【ぷっちょ しば漬け味】美術大学の産学連携で商品化されたもの

2020年5月20日(水)

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先日の記事で確かにこう書きました。
【DAY3】7DAYS BOOK COVER CHALLENGE 手羽の場合
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「●●大学出版局 発行」とかじゃなければ、多分市販されてる本で表紙か背表紙に芸術系大学名が出てくるのはこんなもんなはず。
あ、他に「京都ゲイタン物語」があるけど、これは京都芸短改め京都造形芸術大学改め京都芸術大学、通称瓜芸さん関係者が贈呈してくれると思って購入してません。
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普通の大人なら聞き流す冗談ですが、

瓜芸の吉田大作さんが真面目に送ってくれた(涙)
この行動力がさすが吉田さん。
これじゃ瓜芸の悪口が書けな(略)

京都ゲイタン物語はちょうど手羽の学生時代と同じ頃の話でした。「そうそう。この時代はこういう人が美大にいっぱいいたいた」な話満載。
また、自分もそうだったけど、美大に入っての一番の悩みは「普通(自分)と天才(誰か)の差は何か」ってことで、「自分以外はすごい才能の持ち主ばかり集まっているんじゃないか」「自分の作風がありきたりじゃないか・・って悩み自体ありきたりじゃないか」「美大では自分を出さないと負け」「自分独自の視点を出そうとして奇をてらって失敗」等多くの美大生が通りそうな道も書かれてます。

・・・って感想文はいいんですよ。
吉田さん、そこに座りなさい。
この一緒に送られてきた「味わいぷっちょ しば漬け味」はなんですか。
それはこれをちろっと宣伝しろってことですか?そんなに世の中は甘くないっすよ。

おもいっきり宣伝してやりますよ!!

「あじわいぷっちょ しば漬味」は2019年11月に京都造形芸術大学(現 瓜芸)とUHA味覚糖株式会社、株式会社西利の共同開発で生まれた近畿地方限定ぷっちょ。
美大ネタまとめでも何度か紹介してきました。

さっそく一口。パクっ。
匂いはしば漬けそのもの。口にいれると、しば漬け・・というよりも小梅ちゃんに近いかな?でもおいしい。京都の伝統的な漬物「すぐき」から発見された植物性乳酸菌「西利乳酸菌ラブレ」も入っているそう(説明文そのまま)
うん。京都土産はこれで決まりだね!

瓜芸とUHA味覚糖さんとの連携プロジェクトはしば漬けぷっちょが第2弾で、最初は
UHA味覚糖『selfie-ma のど飴』

京都市動物園の人気動物を活用した「selfieーma」です。


多くの美大がそうだと思いますが、企業からの産学連携依頼のほとんどが「パッケージデザインをしてほしい(企画はこっちで考えるんで柄だけ美大生の若いセンスで作って)」なんですね。
「いや、『デザイン』ってそういうことじゃなくて・・」と説明するところから始め、「コンセプト構築、中身や販売戦略含めた産学連携プロジェクト」までたどりつけるのはごく一部で、それは企業さんの理解・・だいたいは社長さんなど偉い人が『デザイン』を幅広く考えられる人・・がまずありますが、そこまで話をもっていく産学連携スタッフの説明力や学生を引っ張っていく教員の指導力のの塊だったりします。
正直相手が希望する通りのパッケージデザインだけやって「〇〇会社と産学連携やりましたー」と宣伝する方が楽なんだけど、そこにどれくらい学生さんの学びがあるのか、ってところで。

瓜芸さんといえば、最近だと
「ホールラブキョウト」 鼻緒シューズが人気 | 繊研新聞

スニーカーに鼻緒をつけた「hanao shoes」が話題になっています。
記事を読むと、もともとはディスプレイ用に作ったものだったんですね。話題になって商品化の声がかかった・・・というある意味大学や作者からすると嬉しいケース。
2018年に京都家族旅行した時に奥さんがたまたまディスプレイを発見して「これすごいね」と言って手羽は「ちっ」と舌打ちしましたが。


と、これで記事が終わったら「手羽はプレゼント一つで勝手に美大を宣伝してくれる」と思われるのもアレなので、・・・いや、プレゼント一つで動きますけど・・・美大愛好家ですし、いい機会なので「商品化された美大の産学連携」をまとめてみました。
転んでもタダでは済ませない。

「産学連携」と一言でいっても、いくつかの種類があります。

横浜美術大学が企業と合同でコンペ開催、商品化へ

学内でデザイン募集しコンペを行って採用されるケースも「産学連携」の一つ。
手っ取り早くアイデアを集めることができるので、企業さんもこのパターンを希望することが多いです。ただ、チャンスは生まれるけど「学び」という点ではどうなのか、このかかわり方で「産学連携」と言ってもいいのか、という問題点もあって。


