【後編】ワークショップをやる時にお客さん目線で大事な14のS

2018年5月13日(日)

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ミッドタウンキッズワークショップ募集に向けて、あまり語られることがない「ワークショップを開いてもらった側」「参加者側の視点」で造形ワークショップに必要な14のSという話を書いています。
これまでのSはこちら。
ワークショップをやる時にお客さん目線で大事な14のS!

くどいですが「造形ワークショップの定義」「造形ワークショップとはどうあるべきか?」ではなく、あくまでも「参加者視点」ということをご理解ください。
「ミッドタウンでやる時は」を前提に書いてるけど、オープンキャンパスでのワークショップとかでも参考になると思います。
 

8つめのSは「Saifu」

財布、つまり予算管理。・・そんな都合よく「S」の英語なんてないっすよ(開き直り)
つい夢を膨らませすぎちゃうけど、予算が決まってるのでその中でちゃんとやってね、ってこと。
全部自分たちで作る必要はなく、業者さんに投げられるものは投げちゃった方がいい。ダイカット加工とかね。
上記写真は2015年にやったいろんなパーツを組み合わせて船をつくるワークショップですが、ある程度はパーツを業者さんに作ってもらったけど、予算の関係で足りない部分は学生さんが作りました。

また、入試モチーフ発注担当をしてた経験ですが「普段お店で目にするから500個集めるのは簡単だろ」と思うものほどなかなか数がそろわない傾向にあります。逆に難しそうだと思ったものが簡単だったり。
1年中大量に使う小さな文房具系なら大丈夫ですが、「季節もの」はその季節に必要数しか作ってないんで急に100単位そろえるのは難しい。例えば「麦わら帽子」を400そろえるのはかなり困難なはずです。夏にどのお店にも並んでるから簡単そうなんだけど、まとまって400個となると何か特別なルートがない限り多分無理。もしくは中国から輸入となるので納期が間に合わなかったりします。
現段階で見積り取らないまでも、金額感や納期感は早めに把握した方がいいです。


つづいて、「Shokuji」


  • 他に食事してる写真がなくて・・・。

食事です。
・・・あ、バカにしましたね。でもこの手のプロジェクトだととっても大事なんです。
これも格言で「おなかが減ると人間は喧嘩する」というのがあります(これも手羽が作った)。
長時間のワークショップでは、食事というか休憩はとっても大事。
時間も人も少ないから食事もとらずにやることが多く、コアメンバーはそれでいいかもしれないけど、応援組からは絶対に不満がでるし、コアメンバーもイライラがたまり、些細なことで喧嘩する・・・なんてシーンを今まで何度も見てきました。食事休憩はうまくプロジェクトを動かすために必要なもんなんです。ちなみに「学生はカラアゲかドーナツかガリガリくんを食べれば頑張れる」という格言もあります(これも作った)
リーダーが喫煙者だと適時一服タイムを取るんだけどね、まじめな子がリーダーになった時は強制的に休憩をとる仕組みを入れたが方がいいです。


次に「Soshina」

「粗品」です。・・・なんか文句ある?(完全に開き直り)
別に参加賞としてタオルとか石鹸をあげろってわけじゃなく、「作ったものを持って帰れるようにしてね」ということ。持って帰れなくても、何かそれに関係するもの、「こういうのを作ったんだ」とわかる粗品的なものがあれば参加者の満足度が上がります。

「え。そんなの当然やん」と思いますよね?
実は普段私たちがやっている「造形ワークショップ」・・・造形から「気付き」を見つけるのが目的のワークショップだと、 作ったものを会場に貼ったり置いたり、みんなで大きな絵を描いたりするんで、持って帰れないことの方が多いんです。
最後にズラっと見せて、「いやー、いろんなアイデアがあるんだねー。みんな違ってみんないいんだねー。美術って面白いねー」と子どもに気づかせる手法なのですが、参加者からすると「え。せっかく作ったものを持って帰れないの?」で。
場合によっては、「最終日に撤収するんで、その時だったら渡せますけど」と言われたり。(「美術教育効果」視点ではなく、「参加者視点」で書いてます)

