つくり手の体温が感じられる媒体だから。ー日本最大級のフリーペーパーイベント運営スタッフに聞いたその魅力ー

専門店が全国でオープンしたり、数々の企業がデザイン性の高いものを発行していたりと、ここ数年盛り上がりを見せているフリーペーパー。そんな中でも、特に学生が制作しているものに焦点を当てたイベントが毎年開催されていることをご存知ですか?「Student Freepaper Forum」(以下、SFF)と題するこのイベントは、学生が代々入れ替わりながら13年間運営してきたそう。制作者と一番近い立場でフリーペーパーに携わっている彼らに、その魅力について聞いてきました。

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儲からないのに作る、フリーペーパーの凄み

ーー13年間続いてるイベントってすごいですね。しかも代々学生が運営していると。

工藤:そうなんです。「学生フリーペーパーを文化に」という理念の基で、2013 年まではコンテストを、2014 年からは学生フリーペーパーの祭典を開催しています。今年で13年目で、わたしが今年の代表をしています。学生が運営しているということで、毎年メンバーがガラリと変わるんです。

池田:ぼく以外の3人は去年から引き続き2年目で、ぼくは今年から加入しました。去年からやっているメンバーはこの3人しかいなくて、他のメンバーは全員今年から参加しています。

工藤:毎年メンバーやイベントのコンセプトは変わるんですが、基本ミッションである“フリーペーパーというメディアを軸に学生と社会を繋ぐ交流拠点をつくること”は変わらず、13年間ずっと続いています。

ーーそもそも皆さんは、いつからフリーペーパーに興味を持ち始めたんですか?

工藤:フリーペーパーを読み始めたのは、去年のSFF以降ですかね。やはり去年のイベントでの経験が大きいです。

中澤:今では「学生フリーペーパーが何たらかんたら」って語ってますけど、恥ずかしながら去年のSFFまでは全然知らなくて。そんなに読んだこともなかったんですよ。本はもともと好きですごくたくさん読んではいたんですけど、フリーペーパーってあまり身近ではなくて。

工藤:先輩とかはすごく詳しかったのに、1年目だった私たちは何にも知らなくて(笑)でもイベント当日の合間時間にブースを回れて、その時に初めてちゃんと色々実際に手に取って見ることができて。すごく感動しました。こんなにすごいのかって。

中澤:くどまり(工藤)なんて、持って帰れないくらいフリーペーパー抱えて、すごい大変そうだった(笑)

ーー 学生フリーペーパーのどんなところに惹かれたのでしょう?

中澤:フリーペーパーっておかしいんですよ。だってフリーなんですよ?こんなにも時間と労力をかけてクオリティの高いものを作っているのに、無料なんです。それってかなりの熱量がないとできないことじゃないですか。

工藤:制作者のもつ想いとか、考えとかが生々しく伝わってくるんです。企画一つ取っても、特に学生が作っているものって何にも縛られていないので本当に自由なんですよ。

中澤:学食を勝手に批評したり、女装したり(笑)

池田:学生特有の「よくわからない時期、感情、行動」をフリーペーパーに吐き出しているって感じで。読み手もそれに共感したり、しなかったり。見ていてもとっても気持ちいいんです。

中澤:それを儲かりもしないのに作るって、本当におかしいですよね(笑)でもだからこそすごい熱量があって、フリーペーパーを通じて読み手も、作り手と同じ温度感になれるんです。それが魅力かなって。

工藤:作り手の顔が透けて見える感じが楽しいんですよね。無料でコンテンツを作れるウェブが主流の中、わざわざ紙で、それってすごく可能性を広げてくるし、ただの情報が体験にランクアップする感じがするんです。

遠藤:文字とか情報以上の経験をくれるというか。

中澤:一見くだらなくて無駄なものに感じるかもしれないんですけど、そういうものにこそ価値があるんだと思います。

池田:そんな泥臭くて面白い、自由な学生フリーペーパーだけど、あまり脚光を浴びる機会がなくて。配布場所が少なかったり、制限されていたり。そもそもなかなか手に取ってもらえなかったり。それってすごく勿体無いなって。もっと広まればいいのにって思っていて。

工藤:そういう思いが多分、作り手ではなくSFFの運営として私たちが活動する理由なんだと思います。

遠藤:イベントではフリーペーパーに触れ合えるだけじゃなくて、制作者の人たちと話したりして、すごく楽しくって。フリーペーパーに親しみを持ったこと以外でも、イベント前後だと色々変わったなって思うこともあります。

ーー 例えばどのような変化が?

遠藤:部屋の一角に紙の山が常にできるようになりました。街中とか学校で、フリーペーパーとかチラシとか配っていると貰って、それを部屋に溜め込んでいます…(笑)

工藤:街中で無意識のうちにフリーペーパーを探していたり!

