2010年以降の美大に関する論文やデータを探す。その2

「この話、一体どれくらい需要があるんだろ?」と思いながら書いてる手羽です。それくらいニッチなネタをお送りしております。

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昨日までの話。まずこちらをお読みください。
2010年以降の美大に関する論文やデータを探す。その1


美大に関する論文がないかいろいろと調べてたんですが、ある面白いデータにたどりつきまして。
何かというと、文科省 大学設置室が公開してる
大学等の設置認可申請書類等の公表ページ
です。

大学が新しく学部や学科を作りたかったり、収容定員変更したい場合は文科省に申請しないといけないんだけど、その書類がまるっと公開されてるんですよ。「情報公開」「説明責任」の時代だから、当然といえば当然で、このサイトの存在は以前から知ってたし、見たこともありました。ただ、ムサビは18年間新学科を作ってないので、今のところは縁遠い情報でもあり、今までチラっとしか見たことがなく・・。

でも、いつもと違う視点で読むと、ここに面白い情報が隠れてることを発見して。

それは「学生確保の見通し」部分です。
「え?この少子化の時代に新学科を作って受験生を集められるのかって?この領域は受験生にも社会にもこれくらい需要があるんで全然大丈夫っすよ!!なんら問題ないっす!わっはっは」ということをいろんなデータを使って説明してるんです。これが今後の広報骨子となり、受験生向けにかみくだいたものが新学科パンフ文章になっていきます。
いろんな事情があるにしろ、需要があると思ったから新学科を作るんであって「新しく学科作るけど全然受験生もいないだろうし、就職先も多分ないっす。受験生が減ってどうしようもないんで看板を変えるだけっす。2年もてばいいんです」なんて書くはずがない。そんなことは大人の皆さんなら理解できますよね?

で、メインの根拠データは「高校生や企業へのアンケート結果」になるんですが、手羽が注目したのは3つ。

一つ目は「社会的状況から捉えた将来性」。
新学科が関係する領域の現状や将来性・社会のニーズを分析して作文されてるんですね。
「新学科を作るため」だからポジティブな情報になるようもちろん編集してます。「客観性があるデータか?」と聞かれるとアレなんですけど、時々知らないような根拠元や数字が出てきたり、「そういう切り口があるんだな」とすんごく勉強になるんですよ。

ふたつめは「他大学比較」。
「他大学よりも優位なので新しい学科は問題ありません」と出してる場合もあれば、「他大学の似た学科も順調なのでうちの新学科も大丈夫」と使うこともある。他大学比較は学内資料としてどの大学もやってるはずだけど、外に出すことは普通ないんです。それを公式に読むことができるの。これ、面白くありません?・・・・この面白さは大学職員しかわかってくれないかもなあ・・。

例えば。
多摩美術大学 美術学部 統合デザイン学科、演劇舞踊デザイン学科 (4)趣旨等を記載した書類
これはタマビが新2学科を作る時に文科省に出した申請書類です。
P3の統合デザイン学科の部分にはっきりと
類似学科として武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科がある。 同大学の平成23年度及び平成24年度の入学試験における学生募集状況は安定した志願者を確保している。
と書かれ、なおかつP25に「【資料3】 武蔵野美術大学 志願者及び入学者状況」とムサビの志願者状況まで資料として提出されてます。類似ですよ。ルイージじゃないっすよ。
タマビの米山さんと「基礎デを意識して統合デザイン作ったでしょ?」「いやー、意識してないと言えば嘘になるけど、そんなことないよ。あはは」なやり取りを今までしてきたけど、おもっきし書いとるやん!と(笑)

また、
京都美術工芸大学 工芸学部建築学科(5)学生の確保の見通し等を記載した書類①
では、
<資料2:近畿における私立系競合校等の学生納付金>
実名で競合校との学費比較を出してるんです。広報で他大学比較を使うケースはないことはないけど、それでもせいぜい「A大学」「B大学」ですね。他大学名を出しません。

そして3つめは「新学科設立に至った経緯」。
「学生確保の見通し」の前には「なんで新学科を作ろうと思ったのか?」が書かれてますが、「いやー、実は旧学科がこの数年定員割れしてまして・・」と、これも過去数年分の受験生減少推移が出てたりもします。これも通常では大学自ら公開してません。
これらのデータは文科省提出文書だからこそで、普段は表に出さない各大学の本音がチラホラと読めてしまうんですね。

美大が"公式"に"大人向け"に「美大が感じてる新しい領域とは何か?」「社会に求められている美大の要素とはなにか?」「美大を受験してくれそうな今の高校生の心境は?」「受験生をさらに増やせる新しい層は?」「ニーズは?」「他美大の状況は?」「なぜ受験生が減ったのか?」を分析し作文し公開してるという意味で、貴重な書類であり、「美大に関わるデータ」として優れたものじゃないかと思うのです。

では、どうぞ。

金沢学院大学 芸術学部(5)学生の確保の見通し等を記載した書類


九州産業大学 芸術学部芸術表現学科(5)学生の確保の見通し等を記載した書類


九州産業大学 芸術学部ソーシャルデザイン学科(5)学生の確保の見通し等を記載した書類


神戸芸術工科大学 芸術工学部 (4)趣旨等を記載した書類


玉川大学 芸術学部 メディア・デザイン学科、芸術教育学科 (4)趣旨等を記載した書類


明星大学 デザイン学部(4)趣旨等を記載した書類


東北芸術工科大学 デザイン工学部 コミュニティデザイン学科 (4)趣旨等を記載した書類


吉備国際大学 アニメーション文化学部(4)趣旨等を記載した書類


秋田公立美術大学 美術学部(4)趣旨等を記載した書類①


京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 (4)趣旨等を記載した書類

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。