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中村麻由美さん(造本デザイナー)
1984年新潟県生まれ エディトリアルデザイナーとしてデザイン会社勤務を経て、2011年よりフリーランス、「本と紙を嗜好品として愛でる毎日を送りたい」という自身の願望から、手製本をすることにこだわり、デザイン、紙選び、造形、製本に至るまでのすべてをオートクチュールで請け負う造本デザイナーを始める。
ブックレーベル「Feel so books!」としても活動中。
WEB http://mayuminakamurapw.tumblr.com/
instgram @mayumi_nkmr
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コミュニティからひろがる「しごと」
-しごとでかかわる人や、つながりについて教えてください。
麻:フリーランスで働いていて心がけているのは、いろんなコミュニティに顔を出すことです。お客さんになってくれそうだなあ、と思っているのはイラストレーターさんとか、写真家さんですね。例えば展示会を開催するときに、1冊だけ本をつくりたいとかよくあるんですよ。友人の作品は数える程度ですがつくったことがあるので、出会う人の幅を広げていきたいですね。あと、アパレル関係は紙まわりのデザイナーさんや、紙の知識もかなり枯渇しているようで、友達の友達に頼もう、みたいに声をかけてくださるお仕事もいくつかありました。もっとそちらに働きかけるとかなり仕事が広がると感じています。
これまでのつながりもとても大切ですね。私の旦那も美大のグラフィックデザイン出身で、お互いデザイナー・クリエイターの友達が多いので、そこ経由でもらうお仕事もあります。卒業して3年くらい同級生と会ってなかったんですけど、最近同級生と仕事を何件かするようになってきて、今になって当時の関係が効いてくるんだなと思っています。
-10年くらい経って、仕事をいっしょにできるっていいですね。
麻:やっと一緒にやれるようになってきました。最近は友達だったり、知り合いの紹介から仕事が始まることが多いです。一回利用してくれると、その人が頭の中の引き出しに私を入れてくれるのはありがたいですね。
だから学生さんは今の友達を大切に。思わぬ同級生から仕事がきたり、仕事を振ったりって、将来あると思います。
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「できることをできるだけ
プロジェクト「徹」のかたち」
故・谷川徹三氏の着物のリメイク商品を販売し、その収益を東日本大震災の被災地支援に役立てるプロジェクト。麻由美さんは着物の生地を表紙にリメイクして仕立てたノートをデザイン・製本した
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-現在ご結婚されていて、お仕事とか、例えばこれからお子さんが生まれる可能性もふまえて、どう両立させていきたいという希望はありますか?
麻:会社勤務時代は四六時中働かなきゃいけないような状態で、24時間即日、例えば旅行先でも否応なしにいろいろ情報が入ってきてしまうんですよね。そういう状態で子育てができない、と思いました。
自分が好きなことを仕事にしていれば、家にいても仕事ができるんだろうな、って思っていて。子育てとそういうのを並行させるのはかなり大変だと思うんですけど、外で働くよりも家の中で働いていた方が、バランスはいいかな、って漠然と思っています。当時結婚を意識する彼氏がいなければ、会社辞めるのをもっと躊躇していたかも知れないし、会社辞めても製本する自分ってもっと別に生活する基盤になるような会社に就職していたかもしれない、っていうので結婚はかなり今の仕事の状況には密接に影響している感じです。
つくることの「旬」を意識する
-最後に。これからやりたいことはなんですか?
麻:10年で今の仕事をものにできなかったらいいかな、できなければまた次かな、っていう感じで考えているので、今まさにやりたいことをやっている感じなのかな? あとは生活がちゃんと送れるような基盤をここ6年くらいでつくりたいな、っていう感じです。なのでひきつづき、積極的につくったものを見せていきたいですね。その時の「旬なもの」ってあるじゃないですか。例えば結婚式の写真って、その次の日に友達と交換するから旬であって、何年も後にやっても思い出としてはいいんだけど、ちょっと時期が違うような気がしていて。そういう話題性とか、旬なネタは旬なうちに、みたいなことを意識するようになりました。
-ありがとうございました。
<徒然に感想>
麻由美さんの「つくる」の中には「手を動かす」ことと「選択をする」ことが含まれているんだなと感じました。かつ、この「選択」は目だけじゃなくて手の感覚がすごく多い。
後日彼女のワークショップに参加したのですが、久しぶりにいろんな種類の紙に触って選んで、折ったり穴をあけたり‥と作業をしてみると、自分の身の回りに置いておきたい質感って誰しもあるんだなと思いました。
食器とか家具とか文房具、着るものもそう。今回本をつくるときも思っていた以上に自分の嗜好に正直になっていた気がします。
手を動かすことは、こんなに緊張するものだったんだ!とも。こうしてキーボードを打っている手の動きの幅の、なんと小さいことか。
私の視点はまた少し、違う角度を獲得したように思います。
麻由美さん、本当にどうもありがとうございました。また遊んでね。
文章:高橋 奈保子
ムサビ→NPO勤務。デザインすることは紙の上でも画面の中でもまちの中でも同じ。 まちや、プロジェクトや、そこでつながる人達と、コツコツとワークショップやプロジェクトをつくったり、振り返って記録をしてます。音楽は生きる糧。