日本における「アートワークショップ」で外せない人物が、元視覚伝達デザイン学科主任教授の及部克人先生って方でして、ワークショップをデザイン教育・コミュニケーションデザインのフィールドに持ち込んだ第1人者と言われてます。
日本中で開催されてる「現代的アートワークショップ」は及部先生から派生したもの、といっても全く過言ではありません。
そういうこともあって、ムサビは「造形ワークショップ」についてはちょっとうるさく(笑)、武蔵野美術大学出版局からはたくさんワークショップに関する本も出してます。
「造形ワークショップとは何か?」てのはいろんな解釈があるので、「こうだ!」とは非常に言いにくいです。「工作教室」「体験講座」という意味で使われるケースの方が多いかもしれません。私たちもそういう意味で使うことがありますし。
手羽の解釈は、
「教える側・教わる側という関係や結論を求めるのではなく、『気づき』や『コミュニケーション』を『造形という行為』を使って『促進(ファシリテイト)』させるもの」
で、ムサビでの解釈もこれに近いと思うのだけど、もちろん「全然違う」という人も当然いるはず。
及部先生は「緩やかな対話(関係づくり)」という言葉を使われてました。
ただ、「ワークショップ」「ファシリテータ」という言葉だけが独り歩きをし、
「なんか工作させりゃいいんでしょ?」
「ファシリテータって進行係をかっこよく呼んでるだけでしょ?」
ぐらいに思ってる学生や教育関係者が多いのも事実。
実際に他美大さんがやってるワークショップでそういうのを見たことがあり、「『PBLでワークショップやってます』と宣伝したところでこの大学には指導できる教員がいないんだろうなあ。これじゃ付き合わされてる学生さんとお客さんがかわいそう・・。教務や広報は把握してるのかな?」と感じたことも。
そんな中、「ワークショップの価値を高めるためにはファシリテータ養成が必要!」ということで、学生同士の「気づき」「問題点」などの情報共有を目的として始まったのが「ムサビのワークショップ発表会」。
■学生による「ワークショップ発表会」2010
■ワークショップ発表会「地域では」2012
■ワークショップ発表会2013
■ワークショップ発表会2014|ムサビのワークショップを俯瞰する十八の事例
■ワークショップ発表会2015|ムサビのワークショップを俯瞰する二十二の事例
■ワークショップ発表会2016|ムサビのアクティブ・ラーニング[ワークショップ33の事例]
とこれまで6回開催しています。(これとは別に旅ムサ単独の発表会もやってます)
学生さんにとってワークショップは「主体的・協働的に学ぶ学習」であり、今どきの言葉を使うならまさに「アクティブ・ラーニング」。今になってみんな「時代はアクティブラーニングだああ!!」と騒いでるけど、ムサビはずいぶん前から「クリエイティブ・アクティブ・ラーニング」に取り組んでるんですすよ、と。(美大の授業自体がアクティブ・ラーニングなわけですが)
あ。前置きが長くなっちゃった。
というわけで、今年もやります!!
■ワークショップ発表会2017:美大生と地域
●日時:11月3日(金・祝)13:00-17:00
●会場:鷹の台キャンパス2号館2階
●内容:
(1) 学生によるワークショップ活動報告
(2) 地域おこし協力隊(本学在学生、卒業生)からの活動報告
(3) 文化芸術アソシエイツ人材育成プログラム研修生からの活動報告
(4) 「地域」をテーマにした産官学共同プロジェクトパネル展示
(5) 鼎談「美大生と地域:発表会を通して見えてくるもの」
齋藤啓子教授(視覚伝達デザイン学科)×鈴木明教授(建築学科)×三澤一実教授(共通デザイン・教職課程)
●入場料:無料(事前予約不要)
●企画・運営:社会連携チーム
去年はテーマ不問で33組に発表してもらったんだけど「ちょっと多かったかな」と反省があり(笑)、今年はテーマを「地域連携・貢献」とし、16組に厳選させてもらいました。
学科・学年を超え、そして授業内・課外活動関係なく、様々な場所でこれだけの数のワークショップや美術教育支援プロジェクトをやってる大学は恐らく他にはなく、「地域縛りで今年度実施したワークショップの発表チームが16組いる凄さ」は大学関係者の方がわかってもらえるかもしれません。
「ムサビの強みを伝えたい」のはもちろんですが、「造形ワークショップのさらなる発展」「美術教育は社会や地域に何ができるのか?」を伝えたいと思ってるし、「美大って絵を描くだけじゃなく、こういうこともできるのね」という「美大の本質的な学ぶがなんなのか?」という点や「こんな感じのことをうちでもやってほしい」という具体例紹介とシーズ・ニーズマッチングの場になればとも思ってます。
今回は学生さんの発表だけじゃなく、石岡市地域おこし協力隊として活躍してる卒業生4名の報告や「ムサビでワークショップといえばこの人」な視デ・齋藤先生、「旅するムサビ」の教職・三澤先生、そして社会連携推進委員長の建築・鈴木先生による鼎談も開催することになってます。
ちなみに、ワークショップ発表会は11月3日(金・祝)@鷹の台キャンパスですが、旅するムサビのグッドデザイン受賞記念で、翌日11月4日(土)に学生による旅ムサ解説をやります。
■「旅するムサビプロジェクト展」武蔵野美術大学学生による展示解説
●日時:2017年11月4日 (土) 13:00-、15:00-(各回30分程度)
●会場:武蔵野美術大学 デザイン・ラウンジ
●参加料:無料(予約不要)
●実施主体:武蔵野美術大学学生有志
ムサビ生・ムサビ関係者もそうだけど、他大学の学生さんや教職員の皆さん、小中高校の先生、地域の方、公共団体・企業の方。
11月3日のワークショップ発表会、11月4日の旅ムサ解説にぜひ参加ください。
以上、一つ言えることは「社会連携・貢献は夜と土日祝が潰れます」の手羽がお送りいたしました。
研修会とかで若い職員さんが「これからの大学は社会連携・貢献にどんどん取り組まないとダメ」的な発表をする大学が多いと思いますが、対象が外部・地域だと夜か土日祝にやるしかない簡単なことに気が付いてないことも多く、「自分事」として考えると、どっかの本で読んだことを軽い気持ちでそのまま提案するのはやめた方がいいかも。
ただ、シルバーエイジ対象だと、むしろ土日は予定がたくさん入ってるので、「イベントは平日昼間の方がいい」と某所で聞きました。
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。