ただ生きてるだけでそれが仕事になればいいのに ─MicroWorksデザイナー・海山俊亮

デザインスタジオ「MicroWorks」を主宰する海山俊亮さん。東京・杉並区にある「杉並海の家」がギャラリー兼、仕事場兼、自宅(「海の家」だけど海辺じゃなくて、静かな住宅街の真ん中にある)。暮らすように作る今のスタイルにたどり着くまでのお話を聞いてきました。

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仕事と生活をゆるっと一体化してます


「杉並海の家」は築約60年の工房併設の住居をリノベーションして作ったんだよ。 1階は展示会やイベントが開催され多くの人が行き交うオープンなスペースとして、2階は自身の仕事場と自身のプロダクトを販売する物販スペース、奥が住居スペースになっています。



昔は南麻布にオフィスを借りて自宅から出勤してたんだけど、よく考えたら自分が作ってるプロダクトって日常生活の中に存在するものだから、「仕事」と「生活」がズバッと切り離されてるよりは、ゆるっと一体化してる方が自分には適正環境かなと思って。だから今はここで暮らして、ここで仕事してるよ。

飛び込み営業→初の製品化。やってみるもんだ


今の食いぶちの軸になってるのは、MicroWorks のオリジナルプロダクト。その他にメーカーから依頼されてブランディングのディレクションしたり、クライアントワークもしてる感じ。


初めて自分のデザインしたものが製品化されたきっかけは、東京デザイナーズブロックっていうデザインイベントに出展したこと。そのときに「Jump Out Mirror」っていう鏡のプロダクトを作ったんだけど、告知のすべがないから、飛び込みでアパレルのセレクトショップに売り込みに行き、それがきっかけで、そこのショップのオリジナルとして商品化することになった。


  • ▲これが「Jump Out Mirror」。手鏡の収納場所が壁面鏡の中にある。



鏡だからアパレルと親和性が高いし、価格帯的にもこういうところで売ってもらえたらぴったりだなぁって思ってたお店だったから、うれしくてウヒャー!ってなったよ。


  • ▲ウヒャー!のときのようす。どんなにうれしいときでも、見た目はあんまり変わらないの で、これは頭の中の姿。

ここで暮らしてるだけで仕事が生まれてるという状態


杉並海の家では1階のスペースで色々な作家やアーティストなどの展示やイベントを週替わりで開催していて、そこへ来たお客さんが 2 階のショップでMicroWorksのものを買ってくれたり、知り合った人と仕事の話につながったりすることもあるね。

こんなこと言うと頭おかしいと思われるかもしれないけど、「生きること、生活することが仕事」みたいな状態が究極(笑)暮らしている場所が人の行き交う活気のある仕事場になったり、生活や日常の中で作品の素材が生まれたり。

使用済み容器を素材に使った MicroWorks のプロダクト「traces」には過去のラベルの痕跡が。「商品」だったものが使われていくうちに「素材」に還って、また「プロダクト」に……生活してるだけで素材が生まれてくるしくみ。



仕事は「なりわい」。生きる“目的”になってしまわないように


昔からわりと楽観的な考え方をするほうで、「この仕事で食えるかなぁ」って不安になったりしたことはあんまりなかったな。バイトしながらやったりして、30 代くらいまでやってみてどうしてもダメだったら就活しよ~くらいの気持ちだった。でも自分みたいなキャリアデザインはあんまり万人におすすめできるものじゃないかな……(笑)。


  • ▲作業台。拾ってきたものとか、なんかいいなぁって思ったものとかが置いてある。



なんていうかクリエイターみたいな仕事って、社会的信用とかいろいろ不安が多いから、社会とのつながりやビジネスを過剰に意識し過ぎちゃう人も少なくない気がする。でも仕事はあくまで生きるための手段、「なりわい」だから、仕事それ自体を目的化しちゃうとつまんなくなっちゃうんじゃないかな。

(執筆/吉川晶子・撮影/出川 光)

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