コロナで一番注目を浴びた産学連携は間違いなくこちら。
シヤチハタ株式会社×名古屋芸術大学産学連携ワークショップ 学生のアイデア提案が商品化されました

シヤチハタさんとの産学連携ワークショップで生まれたアイデアを商品化したケース。
産学連携は3,4年生が担当することが多く、商品化までに時間がかかるから、商品化された時には学生さんは卒業してた・・ってこともよくありますね。


飛び込みで産学連携依頼されることもあれば、教員のつながりで生まれる産学もあります。
こちらが典型例かな。
タナカカツキ、キタンクラブが学生とコラボ カプセルトイ「漬物マグネット」誕生秘話座談会

京都精華大はワコールさんと連続して産学連携ワークショップをやっていて、そこからいくつか商品化されてます。ちなみに「女子大生が」とタイトルについた方がメディア受けがいいけど、実際は男子学生が作ったものもちょいちょいあります。


記事だけではわからないのが、
文化学園大学|【国際ファッション文化学科】学生デザインの水着が商品化

産学連携授業などの一環で生まれたデザインなのか、個人で申し込んで採用されたのかはっきりしないんですよね。どっちだろ?


また、企業が広報戦略としてやってるケースもあり、
大阪芸術大学コラボ「ランチパック(オムライス風)」特設サイト

山崎製パンの協力のもと、約10カ月に渡り新風味の提案や試食、商品パッケージデザインなどを行い、大阪芸大バージョンの「ランチパック」を作っています。
ただ、「ランチパック ●●大学バージョン」はあちこちで出ていて、いわゆるご当地キ〇ィちゃんみたいなもので・・。


面白いパターンだとこういうのもありますね。
長岡造形大学|本学学生がデザインした鉄道が、模型として商品化されました

バスや電車のラッピングデザインも最近依頼が多く(広告が減ってるってことなんでしょうが)、それ自体は珍しくはないんですが、地域連携型授業でラッピングデザインをやったえちごトキめき鉄道「3市の花号」が、好評につき鉄道模型としてそのまま商品化されたケース。

UHA味覚糖さんは瓜芸の姉妹校である東北芸工大ともやってます。
東北芸術工科大学|UHA味覚糖×企画構想学科コラボ企画商品 「cupita(キュピタ)」


東北芸工さんといえば、建築系でこういうのもあります。
無印良品の家と建築・環境デザイン学科が連携都市型住宅『縦の家』がリリースされました。

こちらはグッドデザインも受賞してますね。
ところで今年のグッドデザインの審査はどうやるんだろ?


手羽が「美大らしいアプローチだなあ」と思うのがこちら。
東京造形大学|幼児用クレヨンの開発

今回紹介する中では一番好きかも。

東京造形大は個人的に羨ましい、美大としても目指してる結果を出していて、
防水シートプロジェクト

受託研究で大学と会社が共同名義で意匠登録しています。
パっと見、地味な産学連携に見えるかもしれませんが、このシートが使われるごとに大学にもお金が入るってことなんですよ。多分。
「デザイン」で特許などを取ることがなかなか難しく、美大の産学連携では理系のように儲けにくい構造がどうしてもあります。手羽が目指してるのはこのパターン。

 
「日本で一番生産された『大学ロゴ』の入った産学連携商品」だとこれかもしれません。
産学共同研究「第一パン・ブランドイメージプロジェクト」 本学学生のデザイン提案による新パッケージ商品

「大学特別枠でスペシャルな●●味のデザインしました!」ではなく、普通にスーパーで普通に売られてる商品のブランドデザイン→パッケージデザインをムサビ芸術文化学科が産学連携でやったんです。第一屋製パンのこのパンを見たことない人はいませんよね?
3か月後ぐらいに出荷数を聞いたら1億個超えてました。その後は怖くて聞いてません・・・。

最近だと、
サミット・エコバッグデザインプロジェクト

こちらも最初は「エコバックの柄やイラストを考えてほしい」という依頼で、エコバックの形自体を変えることになるとはサミットさんは思ってなかったはず。根気強く交渉した西中先生や社会連携スタッフの賜物。と、もちろんムサビの宣伝もぶっこんおきました。

ただ。
「美大産学連携の大成功パターンは何か?」と聞かれたら、手羽はこれを答えちゃうかな。
ネスレ×多摩美の共同研究 コーヒーマシン「TAMA」発売

日本で一番売れているコーヒーマシン”のプロダクトデザインをタマビのプロダクトがやっています。ほんとこのマシンはあちこちでみかける・・。

なんせ商品名が「TAMA」だもん。もちろん「玉」からきてるんだけど、普通そこに大学名を連想する名前をつけるか?と。遠慮ねーな、と。
ムサビだと「MUSA」になっちゃうから、どう転んでもムサビは真似できないんですよね。「せいぜい『舞う』ぐらいかな?・・」といつもこのコーヒーマシンを見ながら妄想してます。
動画も張り付けておこう。

吉田さん、こんな感じでよろしいですか?


以上、

この数日で、うちの保護猫ちゃん二匹(「金太郎くん」と「ひよりちゃん」)が急激に仲良くなって、二匹そろって常に自宅警備してくれてる手羽がお送りいたしました。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。