中澤:自分たちが思っている以上に多くて、「ああ実はこんなに身近なものだったんだ」って。

遠藤:あとは制作者について妄想するようになりました(笑)「どんな人がどんな思いでこの記事をかいたんだろう」とか、「何を伝えたいからこのデザインにしたのかな?」とか、「あーこのページ制作するの大変だっただろうな…」とか。今まではフリーペーパーもそうだし、雑誌を読んでいても表面的な情報とかビジュアルにばっかり目がいってしまっていたんですけど、今では裏側を探している感じです。SFF入る前は、作ってる人の気持ちとか編集後記とか全然見てなかったけど、今では一番気にしてるかも。

工藤:紙とか編集とか、すごく意識するようになりましたね。あとは個人的に、フリーペーパーを作り始めました!イベントで出会った制作者の皆さんの熱意に感化されて、私もやりたいって思って!

中澤:今年のSFFでも私たちみたいに、誰かに小さくてもいいので変化をもたらせるイベントになったらいいなって思っています。


熱意のぶつかり合いを感じて欲しいんです


ーー だから今年のSFFのコンセプトが「化学反応」なんですね

中澤:そうなんです!イベントならではの熱意のぶつかり合いを感じて欲しいんです。

工藤:参加者がフリーペーパーに持つ情熱と、私たちの持つ情熱との相乗効果で、会場が1つになる感覚を味わいたくって。去年のイベントではそれがすごく伝わってきたので!

池田:制作者と読者、制作者と制作者、制作者と企業とか、人と人とを繋ぐ機会があるって良いことだと思うし、そこで絶対に何かしらの「化学反応」が起こるんじゃないかと。

中澤:今年は学生だけじゃなくて、社会人の方が作っているフリーペーパーも出展してくださったり、フリーペーパーの幅も一層広くなっているんじゃないかと思います。

工藤:イベントに実際に来て、見て、フリーペーパーの魅力にどっぷり浸かって欲しいです。

中澤:ちょっと変で、クセになるフリーペーパーの魅力に(笑)

遠藤:やはり実際に作り手の顔が見えるイベントって楽しいので。個人的にも制作者をはじめ、色々な人と交流できたらいいなって思っています。


ーー 今年のイベントに参加する予定のフリーペーパーの中で、特に注目しているものはありますか?

工藤:まだ最新号をちゃんと読んだわけではないので難しいんですけど、個人的には駿河台書房さんの『PAAAAAAAN』の名前がインパクトあって気になってます(笑)あとは見た目が可愛らしい『POV』さんとか!今年初参加してくれるみたいで、早く読みたいです!

遠藤:私は明治大学フリーペーパー工房さんの『bootleg』が!内容の濃さと“学生にしか出来ないことを心から楽しんでます感”を全面に押し出してくる良い意味でヤバいフリーペーパーで、初めて読んだときの衝撃は忘れられないです(笑)去年のアワードで驚異の二冠制覇したということで、最新号もとっても期待しています。

中澤:私『bootleg』の新しいやつ、ちょっとだけ読んだけどめちゃくちゃ面白かったよ!二冠達成した時に『bootleg』の方が「また来年も来ます!」って言ってくれて、それがあっての最新号なので期待大ですよね(笑)アワードを盛り上げてくれるんじゃないかと思っています。

遠藤:どれも、全体的にクオリティがやっぱり高い。中身は全然読めていないんですけど、表紙だけでもワクワクしています。青山学院大学マスコミ研究会さんの『F.W.A.』とか表紙がとても可愛いくて、早くイベントにならないかなって!

中澤:「本当にこれ学生が作っているの!?」みたいなものばっかりで、度肝抜かれてます。

工藤:あと個人的に気になっているのは、フリーペーパー制作団体 夜9時の会さんの『Es』!大学四年生が作っているもので、なんと即席の団体だそうで。SFFに出すために作ってくれたみたいです。

中澤:そういうのって単純に嬉しいよね。イベントやっててよかったなって思います。

池田:フリーペーパー制作団体 夜9時の会さんの『Es』だけじゃないけど、読み手を求めているフリーペーパーにスポットライトの当たる場所がSFFであって欲しいなって思います。どのフリーペーパーも本当にすごいんですよ。切実にフリーペーパーのすごさに触れて、感じ取って欲しいです。

工藤:しかもフリーペーパーは、フリーなので!無料だから手に取って損はないです!(笑)是非SFFにいらしてください!


▼開催概要
「Student Freepaper Forum2018」

開催日時:2018年12月2日(日) 11:00-17:00(※予定)
会場:テラススクエア・神保町三井ビルディング
入場:無料
公式サイト:https://sff-web.com/

▼出展者募集中!
SFFではブース出展をしてくれる学生フリーペーパー団体を募集中。
締め切りは11/19まで。
せっかくのチャンス、美大生必見です。
https://sff-web.com/www/content/booth.html#fourm

(写真・赤堀映瑠 文・中澤瑛子 編集・市村光治良)

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