美大生の「ない」を活かそう!伝統工芸と若者をつなぐ「肥後象がんプロジェクト」

経験がない、知識がない、お金がない、現実を知らない……、学生はたくさんの「ない」を持っています。この「ない」を埋めていこうと頑張っている美大生・芸大生のみなさん、あえてこの「ない」を活かしてみるというのはどうでしょう?(top:http://soda.art.sojo-u.ac.jp/higozogan/index.html)

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伝統工芸と若者をつなぐ


  • 肥後象がん振興会の職人さん、伝統工芸館の方と打ち合わせするプロジェクトメンバー

前回の記事「400年前から熊本に伝わる伝統工芸品、肥後象がん 美大生である私たちに課された「つなぐ」という使命」の続編として、今回は「肥後象がんプロジェクト」の具体的活動についてご紹介します。


  • コンセプトからキーワードを書き出す 撮影:福山大夢

熊本の伝統工芸品「肥後象がん」は、認知度の低下により、後継者不足や需要の減少傾向にあります。そこで、肥後象がん振興会の依頼により、webサイトを通じて若い世代に知ってもらうことを目的とした本プロジェクトが、崇城大学芸術学部デザイン学科の学生によって一昨年の秋に始動しました。私も、そのメンバーとして、当初からこれまで活動に携わってきました。
活動するにあたり、敬遠されがちな伝統工芸をいかに魅力的に伝えるかということを常に意識して考えています。技術や歴史、作品の美しさももちろんですが、「400年ものあいだ、職人の手によって受け継がれてきた」という部分にこそ大きな感慨を覚えると思うのです。そこで私たちがたどり着いたのは、「つなぐ」というキーワードでした。サイト名を『LINK UP HIGOZOGAN〜つながる肥後象がん〜』とし、「道具」「技」「デザイン」「歴史」と職人さんの人間味にスポットを当てた「職人」の5つのカテゴリを設定しました。



試行錯誤のwebサイト制作 期限に間に合わない!失敗をどう乗り切るか


  • 分担しカテゴリごとに詳細を決めていく

  • 職人さんの道具をお借りしてスタジオで撮影

5つのカテゴリを持つこのサイトは、動画や写真、イラスト、テキストといったさまざまな要素によって構成されます。実際に職人さんの工房へ取材に行き、製作工程を動画で撮影する、職人さん自身のお話を伺う、道具を撮影する、作品を撮影する、歴史についてまとめる……。しなければならないことは山積みでした。

職人さんも講演会や体験イベントなど多忙でいらっしゃるほか、作品は伝統工芸館や熊本城に展示、保管してあり、簡単には撮影できない状況。各カテゴリの意図を簡潔に伝えるためのコピーライト。初めて取り組む私たちは、練りに練り直しかなりの時間を要しました。各方面との調整をしつつ、撮影班と編集班に分かれ、毎日作業していましたが、最初予定していた締め切りに間に合わないという事態に陥ってしまいました。自分たちのスケジュールだけでは進められないのは、学外でのプロジェクトならではの大変さでした。
先方と取り決めた約束の期日になんとか間に合わせるため、私たちは予告サイトを立ち上げるという対応を取りました。
また、HTMLコーディングに関しても、学生の力だけでは及ばす、webデザイナーの方にお力をお借りしました。できないことを逃げずに取り組むことはとても大事ですが、学生のうちだからこそ頼ってそこで学ぶことも許されるのかもしれません。実際に今、そのときwebへ興味を持ったメンバーの一人は、協力していただいたデザイナーの方の元で勉強し、その道へ進もうと奮闘しています。
失敗はしないに越したことはありませんが、失敗しても、そこでの対応によっては、それが何かのきっかけや出会いになったり、のちにつながるプロセスになったりと、いい方向に転がることも十分に有り得るのです。



肥後象がんの新しい顔「スタイル」


  • 男性、女性それぞれのモデルをオフィスやカフェで撮影する 撮影:清原薫子

基本となる前述の5つのカテゴリが完成し、この春、新カテゴリを増設することにしました。本プロジェクトは、若い世代と肥後象がんをつなぐことを大きな目的としています。それをより実現するために、新しいカテゴリ「スタイル」を設置し、肥後象がんを日常のファッションに取り入れる提案を行います。若者に向けたアプローチは、自分たちが一番知っているはずです。私たち自身が惹かれるものはどのようなものなのか、さまざまな雑誌やwebサイトを参考にし、制作しました。
また、もうひとつ課題になったのは「お金」。今回のロケは各場所で交渉を行い、近しい学生にモデルを頼むことで費用をかけずに撮影できました。お金のない美大生でも、意欲があれば、協力してくださる方々はたくさんいらっしゃいます。「こうしたい!」という強い想いが、人を動かすのだと思います。このようにして完成した肥後象がんの新しい顔「スタイル」は、3月上旬公開予定です!
http://soda.art.sojo-u.ac.jp/higozogan/index.html



純粋な美大生だからできる!デザイン提案


  • 職人の方にデザインを提案する 撮影:撮影:甲野善一郎

  • 象がん士 稲田憲太郎さん 撮影:撮影:甲野善一郎

この「肥後象がんプロジェクト」では、webサイトのほかに、新たな象がんのデザイン提案も行っています。歴史ある肥後象がんですが、重厚なデザインだけでは、多くの人に受け入れてもらうことが難しいのが現状です。今後も長くこの伝統工芸品を継承していくために必要な「時代に合ったデザイン」をどう提案するか、私たち学生には、実現性や費用などに捉われない大胆なアイデアを期待されていることを感じています。多くの人が「かっこいい!」「おもしろい!」と共感してくれるような、純粋な感覚を忘れないことも、美大生には必要なようです。
ピュアな美大生・芸大生ってなんだか魅力的だと思いませんか?


恥ずかしい思いは、誰だってしたくありません。年を重ねれば重ねるほど、それは強くなるようです。でも、私たちはまだ若い!「ない」ことも怖くはないのです。私たち美大生・芸大生は、自由な発想・表現が許される、なんとも贅沢な環境にあります。失敗を恐れずに何事も取り組まなければもったい「ない」!美大生だからできることを、存分に楽しみたいですね。


引用元:【つながる肥後象がん〜LINK UP HIGOZOGAN〜】
http://soda.art.sojo-u.ac.jp/higozogan/tradition.html

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KaoruKo / KaoruKo

人が好きです。 人と関わることが好きです。 ときめくこと、わくわくすることが好きです。 楽しみ、楽しませるがモットーです。