なにやら新しいイベントが始まろうとしていた。FacebookのTLに流れてきたのは、「TRACK TOP TOKYO」という見慣れないイベントページ。「なんだかよく分からないけど、自転車仲間も話題にしてるし、楽しそうだから行ってみよう」と思っていた。そんなある日、そのイベントを主催する澤隆志(さわたかし)さんにたまたま遭遇。聞くところによると自転車、アート、音楽、映像など様々なジャンルがフュージョンするイベントになるんだとか。主催者本人の言葉から聞いてもなんだかよく分からなかったけど、楽しいことが起こるのは間違いなさそうだし、直接その瞬間に立ち会わないと!ということで「TRACK TOP TOKYO」に足を運ぶことにした。ちなみに澤さんの生業は映像作家/キュレーターで、私の自転車繋がりの知人だったりもする。
当日は霧雨が降ったり止んだりの不安定な天気だった。普段馴染みの無い品川埠頭の倉庫街の一角で「それ」は行われているらしい。私にとって見慣れない無機質な港湾街の景色に、それでけでワクワクした。
無機質な業務用のエレベーターで4階に上がると、これまた無機質な空間にバンク(簡単に言うと自転車の走るところ)が据え付けられていて、中心ではDJの80kidzさんがフロアを温めている最中だった。
バンクの隣ではこのイベントのもう一つの核である映画上映や、愛車を撮影してくれるフォトスタジオの他、飲食ブースも。バンクで遊んで小腹を空かした人たちで賑わっていた。来場者にはクリエイターも多く、コーヒー片手に自分の作ったDMを交換したり、話し込んでみたり。ここから生まれた繋がりが、また別の何かを生み出していく予感がした。
二子新地のバイクショップ「Above bike store」のオーナー、須崎さんが用意したフォトスタジオ。私の愛車も撮影してもらっちゃいました!
そして筆者も楽しみにしていた映画のブースは、なんとダンボールのDIYシアター!これは聞くところによると武蔵美の映像展で見かけて参考にしたんだとか。
上映された映画の「PERSONAL GOLD」は、ロンドンオリンピックのときのパシュート女子のアメリカ代表の苦悩と栄光を描いた90分のドキュメンタリー映画。内容は自転車に乗っていない人でも感動できる内容になっており、映画を見た後に元気や勇気が出た人たちも多かったかと思う。
「開催に至ったきっかけ?このイベントって、偶然に偶然が重なって形になったものなんです。偶然バンクを使えるってことになって、以前一緒に仕事した寺田倉庫さんも場所の提供にオーケーしてくれた。前から「PERSONAL GOLD」を上映するイベントもやりたいなって思っていたし、今年はオリンピックイヤーじゃないですか。内容的にもぴったりだし、やるなら今しかないって思ったんです。」と澤隆志さん。
「今後もこういう感じで、みんなが気軽に来て、仲間と集まって、気軽に楽しめる場所を作っていければいいな、って。そうしたらきっと、知らない人どうしが繋がって、どんどん仲間の輪が広がっていく。そこから新しいアイディアだったりイベントが生まれたり、自転車を知らない人たちが興味を持ってくれたら嬉しいですね。キュレーターとしても、巨大な倉庫でいろいろなモノを集めるという試みは初めてでしたが、まぁ成功だったように思います。今回は自分の趣味である自転車を題材にしましたが、今後は巨大倉庫での映像展をやってみたいですね。海外では倉庫を使ったアートシーンがあるけれど、日本だとそれほど注目されてない。無機質な場所に異質な何かをインストールするのは面白いですねぇ。」
終始穏やかで、居心地の良い空気が流れていた会場は、様々なカルチャーを混ぜこぜにして生まれた、新しい一つのコミュニティだった。なんだかよく分からないけれど、なんだか楽しい。定型が無いようにも感じるぶん、これからどう変わっていくのか、引き続き注目していきたい。
TRACK TOP TOKYO
http://tracktoptokyo.tumblr.com/