年末の話に戻します。
2018年12月28日、
手羽は東京大学本郷キャンパスにいました。
目的地は赤門横にある
伊藤国際学術研究センター。
「伊藤」の名前が付くのは、イトーヨーカ堂やセブン-イレブン・ジャパン、デニーズジャパンの創立者であり、セブン&アイ・ホールディングス名誉会長・伊藤雅俊さんからの寄附によって作られたからで、伊藤さんは東大出身ではありませんが東大の社会連携と国際交流拠点づくりに共感して寄付されたそう。うらやましい・・。
その地下2階にある
伊藤謝恩ホールが今回の会場となります。
で、何しに来たかというと、
Mono-Coto Innovation 2018決勝大会が観覧するためです。
え。Mono-Coto Innovationを知らない?
はい。手羽も観覧申込するまでその存在さえ知りませんでした・・。
主催は2015年設立の(株)Curio Schoolさんで、一言で説明するならば「企業の課題に対して中高生がチームでデザイン思考を学びながらアイデアを考え、プロトタイプを制作し、その創造力を競い合うプログラム」です。
美大業界人にはもう少しわかりやすい説明があるんだけど、それは後で。
おおお、企業がいっぱいバックについてる。
手羽がこのイベントを知ったきっかけは、minnaの長谷川哲士くんが何かの審査員をするっていうのをSNSで見かけ「これはチェックした方がよさそうなイベントだな」と思い、そのまま観覧ボタンをポチっと押した、と。実は詳しくは知らず、上記赤文字ぐらいの情報だけで会場に足を運んだのです。
なので会場について真っ先にやることは・・えーと、えーと・・・
いたいた!間違いなくあの頭は長谷川くんだ。わかりやすい(笑)
場といい主催メンバーといい、明らかに美大グルーピングじゃない人ばかりだから、こういう時ってアウェー感がすんごくあるんだよね。近寄って「ひとりぼっちじゃないからね。応援してるよ」と声をかけてあげました。
Mono-Coto Innovation 2018決勝大会までの流れを説明しましょう。
500人を超える中高校生の応募の中から、東京予選大会(8月10日~14日の5日間)と山形予選大会(7月30日~8月1日)に275人の中高生が参加し、その場でチームが作られ、チームビルディング、デザイン思考などを学びながら企業からのお題に対しプレゼンをします。
山形大会だと本田技術研究所、めっき加工業の「ジャスト」、菓子メーカーの「でん六」の3社がテーマ企業参加していて、例えばジャストさんからの出題テーマは「ダイヤモンドと『めっき』という魔法で新たな価値を創造しよう」といった感じ。
説明シートはこちら。
Mono-Coto Innovation2018 株式会社ジャスト テーマ課題 from curioschool
中高校生がこの説明を理解できるっていうんだからすごい・・。
そして東京大会から5チーム、山形大会から3チームが選ばれ、約4か月間、企業の方がメンターにつきブラッシュアップしながら、晴れてこの決勝大会を向かえた、と。
んで、プレゼン、そしてプロトタイピング展示の撮影NGだったので、ここからは主催者公開の写真を使わせてもらいます。
その他の審査員はワンファイナンシャル株式会社CEOの山内奏人さん。
山内さんは2001年生まれの高校生(!)で、「レシートを買い取るiOS向けアプリ『ONE』を開発した人」「1億円の資金調達をし、『未来の孫正義』と言われてる人」と説明するとわかる人も多いかな。
そして最後の一人は主催者でもあるCurio school 代表取締役 西山 恵太さん。
2015年にグリーンズの記事に登場されてますね。
■”デザイン思考”を当たり前の習い事に! モノコトシンキング西山恵太さんに聞く「子どもの創造力の伸ばし方」
そうそう。Mono-Coto Innovationは2017年グッドデザイン賞を受賞してます。実は旅するムサビプロジェクトと同じ年に同じ分類で受賞してるんですよ。全然気が付かなかった・・。
会場の様子はこんな感じ。
スポンサー企業や保護者、先生、夏プログラムに参加してた中高校生が占めてたかな?
