5月6日に行われたX デザインフォーラムのレポートをお送りしています。
前回までの話はこちら。
■【問いをデザインする】第4回X デザインフォーラム「スタートアップとデザイン」に行ってきた! 前編
Yahoo!JAPAN本社はこういう場所にあります。
あ、下見ると車少ないでしょ?GWの都心の道路はどこもこんな感じで、帰りは紀尾井町から自宅まで20分ちょっとで着きました。
さて、午後の第 1部は「 ソーシャルとスタートアップとデザイン」がテーマ。
登壇者はこの方々で、司会は富士フイルム・シニアエキスパートの小島健嗣さん。
小島さんはミッドタウンにある富士フイルム・オープン・イノベーションハブの館長もされてます。
・・とここまで書いて初めて気が付いた。「富士フィルム」(小さいイ)じゃなくて「富士フイルム」(大きいイ)なんですね。「キャノンじゃなくてキヤノン」ってのは有名だけど、富士フイルムさんは知らなかった・・・。
ちなみに調べたら「シヤチハタ」「キユーピー」も大きいヤとユだそうです。就活生は気を付けよう。
ちなみにちなみに企業さんと産学連携の打ち合わせしてたら時々「タマビさんとぜひ」と言われることがあるけど(実話)これは問題外。
最初は日本初のソーシャルスタートアップ・アクセラレーションプログラム「SUSANOO」プロデューサーの渡邉賢太郎さんで、テーマは「ソーシャルスタートアップの存在意義とデザイン」。
渡邉さんは去年のXデザインフォーラムで初めてお話を聞き、そして3月にデザイン・ラウンジやった「社会をクリエイティブにデザインする」にも登壇していただきました。
導入部分はほぼ去年と同じ話だったように記憶してるんだけど、去年は自分にソーシャルスタートアップの興味と知識が全然なかったから、もう一度聞けたのはありがたかったです。去年メモし忘れちゃったんですよね・・。
いくつか具体例を聞いて、手羽的理解で「ソーシャルスタートアップ」を説明すると。
1年間で生まれる競走馬の数はなんと約7000頭なんだそうです。
でも馬の寿命は20年と言われてるのに4歳で99%が殺処分されている現状があります。
これをただ非難するのではなく、「難しい課題」だと気が付き注目し「こうなればいいよな」という未来を考え、「他の●●とくっつければ大きく動くかも」とレバレッジポイント(テコの作用点)を見つけ、第3者を当事者に変える「WEの範囲をかえられる」ビジネスモデルをデザインするのがソーシャルスタートアップなのかな、と。
お金を稼げるのなら企業やベンチャーがやってるはずで、お金以外の求心力を見出すことが大事。
二人目はCoaid・代表の玄正慎さんで「ソーシャル・スタートアップの事例、次世代救命アプリ」というお話。
救急車が到着するまでの時間は全国平均で8.6分で、東京では10分以上かかると言われてます。GWはさらに遅くなるそう。
もし家族や同僚が心停止を起こした時に、救急車を呼んでから会社ならAEDを探すと思いますが、心停止は1分ごとに約10%救命率が低下するので、救急車やAEDが到着するまで脳などに酸素を送るために心臓マッサージをし続けないと意味がありません。
これを私は知らなくて・・。AEDをやれば大丈夫なものだと思ってた・・。
そこで玄正さんは119番通報をしながら周囲にSOSを発信できる緊急情報共有アプリ「Coaido119」を開発されました。
またAED講習は通常3時間ぐらいかかると言われてます。
というのも人体モデルが高価だから講習では通常一体しか用意できず、たくさんの人に経験してもらうために待ち時間が発生しちゃうんですね。待ってる時間はそれをじーと見てるしかない。
もっと安価に簡単にトレーニングできないかと思い、
CPRトレーニングボトルを開発されています。
空のペットボトルを押す強さがちょうど心臓マッサージで必要な力と同じことに注目し・・って、まさに先ほど説明した「ソーシャツスタートアップ」の流れですね。
あ、いろはすじゃ弱いかな。
これなら多くの人に配ることができるし持ち運びも簡単。
「すごいデザインの力だなー」と思いました。
3人目はデジタルアルティザン・代表の原雄司さんで「ラボドリブンのスタートアップ」。
ファボラボの「ラボ」ですね。
「0を0.1にする」のがイノベータで「1を10にする」がスタートアップや企業だとしたら、「0.1を1にする」のがラボドリブンビジネスじゃないか、という話。
原さんも興味深い話だったけど、個人的に引っかかったのが「なんだかんだPDCAは大事」という話でした。
大成功してる企業・プロジェクトはみんなチェックして事業変更しており、実は何も変えないで継続できてるものはほとんどない。今あちこちで「PDCA」と言われてて「なんかめんどくさいもの」という印象があるんだけど、そう考えるとPDCAの重要性がわかるな、と。