「終わった後に子どもたちの作品をどうするか」が最初の計画から抜けてることが多く、保管場所もないし、郵送するにもお金がないんで結局廃棄の道を選ぶのもよくあること。でも参加者からすると「廃棄するんだったら最初からくれたらいいのに」「見栄えのために私たちは協力したのか?」であり。(くどいですが「参加者視点」で書いてます)

やっぱりせっかく参加したんだから、作ったものを家に持って帰ってパパやおばあちゃんに「こんなの作ったんだよー。見て見てー」と自慢して家に飾りたい。それで「へーー。こんな立派なものが作れたんだー。イチロウは絵がうまいねー。将来は芸術家かなー」と褒められたいし、褒められたことも含めて想い出に残したいもんで。


手羽がこれが準備されてるだけで「ちゃんと考えてる団体だな」と思えるものがひとつあって、それは何かというと「Sack」です。

つまり、「袋」

これは参加者じゃないと絶対にわからないことなんですが、作ったものを持って帰る袋が非常にありがたいんです。 立体だろうが、平面だろうが関係なく。封筒ではなく手提げ袋。
作ったものを生で、または作ったものをいれた封筒を手に挟んで家に帰るのは、めんどくさいし、ジャマになるし、みっともないし、手が疲れる。作品や封筒が入るような大きなバックを持ってきてる可能性は低く、ミッドタウンにやってくるようなアッパー層なファミリーは皆無。
多くの場合、途中で子供も飽きて雑に扱われるか・・・途中で捨てます(経験あり)
なので採用されたグループには必ず「ナマで作品を渡す行為だけは絶対にやめてね」と伝えています。

もちろん袋がなくても誰も文句を言わない(言えない空気)けど、「これに入れてください」と言われると「あ。この団体はわかってるな」となり、さらにその袋にも演出が入ってると「おお。細部まで気を配ってる。やるな、こいつら」と感じられるんです。

私が「これ、うまいなー」と思ったのが、2012年の紙で虫を作るワークショップでした。
虫を作ってワークショップが終わりではなく、「お花にとまった虫さんと一緒に帰る」という役割が袋についてたんですね。しかも簡単で安価な方法なんだけどかわいい作りになってて。最初の「Story」でいうところの「オチ」がちゃんとついてたいい例。これなら持って帰る途中も子供は自慢できる(その姿が宣伝にもなる)。つまり「作品ができた後のこともイメージできてるか」ということです。
軽く見られがちな「持ち帰り」の方法ですが、実はこうしたイベントにおいていくつもの役割を担っている、重要なものなのです。


また意外と大事なのが、「Syashin」

もちろん記録写真という意味があります。運営に必死で、終わったら「あ。一枚も写真撮ってないや・・」ということが起きがち。記録係を作って設営から撤収まで撮影しといた方がいいです。
ポイントは「記憶写真」ではなく「記録写真」ということ。
「みんなでお昼ご飯食べてますー。わーい!」みたいな写真は数枚でよく、どういう形で搬入し、どこが設営で困ったところなのか、実際にやってみて子供が迷ったところ、うまくいったところとかをおさえておきましょう。こういうプロジェクトはどんなに計画を立てても現場合わせで修正することが多いので、テキスト資料だけでは残らないんです。

また最近だと「インスタ映え」も必要になってきてます。
「作品と一緒にスマホで撮影」できるような「場」を用意しておくとすんごく喜ばれます。「スペースがあれば」でいいけどね。




そして、次がこのワークショップの最大のポイントとなるSでして、「Shougyou shisetsu」

「商業施設」です。わざわざSにする意味が全くないのはわかってるけども。

大学主催で小中学校や美術館、公民館等公共施設でやるワークショップであれば「学生や教員の教育研究のため」を主目的におけるけど、開催場所が六本木の一等地にある商業施設「東京ミッドタウン」で、そこからの依頼である以上、「いかにお客さんに喜んでいただけるか?」が最重要項目。

ちなみにイベント実施直前にホスピタリティ研修、通称「ホス研」をスタッフは全員受けなければいけません。「ホスピタリティ」とは「おもてなし」の意味で、「1日のイベントといえどもミッドタウン内でスタッフ腕章をつけている以上、お客さんは『ミッドタウン関係者』としてあなたに接します。なのでミッドタウンの人間として対応してください」 ということなの。
自分も主催者側の人間だと認識し、他人事にせず、おもてなしの気持ちをもって対応する・・・制作物で満足度を上げることはもちろんのこと、こういう意識も必要なんです。


