【パッケージデザインのような人】視デ・本田和男教授がお亡くなりになりました

2017年7月9日(日)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

今日の記事は完全な私信です。


視覚伝達デザイン学科の本田和男教授が平成29年7月7日(金)の朝に逝去されました。
入院されていることは知ってたんですが、経過は良好だと聞いてホっとしてた矢先の訃報にショックを隠せません・・・。
 


手羽が初めて本田先生と一緒に仕事をさせてもらったのは、

2012年に実施した赤城乳業株式会社さんと視デとの産学連携「アイスドリームプロジェクト」です。実働部隊として当時非常勤講師だった本田先生に動いてもらったんです。
2003年から本田先生はサントリーさんを始めとした産学連携には関わってもらってますが、初めて会ったのがこの時で、第1印象は「声が渋くて怖い顔だけど、笑うとかわいい」だったのをはっきりと覚えてます(笑)
手羽ブログを以前から読んでいただいてたこともわかり、そんな人に悪い人はいない。

アイスドリームプロジェクトは
●手羽が産学連携にかかわるようになった初期のプロジェクト
●久しぶりの視デの産学
●卒業生からのオファーによってスタートした
●子供の頃から大好きな「ガリガリくん」を作ってる会社との産学
●その後の様々な展開
●学生さんの提案内容が面白かった
だったこともあり、「今までで思い出に残ってる産学プロジェクトは何か?」と聞かれたら、真っ先にこのプロジェクトを挙げるかな。それくらい思い出深い産学連携。

赤城乳業の社長さんへの最終プレゼンはこっちも緊張したし、デザイン・ラウンジやオープンキャンパスでの展示では夜遅くまで設営したし、いろんな広報誌に何度も説明テキスト書かされたし(笑)、そして

グッドデザイン展2013では大勢の前でプレゼンをやったり。
産学後にこんなにいろいろやった例はあまりなく、


  • グッドデザイン展2013プレゼン前の楽屋風景。

プロジェクト後もそこには必ず本田先生がいらっしゃいました。


本田先生は視デOBで、肩書は「パッケージデザイナー」
パッケージデザインのお仕事をたくさんされてて、「本田和男」の名前を知らなくても、

これらの商品を店頭で見たことはあるはず。
全部本田先生がパッケージデザインされてるんです。

手羽が「本田先生がデザインしたもの」で真っ先に思いつくのは、

ふえるわかめちゃんシリーズですね。
手羽家のキッチンに常備してます(笑)


産学連携を担当するまでデザイン業界のことはあまり知らなかったもんで「それなりの会社には必ずデザイン部があって、そこに美大デザイン系学科出身者が何人もいて、日々商品のデザインをしてる」と思ってたんだけど、実際のところ、皆さんが知ってるような大きな会社でさえデザイン部をもたず、商品デザインやパッケージ、広告等をデザイン会社やフリーのデザイナーに外注してるケースが多いんです。
逆に日清食品さんなど内部にデザイン部を持っているところは、すごくデザインが元気がいい印象ありません?

よく私が「起業や役所にデザインを翻訳してくれる人がほしい」と書いてますが、「デザイナーとはロゴマークを作る人」「ちょこちょこっと色と形をいじるのがデザイン」ぐらいにしか思われてなく、産学連携をやる時に「デザインってこういうことですよ。いろんなことを考えてデザイナーは作ってるんですよ。大変な作業なんですよ」と大学と会社の間に入って「翻訳」してくれる人がいないとかなりつらい。
特に商品デザインは「印刷は●色までしかつかえない」「記載しなくちゃいけない情報・安全条件がある」「工場や梱包・運送の関係で形はいじることができない」など諸条件が多く、「学生さんの若い視点で新しいデザインをしてほしい!」と言われても、聞いてみたらほとんどいじる余地がなく、「てかプロがさんざん考えて作った今のデザインを学生さんがいじる必要あるの?」なんてことが何度もありました。そこがいまいちわかってもらえなくて。

本田先生は2014年に教授に就任されたんですが、学生が考えていることを企業へわかるように、逆に会社が求めてることを実体験をもとに学生さんへ伝わるように丁寧に「翻訳」してくれる存在は本当にムサビにとって貴重で、それ以降も積極的に産官学連携に協力してもらってます。

AGFさんとの産学連携は記憶に新しいし、平成27年度に株式会社マルアイさんと実施したプロジェクトでは、

その中で生まれた「ねがいふせん」が商品化されたし、

最近だと三鷹市立図書館とずっと続けてきたプロジェクトの一環でやった、新移動図書館のラッピングデザインがあります。
この移動図書館のお披露目会は今年の4月で、本田先生も出席されてたんですよね。
教授としての就任年限こそ短いけど、「実社会に送り出した産学の数」という意味では、実は本田先生が関わった産学連携プロジェクトはムサビでもTOPクラスだったんです。


本田先生は以前インタビューでパッケージデザインについて、こう語ってます。
本田和男(Kazuo Honda)氏: 人々の生活の中に入り込む ものをつくることへの責任を 感じながら仕事をしています | クリエイターズ ステーション(クリステ)
「(華々しい広告デザインのように)人の目を奪うことよりも、人の生活のすぐ近くで、使い勝手の良さや、そこにありつづけることの自然さや、なくなってみるとさみしく感じるような親しみやすさをデザインすることに充実感を感じる」
改めて読むと、パッケージデザインというか、そのまま本田先生本人のことを語ってるように聞こえます。パッケージデザインのような人。あの渋い声と笑った時の皺のような目をもう見れないのが信じられません。
ここに謹んで哀悼の意を表すとともにご冥福をお祈り申し上げます。


葬儀・告別式は 下記のとおり執り行われます。
お通夜は今日なので、心当たりのある方は他にもお知らせいただければと存じます。

●通  夜:7月9日(日)午後6時~7時
●告 別式:7月10日(月)午前10時~11時
●場  所: 大悲山観音寺
〒169-0075 東京都新宿区高田馬場3-37-26
Tel 03-5389-7625

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。