ボツワナ・バスケット 〜幾何学模様で表現するアフリカの自然のかたち〜

ボツワナの工芸品といえば、北部で発展したバスケットが有名です。 ヤシの木の葉を乾燥させて木の皮等で煮詰めて染色し編み込んで作るもので、自然な色合いとユニークな幾何学形態が意味するものがあるのが特徴です。中でも特徴的なのがそのグラフィック。今回の記事ではバスケットの模様とモチーフについてご紹介したいと思います。

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アフリカの自然を落とし込んだ魅惑の模様

ピクトグラムや平面をデザインする時、みなさんはどんなふうにモチーフをグラフィックに落とし込んでいますか?
アフリカのボツワナで作られているバスケットは、その広大な大地に住む動物や、「昼と夜」などの現象をグラフィックに落とし込んだ素晴らしい工芸品です。今回はそんなボツワナバスケットの魅惑的な幾何学模様を、アフリカに住む筆者が取り上げてみたいと思います。

バスケットは古くからボツワナ北部のオカバンゴ・デルタ周辺で作られてきました。現在は工芸品として、また観光資源の一つとして、評価基準を作り発展してきています。バスケットの目の細かさ、形の美しさ、模様の美しさ、大きさなどで評価し、1,000円〜20万円以上という幅で販売されています。

スタンダードなバスケットの形はボウル状で、内側に模様が施されています。主に装飾品として壁にかけたりなどして使われます。複雑な模様も上の写真のようにバスケットを編む時に計算して付けているというのだから、その技術には驚かされます。ボツワナのバスケットとそのモチーフをいくつか見比べてみましょう。

走るダチョウ
ダチョウは日本の動物園でも人気だろうと思います。ボツワナ全土で見られる最大の鳥で、その走るスピードは時速70kmともいわれています。走る姿を幾何学模様にしたのがこちらのバスケット。


  • 動物保護区のダチョウ


  • ちょっと変則的な扱いをしているパターン

  • かなり細かく作っているパターン

ゾウの鼻
ボツワナ北部は世界No.1のゾウ密度といわれています。水を飲む時、ゾウは鼻で水をすい、まるめて口に運びます。その仕草を幾何学形態で表現したのがこちらのデザイン。


  • 動物保護区で水を飲むゾウ

リクガメの膝
リクガメはボツワナの全土、地方に生息しています。地方の住民はいまでも見つけると甲羅ごと焼いて食べるんだとか。体の一部に着目して幾何学模様に編み込むところが面白いですね。


  • これがリクガメ

キリンの肋骨
キリンはボツワナ北部に生息しています。動物保護区内では捕食された後の骨で倒れていることも多々あり、肋骨を見る機会は多いのでしょう。


  • 肋骨は見えなかったですが、動物保護区のキリンの亡骸


  • 壷型に応用したパターン

シマウマの額
シマウマはボツワナ北部に生息し、その白と黒の模様は黒人と白人がともに生きる国の象徴として国獣に採用され、国民に親しまれています。ご存知のように正面から見たシマウマの額は不思議な模様になっており、頻出のモチーフになっています。


  • ボツワナのシマウマ

ツバメの飛翔
ツバメが飛んでいるような模様だそう。

パイソン(ニシキヘビ)
目がちかちかする細かい模様です。

ヤシの木
バスケットの材料でもあり、生活に役立っている植物です。

雄牛の尿の跡
昔から牧畜業の盛んなボツワナならでわかもしれません。現在でも人口200万人に対して、牛は300万頭いるといわれています。生活の中でみつけた形なのではないでしょうか?

ヤギ
ヤギはボツワナのみならず、アフリカでポピュラーな家畜です。

ダイヤモンド
ダイヤモンドはボツワナのメイン産業です。


アフリカのいくつかの国は国旗で盾をモチーフにしていたり、国章に用いていたりします。ボツワナのみならずアフリカにとってポピュラーな題材になっています。

昼と夜
似ていますがゾウの鼻とは一応別物という感じです。

組み合わせた模様
この模様は前出のキリンの肋骨、盾そしてキリンの涙をあわせた模様です。キリンの涙とは細かい十字型の模様のことです。

これらの模様は幾何学形態からパターンが作られたのか、自然現象をもとに作られたのかはもはやわかりません。制作者本人がオリジナルで模様を付けていることもあります。
そのモチーフのとらえ方には文化の違い、生きてる世界の違いを感じます。

例えば模様の一部に注目したグラフィックの作り方、動作の切り取り方、動物や、ダイヤモンドと同じように昼と夜といった私たちが当たり前のように思っているできごとまでもドラマチックにモチーフとして捉える目線には、デザインのヒントが隠されているかもしれません。

現在、ボツワナのバスケットはその工芸品の価値を広く認められ、また、国内で政府主導でのコンペティションが行われ、発展してきています。高価なものは20万円以上の価値がつくこともあります。

ボツワナ共和国を訪れた際は是非、バスケット専門店などにも立ち寄ってみてください。
専門店の情報は下記サイトに記載しております。

ボツワナ情報サイト GAPE(ハーペ) ボツワナのバスケット

また、日本での展示会などはボツワナ情報サイトの下記facebookページにて随時更新しております。
ボツワナ情報サイト GAPE(ハーペ) facebook

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OTONA WRITER

HiromiAme / HiromiAme

南部アフリカのボツワナ共和国在住 グラフィックデザイナーの伊藤洋美と申します。筑波大学芸術専門学群デザイン専攻卒業。日本の広告制作会社に合計約8年勤務した後、青年海外協力隊でボツワナの首都ハボロネにある国立博物館の制作部に派遣され、展示やPR関係のデザインとその技術移転が仕事です。日本で知られているアフリカとは別の顔を持つ国、ボツワナからアートやデザインの情報をお伝えしようと思います。