関係するので、「Smart」も続けて。

行動も含め美しいか?という問題。

いつもミッドタウンさんから言われるのが「スマートにやってください」です。
写真のような常にアッパー層のお客さんが見ています。それは設営段階から。なおかつシャレオツな商業施設だから、裏方的なものをお客さんに見せてはいけない。携帯使ってる姿とかはもちろんだけど、中古の段ボールとかゴミとか自分たちの荷物とか、雑談や休憩してる姿とか。
会場は4方向丸見えで大抵は近くに壁や裏面(バックステージ)があるもんなんだけど、この場にはなく、一度会場に出たら常にオンステージの意識がミッドタウンでは求められるのです。
どういうところでやるのか、くどいですがキッズワークショップへの応募を考えてるグループは日曜に下見しといた方がいいですよ。


やる以上、言われたいのが「Sasuga」です。

せっかくここまで大々的にやってるんだから、「さすがムサビの学生さんはすごいねー」と言われたいよね。そのためには、簡単なんだけど大人が思っている以上のアウトプットを子供が作れたり、「あ。こういうやり方があるのか」と気づいたりできた方がいい。
ムサビ生である以上、ハードルはそれなりに高いです。


と、いろいろ書いてきましたが、実は大事なことはたった一つのSで集約できます(えっ)
それは、

「Smile」です。

お客さんはもちろんだけど、主催されたミッドタウンさん、参加した学生さん、友達が笑顔になってもらうにはどうしたらいいか、という意識さえあれば自動的にここまで書いてきた14のSはクリアになるはずです。


「注意しなくちゃいけないポイントが多くて面倒な企画だなあ・・」と思ったそこのあなた!
この企画に参加する意義が4つあると手羽は考えています。

一つ目は「こんな大人数を対象としたワークショップをやる機会は他にない」てこと。

これは去年の開演10分前の写真ですが、行列ができてたんです。
やってみるとわかりますが公共施設系でのワークショップだとさんざん宣伝しても1日50人くればいい方じゃないかしら。しかも半分ぐらいが関係者。ワークショップ系で1日100人集めるのはほんとに困難で、これはミッドタウンさんが本気で宣伝してくれたり、そういう場だからありえることなんです。

2つめは「一等地の商業施設のレギュレーションを知れる」ということ。
ミッドタウンさんは1年中何かしらのアッパー向けのイベントをやってるので、運営方法やルール(レギュレーション)がかなりきっちり作られています。
「厳しすぎる」と感じることも確かにあるけど、こういう場でうまく運営するために生まれたレギュレーションなので、ここで知ったやり方を・・例えば地元のサミットやいなげやでやると、かなりレベルの高い運営ができるはずです。それを学生時代に体験できるメリットがあるのね。

3つ目は、「ここでワークショップを開催できるのはムサビの特権」ということ。
ミッドタウンにデザイン・ラウンジがあるから特別にやらせてもらっているワークショップなんだから、ムサビ生なら、その特権を使いませんか?

そして4つ目が、「今回ボツになっても他でやってもらうことがある」
典型例が去年の東京ミッドタウン・デザインハブ・キッズウィーク 2017「キラキラ涼しげ!水族館ブレスレットをつくろう」です。

この募集に申し込んでもらったんですが2次プレゼンを見て「企画内容やアウトプットはとってもいいんだけど、大人数相手には厳しいだろうなあ・・でもボツにするにはもったいないなあ・・」ということで、ミッドタウンではなくデザインハブ主催のワークショップでやってもらったんです。こっちなら参加者人数制限できるメリットがあり。
社会連携チームではいつもネタに欲してるので、こういうケースもあるんです。
なのでダメもとでもいいんで、ぜひ申し込んでみてほしいんです。


というわけで、ワークショップに必要な14のS・・・14?・・・えーと、ひー、ふー、みー、よー・・・・あれ、16あるな・・・


以上、ワークショップでの大事な16のSでしたっ!!(逃げ)

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。