今までサラっと書いてきましたが、メンバーには中学生も含まれているんですよ。上記写真の二人も中学生です。
これがびっくりで、あかりちゃんが1年後にこんな人前でプレゼンをしてる姿は全然想像できない・・。
「こういうイベントに参加するって意識高い子達なんだろうなあ」と思ってたけど、手羽の後ろに座ってた高校生が「この前、学校に来た人が『ビジネスオリガミ』を使ったワークショップをやってくれてヤバかった」と話してて。
「Business Origami」とは日立製作所さんが社内開発した発想支援ツールで、サービスデザインのモノ・コト・ヒトの流れを可視化するツールとでもいいますか。詳しくはこちらをご覧ください。
■アイデアを誘発・協創する:「Business Origami」:研究開発:日立
夏にやった日立×ムサビ共同アイデア創出ワークショップでも使いました。
日立さんを呼んで「サービスデザイン」をしゃべってもらうんだから生徒が、というより高校自体がかなりデザイン思考などの理解が高いんでしょうね。
出場者の学校サイトを見たら、例えば、
■Mono-Coto Innovation 2018 創造力の甲子園 決勝大会出場 - 山形県立 東桜学館 中学校・高等学校
「デザイン思考」は、本校の未来創造プロジェクト(総合的な学習の時間の名称)に取り入れ、生徒全員が学んでいます
と書いてあったりね。
企業さんがサポートに入ってるから、例えば本田さんがプレゼンに合わせて自立式(風)ロボットを作ってくれたりします。これもすごい。
全チームのプレゼンが終わり、
審査の間は、これまでMono-Coto Innovationに参加した方によるトークショー。
左の鷲田るみさんは現在中学3年生で、今年起業してるんです。すごすぎる・・・。
そしていよいよ結果発表。
3位はでん六豆チーム。
でん六豆への愛情が伝わってきたし、プロトタイプのパッケージもよくできてたんで、個人的にはこのチームが1位でした(笑)
2位は本田技術研究所のチーム。
そして栄えあるグランプリは・・・
優勝チームは、副賞として4泊6日のシリコンバレーツアーが与えられ、シリコンバレーにある企業の見学の他にスタンフォード大学で決勝大会時のプレゼンを英語で実施して、現地の学生からフィードバックを受ける機会が設けられます。このあたりは大学主催じゃ思いつかない発想。
ここまで読んで気が付いた方も多いと思いますが、「企業からのお題に答える学校シャッフル(中学生も含む)のデザセン」が美大関係者には一番わかりやすい説明かもしれません。
デザセンとは東北芸術工科大学さん主催の「全国高等学校デザイン選手権大会」の略で、25年前にムサビ長澤学長が作った大会です。
■全国高等学校デザイン選手権大会25周年に寄せて|「デザセン」という名のイノベーション 武蔵野美術大学学長 長澤忠徳
手羽も一度決勝大会を見たことがあります。
デザセンからうまく方法論を持ってきてるところもあれば(東北芸工さんや山形大もパートナーに名前がありました)、うまく改良してるところも。
違いは「学校シャッフル状態のチームを合宿で作る」「企業からお題が出る」「プロトタイピング(モノ)重視」で、学校・・どころか地域も全然違うから、決勝に向けたブラッシュアップのミーティングも大変なはずで、ファイナリストに直接聞いてみると、予選大会後、1週間に2度チーム内で、2週間に1度企業メンターとスカイプなどを使って打ち合わせをしてきたんだって。
1度みんなで集まったそうだけど、それだけでこの最終プレゼンができちゃうんだから、今どきの中高校生はすごい(こればっかり)
また参加男女比を見ると、デザセンの男女比が3:7なのに対し、Mono-Coto Innovationは6:4。
これは恐らく美術系高校ではないところから多く参加してるってことであり、どんなに美大が「デザイン思考」といったところで「美大主催」である以上、この壁が変えられないのかもしれません。(でも決勝大会見ると女性の方が多かった)
ほんといろいろ勉強になったイベントでした。
一番勉強になったのは「こういうイベントでは司会はプロにお願いした方がいい」かも。やっぱり盛り上げ方が違う。
きっかけを作ってくれた長谷川くんありがとう。
以上、プレゼン・展示の撮影NGだったからスマホには
長谷川くんを撮った写真しかなかった手羽がお送りいたしました。
次の更新は火曜日を予定してます。
卒展スケジュール一覧を出すので、月曜中までにまだ公開してない大学さんは情報を出してもらえると助かります・・。そして連絡いただけるとさらに嬉しいです・・。
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。