昔からものづくりが身近なまち、蒲田
大田区の蒲田を歩いてみたことはあるだろうか。
記憶を遡れば、2010年までは11館にもわたる「ユザワヤ」が立ち並んでいた。ほかにも、たくさんの町工場が点在していて、蒲田は昔からものづくりが身近なまちだった。
そんな蒲田という場が秘めている「ものづくり」という可能性を最大限に活用し、2014年、クリエイターの、クリエイターによる、クリエイターのための制作環境を生み出すプロジェクト「@カマタ」がはじまった。
「蒲田を、クリエイターが集まって仕事するまち、カマタへ。」
@カマタは、建築家・デザイナー・家具職人などのクリエイターや、蒲田周辺の地主さんが集まって結成した緩やかなネットワーク。それぞれの強みを生かし、このプロジェクトが次々に形になっていく。
プロジェクトの手はじめに、空家・空きビルを活用してオフィスと店舗をつくり、翌年には工房とシェアオフィスを誕生させた。
例えば、メンバーのひとり、NPO法人「モクチン企画」の連勇太朗(むらじ・ゆうたろう)さんは、首都圏に点在する大量の木造賃貸アパート(略して木賃→モクチン)の再生をミッションに活動する。
さすが、木造賃貸の再生のプロというだけあって、プロジェクトの手はじめに、空家・空きビルを活用してオフィスと店舗をつくり、翌年には工房とシェアオフィスを誕生させた。
蒲田は「木密地域(もくみつ・ちいき)」と呼ばれる場所のひとつで、古い木造の建物が密集して立ち並ぶエリア。空き家だった木造戸建てを改修してモクチン企画のオフィスにし、その前にあった〈空き地〉を〈空地→クーチ〉と読み替え、密集したエリアにおける空地の可能性を探る社会実験プロジェクト「カマタ_クーチ」へと生まれ変わらせた。
そのほかには、2015年にクーチから徒歩数分の場所に、姉妹プロジェクトとして「カマタ_ブリッヂ」がオープン。一階部分にシェアオフィスと工房が付いたちょっと変わったマンションだ。
場ができると、ひとが集まり、コトが起こり、モノが生まれた
クーチやブリッヂが完成するとまもなく、様々なイベントやワークショップがスタート。蒲田に拠点を持つクリエイターが中心となって、様々な人を呼び込み、まちに刺激をもたらすようになった。そして、この場所で、カマタ_ブリッヂで@カマタのメンバーは続々と作品を生み出した。
書架/東京アートブックフェア2015
Irma Boom Exhibition
design: Daisuke Motogi Architecture
fab: studio niko 笹本直裕
Photo: Takashi Kato,Gottingham
@カマタのアプローチは、まず「場」を生んでいくことにはじまる。場に集ったクリエイターがコミュニティとしてお互いを支え合う。そして、おもしろい作品や製作物を生み出す。そんな彼らが目指す未来予想図「クリエイターに刺激的な環境」に向け、今はまだその道半ばだ。
クリエイターが、まずは利用してみる
シェアオフィスに加え、最近新たに誕生したのは古い倉庫を再利用したイベントスペース「カマタ_ソーコ」。作り込まれすぎていない、倉庫の雰囲気をそのままに残したスペース。アート展や演劇、パフォーマンスやファッションの展示会、映画の上映まで、表現の場として想像が膨らむ。
イベントは不定期で開催されている。「地元との関係性を大切にしながら面白い仲間の輪を広げていきたい」、そんな想いで進められているからこそ、誰でも利用できるというオープンなスペースではないが、蒲田という「まち」が気に入ったクリエイターは、仕事の拠点に、仲間とものづくりに、作品発表の場に、この蒲田を選んでみるのはいいかもしれない。
あとがき
私が画材や材料を買いに足繁く通っていた蒲田を、同世代のクリエイターが集まって仕事するまちにしようと動いていると聞き、まちさえもクリエイトしていく彼らの姿にワクワクし今回紹介させてもらいました。シェアオフィスやSOHOでは入居者も募集中とのこと。訪れる際には、一言連絡を入れてから足を運んでみて。
そういえば、トップ画像で使っている改修前のスペース、クラウドファウンディングで集まったお金で、すでに改修が進んだ様子。@カマタの共用打ち合わせスペースとして使われるんだって。
@カマタ:http://www.atkamata.jp/index/
(執筆・上野なつみ)
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