事を楽しむこと」「今置かれている環境を壊して新しい物に触れることで近づけるんじゃないか」「人間らしく生きることがサードウェーブに繋がると思う」など様々な意見が飛び出し、イベント終了後も話は尽きることがなく、大盛況で幕を閉じました。

物作りを資本とするクリエイターが「生き方」を語る上で、切っても切れない「仕事」と「富」についてを語り合い、クリエイターは何を提供し、何を得て生きていくのかを突き詰めていった今回のイベント。
まだ確立していない「サードウェーブな生き方」を定義するのは難しいことですが、企業に所属して働く人、フリーランスで働く人が、こうして一つの場で語り合うことがきっかけとなって、第三の生き方が切り開かれ、体現されていくんじゃないかと感じました。
「サードウェーブな生き方」が私たちの近くで実現される日は、そう遠くないかもしれません。

LIVINGは今後も開催予定。その他イベントや生き方にまつわる情報は株式会社CRAZYによるニュースレター「TOUCH THE CRAZY」にて配信します。
詳細・登録はこちら

株式会社CRAZY
http://www.crazy.co.jp


執筆 ヤマシタフミ

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