冷血と温情

各所から「優しくない人」の烙印を押されている。各所から。

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「冷たい人ね」と言われたことがあるか、ないか。それだけで人は区分可能だ。
後者が蚊も殺さないほどに親切な人間かと言ったら微妙だが、前者よりはマシ。
「冷たい人ね」なんて言われる人は冷たい人なのだ。
この冷たい、当然ではあるがクレバーという意味で捉えてはいけない。
冷血な人を言うのだろう。


【冷血(れい けつ)】 コトバンク調べ
人間らしい温情に欠けていること。また、そのさま。

長年の交際がある人に言われるならまだしも、2回しか会ったことない人なんかに、
言われたらショックだろう。

ちなみに、僕はある。
自分では勿論、自分のことを冷たい人なんて思ったことない。考えたこともない。
冷たくも温かくもない適温の男だと認識している。
そもそも温情に欠けるという意味すら分かっていない。

【温情(おん じょう)】 goo辞書調べ
あたたかみのある優しい心。思いやりのある寛大な心。

つまり、冷たい人とは「優しい心が欠けた人」を言う。
僕が優しくない人間と仮定しよう。
優しくなるためには如何に行動をすれば正しいのか。
そうだ!優しい人のマネをすれば良いんだ。
優しい人のマネをすれば、いつか本当の優しさを手に入れることが出来るかもしれない。



僕史の中で、優しい人と言えばFさんを思い出さずにはいられない。
24歳の頃、あるUstream番組のレギュラーをしていた。毎週水曜日の放送で、
90分の長尺番組。恋のから騒ぎ元出演者の女の子と色んなことを話していた。
今思うと、よくまぁ毎週話すことがあったなと思う。
特に人気の放送ではなかったが、毎回それなりに楽しくやっていた。
Fさんは、その番組のカメラ兼プロデューサーで何かと僕を可愛がってくれた。

番組終わり。
Fさんと渋谷のスタジオから電車で高田馬場へ。
ホームに降りた瞬間に「ヨシムラ君、飯でも行こうか」と誘ってくれた。
今以上にくすぶっていた時期。
毎週反省会と称し、Fさんと飯と酒を楽しむ時間が一番の楽しみだった。

昔、みうらじゅんがやっていた人生相談番組でこんな場面があった。

悩み
「会社の後輩に慕われなく困っています。時々、ご飯も奢るのですが・・・」
みうらじゅんの回答
「普通にご飯を奢っても人は付いてきません。カニ、フグなどを奢って、やっと慕われるのです」

正にFさんはみうらじゅんの回答通りの人で。
流石にカニ、フグはないが、とんかつを食べに行っても自らは並(1500円)、僕には特上沖縄アグー豚(4000円)を食べさせてくれた。
正直Fさんもリッチマンではないと思うが、そういったところの気概が半端なかった。
奢ったら、奢った分だけ態度が大きなるおっさんもいるが、Fさんは、そういった部分も一切ナシ。出会った瞬間から、この優しさなので何か裏があるのではと思ったほどだ。
けど、裏も全くない。ただ単純に優しいのである。こんな人はめったにいない。

Fさんの懐が豊かな月初めにはガールズバーなども連れて行ってくれた。
ほぼ童貞だった僕が女性と会話できるはずもない。
かといってガールズバーにいた女の子も会話の素人同然で。
その子が見たテレビの感想という究極的にどーでもよい話を聞いた。
これで、お金もらえるっていいなぁと思った。
あと、通常100円くらいのジャイアントコーンが
1500円くらいで売っていたりして驚いた。
Fさんは、そういった大人の世界を体験させてくれる人でもあった。

今でもFさんと時折会うが、相変わらず猥談しかしない。
40歳にも関わず「エロ本の自販機の密集地帯を発見したから行こうぜ」と誘ってくる。
究極的にナイスガイ。

そんなFさんの趣味はパチンコだ。
「Fさん今日勝ちました?」
「いや、トントンだね。少し負けかな」
「Fさん、もう6年も知り合いですが一回も勝ったところ見たことないっすよ」
「ヨシムラ君、パチンコは勝ったり、負けたりじゃない。毎日やり続けることが大事なんだよ!」
と酔うたびに語った。

書き出してみるとFさんには、到底なれっこない。
見返りを求めない単純な優しさを持つことなんて僕には到底無理だ。
けど、諦めるのは良くない。まずは、Fさんを見習ってパチンコにでも通ってみるか。
もしかしたら、Fさんの優しさの源泉は、銀の玉から生まれているかもしれない。

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OTONA WRITER

ヨシムラヒロム / Hiromu Yoshimura

中野区観光大使やっています。最近、29歳になりました!趣味は読書です。