第1部ラストは、ヤフー・CMO-Board キャプテンの善積正伍さんで「ヤフージャパンにおけるスタートアップ」。
6000人以上の社員、発表アプリ数累計100以上のヤフーみたいな大企業が新規事業のスケールにどう向き合うか、という逆アプローチでの話ですね。
ユーザー数も売り上げもコストもリソースも常に既存事業と比較されがちな「イノベーションのジレンマ」という話があり・・・って詳しくはスライドを公開されているのでそちらをご覧ください。
ちゃっかり社員の募集も(笑)
皆さんが共通してたことは、「強い意志・熱意によって共感者・支援者を増やす(つなぐ)」であり、仲間を作るためには「問い」を共有すること、ってところかな。
そして、第2部は「ソーシャルと学びのデザイン」
登壇者はこの方々で、なんと進行役は
武蔵野美術大学の井口博美先生。
・・・って去年は一緒にこのフォーラムを聞いてた側なのに、今回は進行役ですよ。
かなり緊張されながら新学科の宣伝もされてました(笑)
まさにこのフォーラムに参加されてる学生さんや社会人の方に来てほしい学科・大学院なんですよね。
一人目はVIVITA・ディレクターの西沢 一登さんで「こどものスタートアップの学び」。
西沢さんはムサビ視覚伝達デザイン学科卒だから「井口先生が連れてきた人なのかな?」と思ってたらたまたまなんですって。
VIVITAは名前だけは知ってました。
夏に視デの学生さんが柏の葉でワークショップをやってるのをSNSで見てたもんで。ただムサビとのつながりも知らなかったし(寺山ゼミだったそう)、読み方は「ビビタ」だと思ってたら、西沢さんの発音を聞いてると「ビビータ」なのも発見。
こういうソフトウェアなども開発してるんですって。
二人目はTUBE GRAPHICS・代表の木村博之さんで「小学校でのインフォグラフィックスの学び」。
これまで
●オーラシー(会話能力)
●リテラシー(読み書き能力)
●ヌメラシー(計算能力)
、つまり「読み書きそろばん」が大事にされてきたけど、第4の基本的能力「グラフィカシー(空間認知・可視化能力)」の必要性の話。(「グラフィカシー」という言葉は1965年にイギリスのバルチンとコールマンが名付けたそう)
それはデータからチャート、グラフ、地図、図解、表、記号などを使い情報を可視化することであり、インフォグラフィックスであり、「見える化」の授業であり、自分で考える応用力をつけることができる、と。
勉強になるなあ。
そして最後はXデザイン学校・共同代表で千葉工業大学の山崎和彦先生による「社会人のデザインの学び」。
「learn」はこれまでの社会や技術で正しかったことを学んだり、学問として成り立っていることを学ぶことを意味し、「Relearn」は学びなおし。
大人の学びで必要なのは「Unlearn」、つまり「学びほぐし」で
・これまで学んだことを一旦捨てる。
・捨てるためには学んだことを発表してリフレクション
・新たな視点で学ぶためにリフレームが役立つ
・新たな視点になるためには、問いのデザインが役立つ
・リフレームするためには、本当に学ぶべきことは何か?という視点で俯瞰的にに見る
・新たな視点で学ぶと葛藤が生まれ、この葛藤が新たな学びに結び付く
が大事じゃないないかという話。
いろいろ面白い話をしていただいたんですが、手羽が気になったのは
「デザイナー」ではなくても「デザインマインド」をもつことでどのような分野でも「デザイン」を活用できる、という話。「デザイナー」とはあくまでも職業名に過ぎない。
まさに新学科が言いたいことで新学科では「クリエイティブシンキング」「創造的思考力」という表現を使ってるけど、そういうことなんですよね。
最後はポスターセッションで、何がすごいって、
こんなに「発表したい」という人がいるってこと。
あ、ノンデザイナーのための教育といえば、
■WEデザインスクール「社会人のためのデザイン入門(全1回)」
●開催日:2018年6月13日(水)/ 6月28日(木)/ 7月11日(水)
●時間: 19:00-21:30
●場所:武蔵野美術大学 デザイン・ラウンジ
●講師:稲葉裕美
●定員:各回20 名(先着順)
●受講料 :5,400円(全1回)
てのをラウンジでやってるのでよかったらぜひ(宣伝)
去年もそうだけど、フォーラムに参加して一番感じたことは「美大に危機感はあるのか?」ですね。
美大関係者がのんびりしてるうちに総合大学や理工系大学はこの分野をどんどん研究して共有化してる怖さというか。がんばらないと。。
以上、
身内でもなんでもないけど次回Xデザインフォーラムも宣伝してしまう、でも「仲間」がもっと増えたらいいなと思ってる手羽がお送りいたしました。
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。