美術大学の認証評価結果を見る

今日の記事はどれくらい興味を持つ人がいるのかわからない手羽です。

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昨日の記事で「4月は大学が大事なリリースが出す月でもあり、それは大きく分けて4つある」と紹介しました。
3つは「学部学科再編・入試制度変更」「学長交代など人事系」「オープンキャンパス情報」で、4つ目というのが認証評価結果なのです。(厳密にいうと3月だけどね)


2004年から国公私立の全ての大学・短期大学・高等専門学校は、7年以内ごとに文科省の認証を受けた評価機関(認証評価機関)による認証評価を受けなければいけなくなりました。
大学の認証評価機関は、
財団法人大学基準協会
財団法人日本高等教育評価機構
独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構(旧 大学評価・学位授与機構)
の3つがあり、このどこかの機関にチェックしてもらわなくちゃいけないんです。いろんな意味で「よくできた仕組み」です。
その認証評価結果が3月末に公開されるので、大学は3月末か4月頭にWEB上で「適合認定されました」と知らせる・・・というわけなのね。
例えばムサビだと
大学評価結果および認証評価結果について | 武蔵野美術大学
こんな感じ。そうなんです。ムサビも去年が認証評価イヤーだったんです。

認証評価のシステムは、教育の質保障の観点から大学が自己点検・評価を行い、それを第3者機関である各認証評価機関が「評価基準」に従って書面や実地調査でチェックし、その結果を公開。評価結果を踏まえて大学が自ら改善を図る・・・つまりPDCAサイクルで動いています。
結果は大きく分けて「適合」「不適合」「保留」に分けられるんですが、適合であっても「改善勧告」の指摘があるとそれは3年以内に確実に改善しなくてはいけません。審査員の性格も少なからず出るので、同じような内容が自己点検報告書に書かれてあっても、ある大学は「努力課題」だけどある大学は「改善勧告」を受けている・・・なんてこともないことはないです。最後は人が決めることなので。

ま、いろいろありますが、「同じ評価基準で各大学が自己点検・作文しチェックを受ける」ので、大学の違いを比較するにはこれ以上ないデータなんですね。非公開の大学も多い「入学定員充足率」も認証評価結果では出てきますし。サラっと読むにはかなりの文量だけど・・。
「へー。そうは見えなかったけどこんなに定員割れしてたんだ」「ここは改善勧告受けてるんだな」「客観的に見た場合、この大学の長所ってこれなんだな」という視点で見ると面白いですよ。


てなわけで、過去7年にさかのぼって美術系大学の認証評価結果を集めてみました。
7年遡れば基本的に全大学網羅出来てるはずで。(抜けてたらすいません・・)

まずは大学基準協会。一番評価が厳しいという噂。
基準協会は昨年度結果がまだデータが公開されてないので各大学のWEBからひっぱりました。また、評価結果ではなく自己点検報告書のところもあります。
●2015(平成27)年度「大学評価」の結果
多摩美術大学
京都精華大学
女子美術大学
長岡造形大学
横浜美術大学

●2014(平成26)年度「大学評価」の結果について
金沢美術工芸大学
京都市立芸術大学
情報科学芸術大学院大学
東京工芸大学

●2010(平成22)年度「大学評価」の結果
名古屋芸術大学


次に日本高等教育評価機構
●平成27年度
宝塚大学
尚美学園大学
成安造形大学
東北芸術工科大学

●平成25年度
京都嵯峨芸術大学
東京造形大学

●平成22年度
大阪芸術大学
京都造形芸術大学
神戸芸術工科大学
成安造形大学
デジタルハリウッド大学

●平成21年度
名古屋造形大学


最後に、大学評価・学位授与機構(現 大学改革支援・学位授与機構)
●平成25年度
沖縄県立芸術大学

●平成22年度
東京芸術大学
静岡文化芸術大学
愛知県立芸術大学


6年前の評価結果はさすがにあまり参考にならないと思うけど、調べちゃったので載せました・・。

ムサビは7年前に一度認証評価を受けてますが、当時は大学基準協会もデータがなく、「美術大学」「通信教育」の特殊性をなかなか理解してもらえなくて苦労しました。どうしても基準が一般大学向きなんですよ。
「講義室が教室」という基準しかなく「美大はアトリエや工房も教室」ってのがなかなかわかってもらえなかったし、通信教育は自分の都合に合わせて学ぶもので、そもそも「留年」という概念がないのに「通信教育課程は留年率が高い」と指摘されたり。当時は「生涯学習」という考えが今より弱くて理解してもらえなかったですね・・。


え?毎年やればいいじゃんって?
毎年やるのは作業がかなり大変なのと、外部認証評価をするにはそれなりの手数料がかかるんです。例えば大学基準協会だとここの「(3) 評価手数料の納入」をご覧ください。そういうことです・・。


以上、担当部署からすると、学内では先生や他部署から「なんでこんな面倒なことやらなくちゃいけないんだ」と愚痴を言われ、評価団体からは「あれを用意しろ、このデータが足りない」と言われ、この年は準備にてんやわんやになるわりには、結果が公開されてもせいぜいメディアに扱われるのは不適合か保留の大学だけで、結構なデータを公開してるんだから長所とかそういうところも見てくれないかなーと思ってる手羽がお送りいたしました。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。