【ぼくたちのリメイク】人生やりなおしができたら、どの瞬間に戻りたいですか?

2021年8月17日(火)

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7月から始まったこのアニメはご存じですか。
TVアニメ「ぼくたちのリメイク」公式サイト


簡単にストーリーを説明すると。
2016年、一般大学経済学部卒の主人公・恭也(28歳)は、ディレクターとして頑張っていたゲーム会社が倒産し無職になってしまう。奈良の実家に帰る途中、クリエイター業界で同世代が「プラチナ世代」として活躍してる記事を見つけ、憧れと人生の虚しさを感じていた。
すると実家で10年前、記念受験した大中芸術大学映像学科の合格通知が出てくる。
「もし自分が10年前に一般大学じゃなく芸術大学の映像学科に進学してたらどうなってたんだろう?・・」
と考えながら寝て目覚めると、2006年にタイムリープし、大中芸術大学映像学科に進学した18歳の自分になっていた・・という話。
一言で言っちゃえば、「もし自分が美大に進学していたら」のタイムリープもの、転生ものってことですね。人生を「やり直す」から「リメイク」ってことです。


手羽はこのあらすじからイメージするものが3つあります。
一つ目は、 あらいぴろよさんの実話コミックエッセイ「美大とかに行けたら、もっといい人生だったのかな。」

宣伝アカウント
「『売り込みとかガツガツするのダサい』『才能があれば誰かが見つけてくれる』。一歩踏み出すこともせずに、イラストレーターになる夢が叶わないことを、運や世界、他人のせいにして妬んだり憎んだりしているアートクズにこそ読んでほしい」
とも書いてあるんで、「今の地味な人生が嫌で、美大に進学し、華やかな人生を夢見てる人の話なのかな。それともテクニックがないことを後悔し、美大でしっかり学びたかった、と思ってる人の話かな?」と想像しちゃいますが、内容は全然違います(笑)

そういう話を求めてる人にはお勧めしませんが、前半がデザイン業界の裏事情や同僚とのバトル話、後半は精神世界やむかついた時の思考サイクル実践法で、面白いです。
 

 
二つ目は「大中芸術大学」から、

もちろん大阪芸術大学
大阪芸大がモデルで、アニメでも協力されてます。

手羽は2014年に大阪芸大さんを訪問してて、


  • 2014年に手羽が撮影


  • 2014年に手羽が撮影

コンクリ打ちっぱなしや号館名表示、鉄サッシの感じがムサビにそっくりだったのが印象的でした。
特徴的な建物ばかりで、一度行くとすぐに「あ。あれは」とわかっちゃう建物が多いんですよ。
例えば

メインビジュアルの背景に出てくる建物も

「体育館とか食堂が入ってる建物だなあ」とすぐにわかりました。
でも行ったのは2014年でもう7年前。

2017年にできた妹島和世さん設計のアートサイエンス学科の建物を早くみたいんですよね。いつ行けるかな・・コロナで難しいのもあるけど、フラっと行くにはちょっと遠くて・・。


で3つめは「大阪芸術大学映像学科」「プラチナ世代」だと、もちろんこれ。

実写ドラマにもなった島本和彦さんの「アオイホノオ」です。
島本さんのほぼ実話漫画で「1980年代の大作家芸術大学 映像計画学科」が舞台なんですが、リアルに同級生や先輩に庵野秀明、山賀博之、赤井孝美、武田康廣、岡田斗司夫がいたっていうんだから、まさにリアルプラチナ世代。

近いところだと、CMディレクターで東北新社社長・中島信也さんのムサビ視覚伝達デザイン学科同級生が、みうらじゅんさんと工業デザイナー・奥山清行さん、クリコーダーカルテットのリーダー・栗原正己さんで、中島さんとみうらさんは隣のアパートに住んでて、栗原さんのアパートにはデビュー前の岡村靖幸さんが居候してた・・って話かな。
 

 
タイムリープする2006年は、まだスマホがなくガラケーの時代で、アニメだと「銀魂」「コードギアス 反逆のルルーシュ」「涼宮ハルヒの憂鬱(第1期)」、サービスだと12月にニコニコ動画がスタートした年。
アニメの中でiPhoneがあればあっさり解決しちゃうトラブルだったり、ニコ動やハルヒが効果的に使われていて(「それをやりたいがためにその恰好だったのか!」とか)、当時の文化を思い出しながら見るのも楽しいです。

10月からは美大アニメの大本命がスタートするし、
TVアニメ『ブルーピリオド』公式サイト

2021年は美大への注目が続きそう。
美大に刮目せよ!
 

 
で、書きたかったのはここからなんですが(えっ)

アニメ見ながら「人生やりなおしができるとしたら、自分はどの瞬間に戻りたいか?」と考えてみたんです。皆さんはそういう「戻りたい人生の転換点」ってあります?

手羽は・・・実は思いつかないんですよ。
「ああ。あの時こうやってればよかったああ」というプロジェクトベースの後悔はたくさんあります。「あの人にこう説明すればよかった」な反省はいっぱいあるし、やり直しができるなら卒業制作は全然違うものを作りたいし、石岡瑛子展に行きたかったし。

ただ人生の決断に関係するところでは思いつかなくて。
最後までE判定だった進学校の選択、美大への進路決定、ムサビへの進学、大学職員へ就職、結婚、家購入とあまり悩まずに決め、その選択が間違った気もなく。「美大ではなく一般大学に進学してたら、つまらない人生になってただろうなあ」とか考えちゃいますもん。
このポジティブさが手羽の売りです(笑)

あ、唯一「一浪して東京藝大目指してたらどうなってたんだろ?」かな。
現役で東京造形とムサビに合格し、ムサビを選択しました。ムサビを選んだこと、タマビや東京藝大を受験しなかったことは全然後悔してませんが、画塾の先輩から「手羽なら一浪したら東京藝大いけるかもね」と言われて、3日間ぐらい「ムサビを蹴って浪人しようかな・・」と悩んだ時がありました。
画塾の先生から「田舎で藝大浪人するぐらいなら、早く東京の私立へ行け!」と言われ、浪人の選択肢をばっさり捨てたけど、あの時先生からアドバイスされなかったら、・・・というのは考えちゃいます。
ま、1浪したら2浪してた気がするんで、現役で東京に行って大正解でした。このポジティブさが(以下略)


美大進路選択では、最初に「先生の壁」があると言われてます。
「美大に行きたい」と思った時、美術の先生は非常勤講師だから進路の先生に相談すると「やめとけ」と言われる可能性が高い。
ただ、美大の知識があるから「やめとけ」ではなく、わけわからないから「やめとけ」なんですよね。そのレベルで美大進学をあきらめさせられてる現状があります。
もちろん学費の高さとかいろいろハードルありますが、「ぼくたちのリメイク」の主人公も、もし親身に考えてくれる美術や進路の先生がそばにいたら、タイムリープなんかせず映像学科を選んでいたんじゃないかしら。


以上、9月にいくつかプレゼンしないといけなくなって、スライド作りに入るから更新頻度落とします、の手羽がお送りいたしました。
安請け合いしすぎちゃった・・・後悔・・・。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。