「東京国際プロジェクションマッピングアワード」は、若手映像クリエイターの登竜門を目的に立ち上げられたアワード。東京オリンピックに向けて、日本のコンテンツ制作力を引き上げ、海外でのCOOL JAPANブランドの向上も目指しています。
昨年末に行われた上映会の様子はこちらから!
今回お話を伺ったのは、多摩美術大学の映像制作チーム「POTTS」のメンバー。彼らが制作した作品『モンスターのすみか』は、同アワードで優秀賞を獲得しています。
【動画】POTTS『モンスターのすみか』
「ぼくは、vol.0から柴田晨くんとふたりで参加しています。今回の作品にはもっと人数が必要だったので、企画ができてから、さらにメンバーを集めました」と語ってくれたのは、代表者の齊藤公太郎さん。
山口新平さん、高橋明裕さん、油原和記さん、荒木久徳さんが新たに参加し、企画の要となる手描きアニメーションは1学年上の先輩に依頼。これだけの人数に加えて先輩も参加するとなると、全体のディレクションだけでも大変そう。
「このメンバーは、おなじメディア芸術コースの2年生なので授業でも会うし、何でも言えるんですが、先輩には言いづらかったですね。でも、進めてもらわないと完成しないから、途中から嫌われてもいいから言いまくろうと、LINEで連絡しまくりました」
その甲斐もあって、先輩も真剣に取り組んでくれたとのこと。もうひとつの重要な要素である音に関しては、最初から大事だねって話していたそうですが、大学内にイメージに合う人がいなかったため、音楽共有サービスの『SoundCloud』で見つけた学外の社会人にお願いしています。
直接会って打ち合わせも行ったそうですが、メールでもコミュニケーションが取れるのにも、なぜそこまでするのでしょう?
「細かいニュアンスを伝えるのって、やっぱり顔を見てしゃべる方が絶対にいい。前回の作品からお願いしていますが、『モンスターのすみか』は2回ぐらいしか会ってないんです。それでも、最初の打ち合わせでぼくが言ったことを、次に会ったときにはほとんど形にしてくれていたのには、驚きました」
やはり、互いに意見をぶつけ合い、直接コミュニケーションを取ることがチームづくりのコツのようです。そもそも、「東京国際プロジェクションマッピングアワード」に参加するキッカケは何だったのでしょう。
「ぼくが受験のときにプロジェクションマッピングが流行り始めて、いつかやれたらいいなと思っていたんです。それで、入学後も『やりたい』って言い続けていたら、先生からアワードのお話を教えてもらいました」
齊藤さんも「まさかやらせてもらえると思わなかった」と言う通り、舞台となった東京ビッグサイトの壁面は、プロでも臆するほどの巨大スペース。形状も変わっているため、決して制作面も楽ではないはず。
「細かい部分だと、CG上でビッグサイトの高さと人間の目の位置を、その場に立ったときに見えるパースに合わせるというのは、ちゃんとやりました。手を動かし出したのは2ヶ月前からだけど、みんな課題があるし、実際にやり始めたのは、1ヶ月前とかですね」
意外にも短期間……!
最後のコンポジット作業は、齊藤さんが油原さんの家に布団を持ち込んでの合宿状態だったそうで、「手書きアニメーションの素材がギリギリのタイミングで一気にきたときには、『キャラクターはいいけど、なんでこんなにギリギリなんだ!』って文句言いながら作っていました。もちろん、ここまでやってくれた先輩には感謝しています(笑)」と、製作期間がいかに大変だったかを振り返ってくれました。
最後に、これから参加するひとへのアドバイスを伺うと、「学校の課題だと個性やコンセプトが評価されると思うんですけど、この作品に関しては子どもとか色んな人が観て喜んでもらえるものを意識しています」と、プロさながらの観客を意識した発言も。
そして、一番こだわった色味については、「プロジェクションマッピングでは“黒”が表現できないので、『周りの明かりで建物の色が見えちゃうから色を付けた方が良いよ』っていう先生のアドバイスが大きかった。彩度も上げてコントラストを強めでやった方が絶対に良い」と、今後の参加者にも有益な情報を教えてもらえました。
色味に関してはPC上でイメージしたものと違ったそうで、そこが次の課題とも。これも、実際に参加したからこそ得られた経験ですね。
東京国際プロジェクションマッピングアワードは2017年もvol.2として開催予定。参加したい! とおもったあなた。まずは公式FBやTwitterをフォローして最新情報をチェックしてみて下さい!
▼東京国際プロジェクションマッピングアワード
公式サイト:https://pmaward.jp/
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2016年、リオオリンピック閉会式で行われた五輪旗の引き継ぎセレモニーで大きな注目を集め、美術館等の展示、遊園地でのショーなど様々なシーンで活用されて映像表現の新技術、プロジェクションマッピング。
ニーズは増える一方にもかかわらず、制作する映像クリエイターの不足が深刻化している事から、若手クリエイターの才能を発掘、育成するために創立されたのが東京国際プロジェクションマッピングアワード。日本国内だけでなく、海外へも広く呼びかける事により、日本発コンテンツに注目が集まっている。
2016年12月17日には上映会・表彰式が実施され、国内外から16チームが東京ビッグサイトに集結。横幅約94m×高さ約30mの巨大スクリーンを舞台に、半年以上をかけて制作した作品で“映像のロボコン”とも言うべき熱い戦いを繰り広げ、4000人以上の観客が来場した。
「東京国際プロジェクションマッピングアワードvol.2」として次回開催が決定。2017年6月よりエントリー受付開始を予定。詳細は公式サイトにて告知していく。
(執筆/ 金井 悟 ・ 写真/ 出川 光)
(C)東京国際プロジェクションマッピングアワード実行委員会
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