本につられて~四畳半と怠け者と鴨川デルタ~

本を読んだ。見森登見彦さんの『四畳半大神話系(角川文庫)』だ。 京都を舞台にした話でとても面白かった。影響を受けやすい私は次の日京都に向かった。目的は一つ、鴨川デルタを見るために。

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『高野川と加茂川に挟まれた逆三角形の領域を、学生は「鴨川デルタ」と呼ぶ。』(四畳半大神話系より引用)


  • (Googlemapより)


冴えない大学3回生の主人公は、バラ色のキャンパスライフを想像していたが、それとはほど遠い現実を突き付けられる。四つの並行世界で毎回違ったサークルに入り、ドタバタ劇を繰り広げるのだ。著者見森登美彦さんの小説は幾つか読んでいるが、今回は特に私のツボに合った。大学になじめていないのが共感できる。

私の頭の中では登場人物達が京都を楽しそうに駆け回っていて、実に愉快であった。ただ一つ、何度も登場する『鴨川デルタ』がどういう場所なのか分からず気になって仕方がない。ぼんやりとしか想像出来ず、鴨川デルタのシーンだけがモザイクにかかった背景になり、幾度も登場するだけになんだかやり切れない。



『今夕も鴨川デルタを大学生たちが占拠して賑やかである。』(四畳半大神話系より引用)



一体、京都の大学生はどこで騒いでいるのだろうか。
次の日、朝一番の電車に乗った私は鴨川デルタを目指した。
私は影響を受けやすい。いつも反省する点である。

京都へは家から電車で一時間ほどで行くことが出来る。鴨川デルタも京都の中心である河原町からバスや電車で直ぐに着く事が分かっていたので、軽いピックニック気分で向かった。しかし、河原町に着いてから一時間経っても私は同じ場所を彷徨っていた。その理由は簡単だ。バス停があり過ぎてどのバスに乗ればいいのか全く分からなかった。


やっとの思いで乗り込んだバスの中で、何をしに来たんだろうとぼんやり思った。一人旅にノスタルジックは付きものだ。せっかく乗ったバスだったが、うじうじした気分のせいか歩きたい気分になり、北野天満宮辺りで途中下車をしてフラフラ歩いた。

すると小さな神社に辿り着き、そこでとても綺麗な枝垂桜を見ることができた。少しだけ気分が良くなった。

『ほんの些細な決断の違いで私の運命は変わる。日々私は無数の決断を繰り返すのだから、無数の異なる運命が生まれる。』(四畳半大神話系より引用)

その後、無事に鴨川デルタに着いた。無性に感動した。私は鴨川デルタの逆三角形の場所に立って、ああ、ここが四畳半大神話系に出てくる鴨川デルタで、登場人物達と同じ景色を見ているのだと思った。

そして私が訪れた日が偶然にも近所の大学生の入学式であったため、大学生達が大勢いて、本の内容と同じように賑やかだった。ギターを弾いて仲間と歌をうたっていたり、川に向って抱負を叫んでいたり。とてもいい景色が見れた。いつかここを舞台に、この青春の景色を何かに書いてみたいと思った。

私は影響を受けやすく、後先を考えずに様々なものに手を出してしまう。時々反省する事もあるが、何にでも興味を持ち、行動を起こす事が出来るのも今の自分であり、経験は必ず糧になると信じている。

たまにはお気に入りの本につられて、日常とは違う場所へ冒険に出てみるのも悪くない。

参照元:【 web KADOKWA】 四畳半大神話系ページより
【URL】http://www.kadokawa.co.jp/sp/201003-05/

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STUDENT WRITER

遊佐 愛生 / Yusa Aoi

絵を描くこと、本を読むことが大好きです。様々なサブカルチャーに興味を持っています。よろしくお願いします!